Substitute lover

鳴宮鶉子

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逝かないでくれ side 翔琉

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将也が熱を出したから迎えにくるよう幼稚園から連絡があった。

将生の命日で心愛は墓参りに行ってる。
哀しみに浸っていて幼稚園からの電話に気づかなかったようで、実家に連絡が入り、俺が迎えにいく事になった。

将也が早退きするなら僕もと翔太が泣きじゃくるから翔太も連れて帰る事に。

麻布の実家に連れ帰ろうと思ったが将生がマンションに帰ると珍しくぐずりだし、平日の夜と週末にたまに将也と翔太を預かってるのもあり合鍵を持っていたから、マンションの部屋に2人を連れ帰った。

『心愛!!苦しいの!!大丈夫か!!』

『ーー 心愛!!翔琉、救急車!!』


家の鍵を開けると双子が走って家の中に入っていき、リビングに入るなり叫び声をあげた。
玄関で革靴を脱ぎ駆けつけると、心愛がフローリングの床に倒れ、全身性のけいれん発作を起こし意識を失っていた。

すぐに救急車を呼ぶ。

「心愛、瓶にア●●サ●ンを溜めてた。Safariで調べたら多飲したら死ぬって。血液透析などによる解毒・排泄は不可能だから、吐き出させないと心愛、死ぬ!!」

救急隊員に将也が伝えた。
リビングのテーブルの上には錠剤が入ってあっただろうMサイズの薬剤瓶と飲み干された500mlのミネラルウォーターのペットボトルが置いてあった。

薬が溶けて体に回る前に吐き出させないといけない。
救急隊がすぐに東京大学病院の救命救急センターに運び、胃洗浄という処置をされた。

「まさか、心愛先生がOD自殺を図るなんて……。瀬坂先生があんな死に方をし、1人で頑張ってきて、疲れたのかもしれないですね。急性ア●●●●ン中毒はすぐに吐き出させないと、心不全、呼吸不全、横紋筋融解症による急性腎不全などを併発し、24時間以内に死に至る。服用して15分以内に吐き出させたから、臓器に疾患が出ずにすんだからよかった。3日間は入院ね」

救命救急医の和田佳代先生から、心愛の状態の説明を受けた。
神崎院長も駆けつけ、心愛の容体を気にしていた。

「……心愛、死なないよね?」

「大丈夫。胃洗浄したから、命に別状ない」

不安で泣き出しそうな翔太を、将也が安心させようとしていた。

4歳ながら将来医者になるという夢を抱き、医学的な知識を吸収してる将也。
将也が心愛が薬物自殺を図ろうとしてると気づき、熱を出したふりをして早退きしたから、心愛を逝かせずに済んだ。

「心愛には俺がついてるから、将也と翔太はじいじとばあばと麻布の家にいて」

ICUに幼児をずっといさせられないから、駆けつけてきたお袋と親父に双子をお願いした。

心愛の側にいたいと翔太がぐずったが、将也に腕を引かれ、諦めて出て行った。

睡眠薬も多飲していたのもあり、心愛は胃洗浄が終わってからずっと眠ったままだった。

将生の所にいこうとした心愛。
俺は心愛をあの世にはいかせたくない。


「……心愛、目が覚めたか!!良かった!!」

13時間眠っていた心愛。
命さ血液の数値も正常値で臓器への炎症も収まってる事から、目覚めたら退院していいといわれ、生きてる事に絶望してる心愛を連れ、本郷のマンションに連れ帰った。

また自殺を図らないかが心配になり、仕事を休み、側につく事にした。

麻布の実家に連れて帰ろうと思ったが、心愛が拒絶し、だから、本郷のマンションに連れ帰った。

年末年始休暇前でやらないといけない仕事はあるが、在宅でできるものはやり、それ以外の会合や契約などは親父とお袋に代行して貰った。

息子達の目の前では心愛も命を絶とうとはしないはずと、幼稚園を休ませ、本郷のマンションで4人での生活が始まった。

「心愛、僕たちも手伝って作った餃子、食べて!!」

心愛に包丁は握らせられないから、料理は俺が双子と一緒に作った。
家政婦の三田さんが来てくれるといったが、4人で家族として時間を過ごしたくて、家事も料理もやった事がない俺だが、時に双子に教えられながら取り組んだ。

