Make a happy home

鳴宮鶉子

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私とお母さん

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『ーー音羽、ソミープロダクションに所属したってどういう事!!』

母からの電話。
通話ボタンを押した途端に母から大声をあげられiPhoneを耳から放す。

「どういう事ってメジャーデビューしたのはいいけど、ソミープロダクションに所属するのはダメ!!別のとこを探しなさい!!」

所属事務所に難癖をつける母、麗華48歳。
派手で見栄張りでプライドが高く、元お嬢様らしいけど父と駆け落ちして人生を棒に振ったといつもぐちぐちと私と兄に話してた。

だから、私も兄も幼少期は習い事を掛け持ちし、ひたすら勉強をさせられた。
日本で1番最高峰の国立大附属中高一貫校に通い始めても、鉄紅会に入会し、勉強漬けの日々だった。

兄は見ていてかなり悲惨だった。
私は女で理人と付き合っていて、理人に嫁げばいいと思ったのかテストで悪い点さえ取らなければ放置された。

だけど、兄に関しては起業して社長になれと重圧をかけてきて、かなり精神的に追い込まれてた。

そんな私の兄に、隼人さんがエブサイトの子会社を任せてくれて救ってくれた。

「……音羽、貴方、いつ理人くんと結婚するの?理人くんが大学を卒業したらするのよね?」

母からの尋問を聞き流す。
大学受験をするかしないかで、母と大喧嘩した。
シンガーソングライターとしての活動に力を入れたかった私を母はわかってくれなくて、奏音さんが間に入ってくれて話をつけてくれた。

母は私と理人が結婚し、私がエブサイトの副社長をする事を期待していて、だから隼人さんと奏音さんに対してかなり下手《したて》になる。

「シンガーソングライターとして成功してるみたいだけど、どうせ数年で人気《にんき》は落ちるんだから、理人くんを手放すんじゃないよ!!」

一方的に私に言いたい事を話し、母は電話を切った。


母はソミー商品を嫌ってる。
理由はわからないけど、元お嬢様だからソミー御令嬢と男の取り合いかどっちがイケてるかとかそういうくだらない事で競ってたと思われる。
ソミー商品を頑なに拒絶し、私も兄もプレステのゲームは友達の家でしか遊べなかった。

「音羽のお母さんから電話、また俺を手放すなっていう忠告の電話をかけてきたのか?」

大学の受講講義が休校らしく、家でパソコンの画面をじっとみつめ、ひたすらキーボードを叩いてる理人。

私のそばにいて母の大ボリュームの声が聞こえたから、会話の内容が気になったのだろう。

「……それもあるけど、ソミープロダクションを辞めるように言ってきた。母のソミー嫌い、なんでなんだろう」

「……ソミーは良い会社だけどな。俺に仕事を教えてくれてる東條専務、AIの人工知能に詳しくて、アメリカで学んできたのもあっていつも丁寧に教えてくれる」

理人のパソコンにはカメラがつけられていて、ときよりボイスチャットで話しながら仕事をしてる。
その相手がソミー本体のAIシステム開発の責任者、桐嶋翔真部長と東條総司専務で私が知らない所で繋がってた御曹司ネットワークかと驚いた。

「……離れて暮らしてるし、たまに電話してくるだけだから気にしない方がいい。

母から電話がかかってくると、しばらく気持ちが沈む。
中学に上がってからは、母の小言を聞きたくなくて、あまり家で過ごさなかった。
理人との交際に『玉の輿!!』と小躍りしてた母だから、さすがにお泊まりはしなかったけど、平日の夜と休みの日は常に理人と一緒にいた。

気持ちを切り替えて、久しぶりに小説投稿サイトに新作をあげる。
中塚製薬のCMに因んだ短編小説を描きたいと思いつつ、時間が取れないでいた。
青春ミステリー小説の長編作品も描きたい。

“ノベルスター”のサイトを開き、3ヶ月ぶりに新作を投稿する。
休載になってる作品も更新しつつ、5時間ほどひたすら小説を執筆した。


「音羽ちゃん、中塚製薬のCMシリーズの短編集を出版しようと思うんだけど、いい?」

「ハイ!!」

エブサイトに少しでも貢献できたらいいなと思い、私は中塚製薬の担当者と交渉し、OKを貰い作品をしたため投稿した。
短編集にならなくても話題になる。
そう思い2万字の短編小説を4作品投稿し、木阿弥通りノベルスターに多くの人が登録し、読み専離れが進んでいたサイトに人が戻ってきた。

