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浮気男に天誅
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「……美結、本当に乗り込むの」
「うん。このまま、野放しにできないし」
私が気づいてないと思ってるのか、朔は定時退社日の水曜日と金曜日に合コン三昧してる。
“一夜限り”とか“遊びでいいなら”と言われても朔に着いていく女の子達。
“本命がいるから”と朔は女の子達とその場限りの付き合いをし、連絡先は交換してない。
週2~3回行われる合コンは予約2ヶ月待ちで、極上の男と最高のひとときを過ごすため、幹事役が朔と連んでるメンバーに合コンをするために必死に交渉してるらしい。
愛菜ちゃんから同期の子達が朔と合コンすると聞き、どこの店でするかをさり気なく聞いて貰い、愛菜ちゃんを巻き添えにし張り込みする事にした。
合コン会場の居酒屋のカウンターの死角の席で、愛菜ちゃんとノンアルコールカクテルを飲みながら腹ごしらえをする。
「そういえば、最近、須藤くんと距離を置いてたんだっけ?」
「うん。SA(システムアーキテクト試験)とAU(システム監査技術者試験)の国家資格取得のために通信教育始めたって言って、電話しかしてない」
朔のゲスな豪遊の事を頭から切り離したくて、思い切って国家資格取得に挑戦する事にした。
試験まで半年あるけれど、難易度が高い資格だから今からしっかり対策をしないと合格は難しい。
フットサルにソフトボール、釣りと同僚と週末も満喫してる朔と、夕食時に待ち合わせをしてご飯を食べに行ってその後ラブホに行くのがデートの定番になっていて、朔の不貞を知ってからは抱かれるのが嫌で理由をつけて会うのを拒絶してる。
「美結が相手をしないから女の子と遊ぶんじゃない」
「違う。私といるより職場の人と一緒にいる方が楽しいんだと思う」
就職してから、私と朔は物理的だけでなく精神的にも距離ができてしまった。
ーー 朔と別れたくない。
でも、この開いてしまった距離を縮める方法がわからなかった。
合コン会場の個室からぞろぞろとカップルになった男女がでてくる。
居酒屋の支払いを愛菜ちゃんにお願いし、私は朔を尾行する。
ラブホの前で現行犯で修羅場を起こす予定で、バレないように見失わないようあとをつけた。
知立駅付近にはいわゆるラブホはなく、ビジネスホテルがその役回りをしてる。
ビジネスホテルが立ち並ぶ知立駅の北口。
水曜日なのもあり、一次会の後、すぐに解散し、そのままホテルに直行してた。
ルーツインホテルに入ろうとする朔に声をかけようとしてら、「辻井ーー!!」と誰かに呼ばれ、振り向く。
「冨田課長!!お疲れ様です」
パワートレイン開発部のシステム課の冨田課長に呼び止められたら無視はできない。
職場の上司なだけでなく、大学時代のゼミの先輩で、ソフトよりの人だけどハードにも詳しい人で、優秀故に大学院博士課程の時からデンタにエンジン開発で協力し、入社後スピード出世し、入社3年で課長まで出世した凄い人。
しかも、見た目は長身で運動してないはずなのに細マッチョで、意志が強そうな切れ長の瞳に鼻筋が通って日本人離れした端正な顔立ちをしていて、婚活嬢の結婚したい男社内No.1。
「……ちょうどよかった。来月から辻井に週2回、火曜日と木曜日に自動運転システムの開発でトミタに行って貰う事が決まった。今度、打ち合わせで時間を作って欲しい……あれっ、須藤じゃないか!!オーイ!!」
ホテルの中に入っていこうとしてる朔を冨田課長が大声あげて引き止める。
朔が振り向き、私と冨田課長の2ショットに目を見開き、驚き、その場に立ち竦む。
冨田課長は女性に興味がないと思うぐらいずっと開発研究をしてる。
課長以上は残業規制にひっかからないのか、会社に泊まり込んで仕事をしていて、納期が間に合わないセンサーやシステムを冨田課長が代わって仕上げてる。
出世頭で見た目も極上、だけど、仕事にしか興味がない残念な男で、だから、男女が深夜遅くにビジネスホテルに入っていく理由を理解してない。
それに、アフター5に外で会った時に普通に仕事の話をしてくる。
「……須藤、ちょっとこい。あれっ、隣の女性は??えっ、須藤と辻井さんって付き合ってなかったっけ」
大学時代に2年間先輩として私と朔に指導してくれてたのもあり、私達が付き合ってるのは知ってる。
かなり気まずい空気が流れる中、朔の隣にいる女性は私を睨みつけてきて、私の物よといった感じで朔の腕に絡みつく。