ホットプレートに包んだ具を包んだ餃子を並べて焼く。
肉餃子と海老餃子の2種類作った。
後、中華スープとご飯をつけ、リビングのテーブルで4人で座って食事をする。

食事量が減り、ただでさえ細い体がやつれてきて、少しでも食べさせようと好物の魚介類の刺身やカルパッチョ、マリエを買ってきても一口二口しか口にしない。

双子とハンバーグやカレー、グラタンを作り、3人でダッチを組み、心愛に食べるよう働きかけた。

寝る時は、さすがに将生と眠ってたベッドに俺が寝るわけにはいかないから、双子に心愛の事をお願いした。

精神科医の先生は、心愛は鬱傾向はあるが鬱ではないと、ただ、将生の所にいきたいという気持ちが強く、命を絶とうとしてると話してた。

自殺を図る前の日まで普通に生活を送る事ができてた。
外科医として、医療手術ロボットを使用しないオペを執刀してもミスなく成功させ、テルパスの開発エンジニアに対しての指導や新商品の開発も完璧にこなしていた。

自殺を図ろうとしたから、ベランダには出せない。
包丁は握らせれない。
お風呂も双子に監視させた。
自殺する隙を与えないために、1人には絶対にさせなかった。


「……もう、死のうとしないから、だから、普通に生活をさせて。何もしない生活を送る方が気持ちが滅入る」

10日間家に閉じこもり、4人でのんびりと暮らしてた。

「心愛と一緒にいたい。病院に行かないで、僕たちと遊ぼう!!」

「マサもショウも幼稚園休むのダメ!!翔琉も年末年始の忙しい時期なんだから、出勤しないと!!」

心愛は大学に進学してからは多忙極まりない生活を送ってた。
それもあり、何もしないという事に対してストレスになってるようで、仕事に復帰したいと言い出す。

「年末年始休暇明けまでは神崎院長も休むようにって。今週末はクリスマスだし、楽しもう。そういえばクリスマスだからってツリーとか用意してなかったな」

病院側もテルパスも、心愛が抜けた穴は大きく、仕事が溜まっていってるのが実情で、早期に復帰してほしい。

心愛は多くの人に慕われ、必要にされてる。

命を繋ぎ止めれてよかったと思い、万全な体調で戻ってきて欲しいと思ってる。

「マサ、ショウ、ツリーを買いにいくか!!」

「マサとショウは幼稚園に行きなさい!!翔琉、この子達は元気なんだから、幼稚園に行かせて」

心愛が母親の顔をして言い放つ。
2人とも賢いから幼稚園は行かさなくても大丈夫だろうっと思ったが、心愛の機嫌を損ねるのはよくないから、説得して、制服を着させて、4人で歩いて幼稚園に連れていく。

「心愛、死ぬなよ!!翔琉、後は頼んだ!!」

しっかり者の将也が心愛と離れたくないと泣きじゃくる翔太の首根っこを掴んで教室に向かう。

俺の血と将生の血でこうも子供の出来に違いがでるのかと、自分が情けなくなる。

「翔琉、テルパスに行こう。オート機能だからどうしても不具合でるから、それに対して改善させてアップデートさせないと!!」

開発エンジニア達から不具合に関して指示を出してくれと連絡は入ってた。
技術的な事はわかっても、オペの術式についてはわからなくて、命に関わる機器だから早期に対応しないとまずい
案件で、東京大学の教授に聞きにいくよう伝えてた。

タクシーを止め、心愛と乗り込むと赤坂にあるオフィスビルに向かう。

「……心愛、仕事の事は考えないでいいと言っただろ!!」

オフィスビルに着き、医療手術ロボット開発チームのところへ行くと、不具合のメールとFAXが溜まっていて、それを心愛は1つずつ目を通し、社員に指示をしていく。

「完璧に仕上げたつもりだけど、人の臓器も形に個性あるから、オートでオペするのに無理があるよね。画像処理でミクロ単位で動作のプログラムを組んで、……東大病院で類似のオペがあったら執刀させて貰って確認してアップデートしよう」

延長保育無しで迎えにいくと双子と約束したのに、18時半まで幼稚園に預け、仕事が終わらない心愛をオフィスに残し迎えにいき、ご飯を食べさせ、ツリーを購入して、心愛をオフィスに迎えにいく。

「心愛、もう元気じゃん!!」

「心愛は仕事してる時が1番生き生きしてる!!」

仕事に逃げてるとしか思えなかったが、双子は仕事復帰した心愛の姿を見て安堵していた。


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