出版社との今後のスケジュールについてをノベルスターの担当者から話を聞く。
打ち合わせが終わり、奏音さんの仕事を邪魔したらいけないから、お暇しようとしたら、

「……音羽ちゃんのお母様から音羽ちゃんにソミープロダクションを辞めるよう説得して欲しいと連絡がきたんだけど、……音羽ちゃん、お母様からその理由聞いた?」

奏音さんが思いつめた表情をして私に話しかけてきた。

「……いいえ……」

母がソミープロダクションを辞めるようにいってきたのは、ただたんにしょうもない事で毛嫌いをしてるからだと私は思ってた。

「……私から音羽ちゃんに伝えるよう音羽ちゃんのお母様に言われた。過去の事だからもう吹っ切れた事だから、それに音羽ちゃんには全く無関係だからね。だから聞くだけきいて、それで今後どうするかを決めて」

奏音さんがひと息ついてから、話しだす。
思い出したくない、とても哀しい過去を、奏音さんは私に聞かせてくれた。

♢♦︎♢♦︎
母がソミー一族の遠縁の血筋で、父に子会社の会長の座につかせるために、瀬川大貴という男性と政略結婚をさせられた。
瀬川大貴は社長になりたいがために母と結婚し、結婚後は銀座のクラブに通い女遊びが酷く、母は毎日泣いて暮らしてた。
瀬川は、ソミーロボットテクノロジーの社長になったのに生産技術ロボットの仕事しか任されて貰えず、AIロボットの開発はソミー本体がしているのが面白くなく、母と結婚して3年目の冬に、瀬川はとんでもない事を犯した。
AIシステム開発でソミーと共同開発をしていた奏音さんの御両親の藤宮彩人さんと奥さんの美音さんを交通事故を装い殺害し、夫婦が開発したコミュニケーション能力が高く学習機能が優れた人工知能システムを奪った。

すぐに彼は捕まり、無期懲役になり獄中で自殺し、藤宮夫婦の親戚に対して多額の慰謝料を支払い、事件は解決した。
♢♦︎♢♦︎

私はこの話を聞き、かなり動揺してしまった。

「私の母の元夫が奏音さんの御両親を殺害したんですか……」

あまりの衝撃に私は倒れそうになった。


「……音羽ちゃんのお母様も被害者なのよ。その後、お母さんは弁護士として支えてた幼馴染の音羽ちゃんのお父様と駆け落ちし、ソミーと絶縁関係になった。詳しくは伺ってはないけど、音羽ちゃんのお母様はソミーを恨んでる。両親を殺された事に関して、私も被告を憎んだ。でも……すぐに自殺し、ソミーの東條朔弥CEOと桐嶋遥翔CFOとその奥様のロボットテクノロジーの社長の桐嶋結奈さんに色々気にかけて貰いサポートして貰い、今は理人を鍛えて貰ってる。だから、ソミーに対して恨みとか毛嫌いはない。だから安心して音羽ちゃんをソミープロダクションに預けられてる」

私の母より辛い想いをしたのに、立ち直り前を見て生きてる。

「……音羽ちゃんは大好きだけど、音羽ちゃんのご両親は苦手。音羽ちゃん、生きにくいだろうなといつも思ってた。なんとかしてあげたかったけど、関わらないのが1番だから、会社やウチに遊びにおいでとしか言えなかった。音羽ちゃんと音羽ちゃんのお母さんは血が繋がりはあるけど、別人格なんだから、音羽ちゃんが好きにした方がいい。音羽ちゃんがソミーで可愛がられてたら、そのツテで音羽ちゃんのお母様とご親戚の関係が修復するかもしれないし、結奈さんには音羽ちゃんのお母様の事を伝えた。辛気臭い話はこの辺にして、音羽ちゃんは音羽ちゃんらしく生きればいいから!!じゃ、私は会議があるから、また音羽ちゃん、いつでも連絡してね!!」

奏音さんと副社長室を一緒にでて、エレベーターの所まで一緒に歩いた。
エレベーターに乗った私に笑顔で手を振ってくれる奏音さん。

そんな奏音さんが、私は大好き。
親友で母みたいな存在。

「……音羽、久しぶりに飯食いに行こうぜ!!親父に呼び出され、仕事を押し付けられてた。お袋から6時に音羽との打ち合わせが終わるって言われ、これ、渡された。品川グランドプリンセスの水族館のアクアナイトのチケットと三ツ星鉄板焼きレストランのディナー券だって」

奏音さんが私を元気つけようとサプライズしてくれた。
品川グランドプリンセスホテルまでタクシーで迎い降りてから、先に水族館を楽しんだ。

一応、アーティストだから、変装にツバの大きな帽子とサングラスをかけてる私。

パパラッチに写真を撮られたらまずいけど、理人の手を握り、館内を回った。

そして、21時に予約が入ってる鉄板焼きレストラン 烈火でワインとシャンパンを飲みながら最上級の黒毛和牛と海鮮焼きを堪能し、プロポーズされ、そのままホテルのプチスイートルームに宿泊をする事にした。


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