「まぁ……いいや。来月から自動運転システムのプロジェクトに辻井を参加させるから。邪魔したらいけないし、辻井、帰るか!!」
冨田課長はトミタのエンジン開発部に出入りしてるから、朔と仕事で関わりがある。
業務連絡で伝えただけといった感じで、私を連れてホテルの前から立ち去る。
修羅場るつもりが、天然KY上司に邪魔されてしまった。
「……冨田先輩に乱入されたんだ!!」
私を駅まで送り届けると冨田課長は近くのパーキングに車を停めてるとかですぐに去っていった。
知立駅内のスタバで愛菜ちゃんと落ち合う約束をしていた。
合流して、コーヒーを飲みながら冨田課長劇場を報告すると、さすが天然KY男と愛菜ちゃんは苦笑を浮かべてた。
「……美結、性格的に修羅場るの無理だからね。ホテルの中に入っていくのを見届けてから泣きながらここに戻ってくると思ってたから、天然男がしでかしてくれてよかったじゃん。でも……須藤くん、言い訳もせず、そのままホテルの中に入っていったんだ」
冨田課長とすぐにホテルの前から立ち去ったから、その後、朔がどうしたかはわからない。
でも、少し離れてから振り返るといなかったから、中に入ったと思われる。
「来月から美結、トミタに出向になるんだ!!須藤くんと仕事で絡みができるって、大丈夫??」
朔の不貞を知らなかったら一緒に働ける事に喜びを感じてた。
でも、今は見たくない面を嫌でも見てしまいそうで気が滅入ってる。
「……トミタに入って浮かれてるのもあるし、中1の時から付き合ってるんだよね?美結を手放す気はなくても、倦怠期でつまみ食いしちゃう、最低だけど、男ってそういうもんなのかもしれないよね」
浮気現場を目の当たりにしても、別れる気は起きなかった。
でも、朔から気持ちが離れていってるのは確かで、なんともいえない複雑な心中で溜息しかでない。
「……しばらく須藤くんの事を無視して、須藤くんの出方をみたら?見られたらマズイとこを美結に見られて、今、焦ってると思うし」
次の日仕事があるから、コーヒーを飲み終えるとお開きにした。
この日から、私からもLINEしないし朔からもない。
ーー 自然消滅のように関係が終わってしまった。
関係が完全に切れるなら、時間が忘れさせてくれるから考えないですむ。
けれど、明日からトミタに出向で朔と顔を合わせないといけないからつらい。
「うん。このまま、野放しにできないし」
私が気づいてないと思ってるのか、朔は定時退社日の水曜日と金曜日に合コン三昧してる。
“一夜限り”とか“遊びでいいなら”と言われても朔に着いていく女の子達。
“本命がいるから”と朔は女の子達とその場限りの付き合いをし、連絡先は交換してない。
週2~3回行われる合コンは予約2ヶ月待ちで、極上の男と最高のひとときを過ごすため、幹事役が朔と連んでるメンバーに合コンをするために必死に交渉してるらしい。
愛菜ちゃんから同期の子達が朔と合コンすると聞き、どこの店でするかをさり気なく聞いて貰い、愛菜ちゃんを巻き添えにし張り込みする事にした。
合コン会場の居酒屋のカウンターの死角の席で、愛菜ちゃんとノンアルコールカクテルを飲みながら腹ごしらえをする。
「そういえば、最近、須藤くんと距離を置いてたんだっけ?」
「うん。SA(システムアーキテクト試験)とAU(システム監査技術者試験)の国家資格取得のために通信教育始めたって言って、電話しかしてない」
朔のゲスな豪遊の事を頭から切り離したくて、思い切って国家資格取得に挑戦する事にした。
試験まで半年あるけれど、難易度が高い資格だから今からしっかり対策をしないと合格は難しい。
フットサルにソフトボール、釣りと同僚と週末も満喫してる朔と、夕食時に待ち合わせをしてご飯を食べに行ってその後ラブホに行くのがデートの定番になっていて、朔の不貞を知ってからは抱かれるのが嫌で理由をつけて会うのを拒絶してる。
「美結が相手をしないから女の子と遊ぶんじゃない」
「違う。私といるより職場の人と一緒にいる方が楽しいんだと思う」
就職してから、私と朔は物理的だけでなく精神的にも距離ができてしまった。
ーー 朔と別れたくない。
でも、この開いてしまった距離を縮める方法がわからなかった。
合コン会場の個室からぞろぞろとカップルになった男女がでてくる。
居酒屋の支払いを愛菜ちゃんにお願いし、私は朔を尾行する。
ラブホの前で現行犯で修羅場を起こす予定で、バレないように見失わないようあとをつけた。
知立駅付近にはいわゆるラブホはなく、ビジネスホテルがその役回りをしてる。
