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しおりを挟む時々、ウチで遥翔と須藤さんと3人で飲む。
須藤さんは高級なレストランやBARに行きたがるけど、3人で会って呑んでるとこを写真取られてSNSであげられそれが芸能ニュースのネタにされたら溜まったもんじゃない。
お酒は須藤さんが持ってきて、遥翔が地下の高級食品スーパーでおつまみ系オードブルなどを購入してくる。
私もサラダや簡単な手料理をつくり、リビングの机の上に料理をセッティングする。
「唐揚げや餃子って、揚げる、焼くだけだと思ってた」
事前にくる事がわかってる時は、庶民の料理になるけど、唐揚げやコロッケ、カツや餃子とかを作る。
「フライドポテトは揚げるだけなんだ」
キッチンに立ってる私の横で、遥翔がつまみ食いをしながら話してくる。
「あっ、須藤さんが下の食品スーパーに着いたってLINEメッセージがきた。酒持つの手伝ってくる」
今日はビールが合う料理が机に並ぶ。料理を振る舞いたい気分だったから、ガッツリ系の揚げ物と焼き餃子に焼き鳥を作った。
健康を考え、シーザーサラダを作り、枝豆も茹でた。
「ーーうまそっ!!手料理!?」
「フライドポテト以外は全て1から作りました。口に合えばいいですが!!」
両手に冷えっ冷えのビールや完酎ハイ、日本酒が入ったビニール袋を持って、2人がリビングに入ってきた。
「こういう料理もたまにはいいなぁ」
人気俳優兼アーティストだから、須藤さんは普段の食事は豪華なロケ弁か小洒落たレストランの高級料理を食べてるイメージがある。
実際は、細マッチョな肉体美を維持するために普段の食事は高タンパク質な料理とサラダ類で終わらせてるらしい。
遥翔は食にこだわりがなく、バランス栄養食が主食であまりの不健康さに家にいる時はいつでもご飯を食べにきてと伝えてる。
「美蓮ちゃん、こんな可愛いのになんでメディア露出はCGキャラクターなの?」
9月の初めとはいえ暑い日が続いてる。ビールに合う料理を作ったから、急ピッチで2人がビールの缶を開けていく。空き缶を水洗いして透明のゴミ袋に入れ、汚れた皿を交換するためにリビングとキッチンを行ったり来たりしてる私に、須藤さんが聞いてきた。
「始めたのが中1の時で、学校の先生や同級生とかにバレたくなくて、ボカロ風のCGキャラクターに歌わせてたんです」
「今はもう卒業したんだし、CGキャラクター使わずに本人で出演したらどう?」
CGキャラクターならスタジオまで行かずに、歌番組やテレビ収録とかをリモートでできて便利だったりする。
本業が物書きでマンションに引きこもって原稿を仕上げてるイメージを持たれてる。
「CGキャラクターで活動した方が気楽です。女性シンガーソングライターのグループに誘われて、気疲れしたので……」
遥翔とのデュエットを譲らなかった事でkahoの逆鱗に触れてしまい、LINEグループをブロックされてしまった。
だけど、グループメンバーで仲良くしてた子達とは時々個人的にメッセージのやり取りはしてる。
「kahoみたいなのと交流したから、そんな考えに陥るんだ。仕事をする上で同志との関わりは良い刺激を貰えて、自身の成長に繋がると思う。よりいいものをつくりだすきっかけになる」
ひたすら料理をつまみながらあさひスペシャルドライを飲んでいた遥翔が、ぼそりと呟く。
呑みにいく事は好きな遥翔。
作曲活動に入ってない時は割と夜に呑みに行ってる。
交友関係はそこまで広くはないけれど、仲良くしてるメンバーは俳優兼アーティストの須藤さんや星谷さん、三沢和弥さん、TOP YouTuberのヒカチンさんやワタル社長に、作曲家やIT起業の社長と、豪華な顔ぶれ。
バランス栄養食で食事を終わらす人なのに、思いつきから食のエンターテイメントみたいな“しゃぶ温野菜”とアマチュアバンドが生演奏するLIVE BAR “STAR LIGHT”なとを全国各地にチェーン展開させた遥翔。
昔は人との関わりを嫌う人だったらしいけど、今は人との出会いを大切にし、信頼できると思った人とは親交を深めていってる。
「ーーそういえば、瀬川くん、美蓮ちゃんが芥川賞をとった時にこの子と会って話してみたいってよく言ってたよな。まさか、出会って0日婚するとは思わなかった」
17歳の時に芥川賞を受賞した。
2020年にエブウイルスが大流行し、東京大学でウイルス学を研究している学生が治療薬とワクチンを開発する青春ストーリーで、未来予知した内容だったのもあり話題沸騰した。
この作品以外でも、謎解き青春ストーリーと恋愛青春ストーリーも他のコンテストで最優秀賞をとった。
「瀬川くんの奥さん役を務められるのは美蓮ちゃんしかいないか。17歳から小説家としても脚本家としてもシンガーソングライターとしても活躍してるって、天才だよ」
上京した時期が悪く、生活苦から創作の仕事を辞めようと頭に過ぎった。
今、この仕事を続けられてるのは、遥翔のおかげ。
「美蓮ちゃんと結婚した事を知ってるの、俺とヒカチンだけだっけ?」
「……俺とさし呑みするメンバーは知ってる。 BARのVIP roomで呑んでる時にうっかり話してしまった」
「コロアウイルスが流行してた時に完全予約制のBARのVIP roomに呼び出され結婚報告されたな。仲良い奴にさし呑みで報告してたんだ」
極秘婚だといったのに、遥翔は信頼できる親友達に報告していたらしい。
私は誰にも打ち明けていない。
両親にすら報告していない。
「美蓮、あのさ、今度、ヒカチンさんをここに招いていい?」
「……どうぞ」
須藤さんだけでなく、ヒカチンさんも我が家にくる事になった。
****
「やっと、奥さんを紹介して貰えた。たまにTwitterとインスタに自撮りを投稿してるの見るけど、本物、激かわだな!!」
ヒカチンさんだけだと思ってたら、遥翔が須藤さん含む親友4人を引き連れてやってきたから、固まる。
「ーー瀬川くん、美蓮ちゃんは映さないから、記念に動画撮影して投稿していい?星谷くんと三沢くんと一緒に飲む事ってないからネタにしたい」
須藤さんがイケメン俳優兼アーティストの星谷さんと三沢さんに声をかけたらしく、便乗で連れてきた。
三沢さんの美しさに思わずうっとり目を奪われる。
「ヒカチンさん、二次会でBARに移動してからにして下さい。部屋を晒すのはちょっと……」
「瀬川くん、奥さんが三沢くんに目を奪われてるよ。浮気されないよう気をつけないとっ!!」
ヒカチンさんがスマホで動画を撮ろうとしてるの止める遥翔に、須藤さんがとんでもない事を言う。
昼間っからビールやワインを飲みながら語り合ってる。
音楽に関する話で盛り上がってるのを、料理とお酒のおもてなしをしながら聞き耳立てた。
中高一貫校時代からの親友でライブサポートメンバーをしてるメンバー3人も遊びにきてくれた。
「遥翔、連れてき過ぎじゃない?」
「呑みに行くより、ここで集まりたいってみんな言うんだ」
月に5~6回ぐらい、遥翔がは親友を連れてくる。仕事の打ち合わせをしながら呑みながら和気藹々盛り上がっていて、もてなす側の私は大変だった。
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