ビジネスホテルが立ち並ぶ知立駅の北口。
水曜日なのもあり、一次会の後、すぐに解散し、そのままホテルに直行してた。
ルーツインホテルに入ろうとする朔に声をかけようとしてら、「辻井ーー!!」と誰かに呼ばれ、振り向く。
「冨田課長!!お疲れ様です」
パワートレイン開発部のシステム課の冨田課長に呼び止められたら無視はできない。
職場の上司なだけでなく、大学時代のゼミの先輩で、ソフトよりの人だけどハードにも詳しい人で、優秀故に大学院博士課程の時からデンタにエンジン開発で協力し、入社後スピード出世し、入社3年で課長まで出世した凄い人。
しかも、見た目は長身で運動してないはずなのに細マッチョで、意志が強そうな切れ長の瞳に鼻筋が通って日本人離れした端正な顔立ちをしていて、婚活嬢の結婚したい男社内No.1。
「……ちょうどよかった。来月から辻井に週2回、火曜日と木曜日に自動運転システムの開発でトミタに行って貰う事が決まった。今度、打ち合わせで時間を作って欲しい……あれっ、須藤じゃないか!!オーイ!!」
ホテルの中に入っていこうとしてる朔を冨田課長が大声あげて引き止める。
朔が振り向き、私と冨田課長の2ショットに目を見開き、驚き、その場に立ち竦む。
冨田課長は女性に興味がないと思うぐらいずっと開発研究をしてる。
課長以上は残業規制にひっかからないのか、会社に泊まり込んで仕事をしていて、納期が間に合わないセンサーやシステムを冨田課長が代わって仕上げてる。
出世頭で見た目も極上、だけど、仕事にしか興味がない残念な男で、だから、男女が深夜遅くにビジネスホテルに入っていく理由を理解してない。
それに、アフター5に外で会った時に普通に仕事の話をしてくる。
「……須藤、ちょっとこい。あれっ、隣の女性は??えっ、須藤と辻井さんって付き合ってなかったっけ」
大学時代に2年間先輩として私と朔に指導してくれてたのもあり、私達が付き合ってるのは知ってる。
かなり気まずい空気が流れる中、朔の隣にいる女性は私を睨みつけてきて、私の物よといった感じで朔の腕に絡みつく。
「まぁ……いいや。来月から自動運転システムのプロジェクトに辻井を参加させるから。邪魔したらいけないし、辻井、帰るか!!」
冨田課長はトミタのエンジン開発部に出入りしてるから、朔と仕事で関わりがある。
業務連絡で伝えただけといった感じで、私を連れてホテルの前から立ち去る。
修羅場るつもりが、天然KY上司に邪魔されてしまった。
「……冨田先輩に乱入されたんだ!!」
私を駅まで送り届けると冨田課長は近くのパーキングに車を停めてるとかですぐに去っていった。
知立駅内のスタバで愛菜ちゃんと落ち合う約束をしていた。
合流して、コーヒーを飲みながら冨田課長劇場を報告すると、さすが天然KY男と愛菜ちゃんは苦笑を浮かべてた。
「……美結、性格的に修羅場るの無理だからね。ホテルの中に入っていくのを見届けてから泣きながらここに戻ってくると思ってたから、天然男がしでかしてくれてよかったじゃん。でも……須藤くん、言い訳もせず、そのままホテルの中に入っていったんだ」
冨田課長とすぐにホテルの前から立ち去ったから、その後、朔がどうしたかはわからない。
でも、少し離れてから振り返るといなかったから、中に入ったと思われる。
「来月から美結、トミタに出向になるんだ!!須藤くんと仕事で絡みができるって、大丈夫??」
朔の不貞を知らなかったら一緒に働ける事に喜びを感じてた。
でも、今は見たくない面を嫌でも見てしまいそうで気が滅入ってる。
「……トミタに入って浮かれてるのもあるし、中1の時から付き合ってるんだよね?美結を手放す気はなくても、倦怠期でつまみ食いしちゃう、最低だけど、男ってそういうもんなのかもしれないよね」
浮気現場を目の当たりにしても、別れる気は起きなかった。
でも、朔から気持ちが離れていってるのは確かで、なんともいえない複雑な心中で溜息しかでない。
「……しばらく須藤くんの事を無視して、須藤くんの出方をみたら?見られたらマズイとこを美結に見られて、今、焦ってると思うし」
次の日仕事があるから、コーヒーを飲み終えるとお開きにした。
この日から、私からもLINEしないし朔からもない。
ーー 自然消滅のように関係が終わってしまった。
関係が完全に切れるなら、時間が忘れさせてくれるから考えないですむ。
けれど、明日からトミタに出向で朔と顔を合わせないといけないからつらい。
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