Substitute lover

鳴宮鶉子

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芽生えた2つの命

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翔琉が私以外の女性と性行為をしてる。
私も将生としてるし、結婚前提でお付き合いしてるならしてもおかしくはないけど、それがすごく嫌で堪らなかった。

翔琉は4桁の数のお見合いをしても、ずっと1人でいて、私だけを求めてくれると思ってた。

吉原先生とは義務的にしただけとか、そう思おうとした。
でも、毎週末に吉原さんと会ってる。
そして、体関係をもってるのは確かで、その事実を確認に、翔琉への想いを清算しないといけないと思った。

「……お義母様、あれから離婚を急かしてこない?」

「……あの人、滅多に連絡してこないから。気にしないでいい」

父が殺害された事件がきっかけで、将生は自分が育ての父さんと血の繋がりがないと気づいたと言ってた。
それから、家にいるのが居心地が悪く、母方の祖父で日本医師会長の高嶋雅人に育てられたと打ち明けてくれた。

私と将生は似てる。
父親が同じだけでなく、3歳で信頼できる家族を失い、誰かに愛されたくてもがき苦しんできた。

「じいちゃんが俺と心愛の結婚を喜んでるし、あの人が今さら俺が櫻井将輝の血を引いてるとか言い出せるとは思えない」

将生の父は、将生が櫻井将輝の子だと悟ってる。
でも気づかないふりをしているから、私と将生の結婚に関して何もいってこない。

戸籍上は赤の他人だけど、異母兄妹で結婚させてしまった事に、義母だけが焦ってるようだった。

「子供が無事に産まれたら、異母兄妹でも問題ないっていう証明になるし、それまではあの人はほっとけばいい」

避妊をしてなかったから、結婚して3ヶ月目に妊娠した。
タイミング的に義母様が東京にきた時が排卵日で、翔琉の子の可能性もある。
異母兄妹での妊娠だと遺伝的に不安しかなく、産む事に躊躇してしまうけど、翔琉の子かもしれないと思い、産む決心をした。

「オペの執刀大丈夫か?」

「大丈夫。モニター見ながら“総司”を操縦するだけだから」

私が妊娠し安心したのか、将生が院長にかけあってくれて、水曜日に新型医療手術ロボットシステム開発を進めるためにテルパスへの出勤を許してくれた。

翔琉に逢えるのは嬉しいけど、もう昔みたいに触れてはいけない愛していけない人と線引きをし、仕事で必要最低限な事しか話さないようにした。

私が直接データをテルパスに持参できるから、吉原先生とは一切関わる子はない。
将生が完成に私と吉原さんが会わないようにしてくれた。

吉川先生は手先が不器用で外科には向かないと内科で研修を受けてるらしい。
しかも、脳神経内科で研修を受けていて、私が全く立ち入れない科で病棟も違うから出くわす事もない。

翔琉と吉原先生の交際がどこまで進んでいるかはわからない。

二卵性の双子を妊娠し、小さな体の私には負担額が大きく、8ヶ月目から管理入院する事になった。

なるべく栄養はとってもカロリーは抑えるようにし、赤ちゃんを大きくしないよう厳しい食事制限を強いられ、私自身も痩せ細っていく。

「……予定帝王切開の日どりを早めて貰うか?」

「大丈夫。なるべくお腹の中で育て
た方がいいから」

双子は36週前後に予定帝王切開で出産する。
早めの36週0日に予定してる。
私の希望は37週目の半ばで、希望に添うよう主治医の麻山真美先生が調整はして下さってるけど、将生が私の身体を心配して苦言していて困ってる。

東京大学病院の産婦人科病棟に入院したから、休憩時間や仕事終わりに将生は必ずくる。


「2人とも男か……、どっちかは女がよかったな!!」

検診の時間も事前に聞き、いつも駆けつけてくる。
産婦人科は専門外なのに、エコーを見て子供達の成長を把握する。
二卵性だから受精した日が違い、2人の成長度合いに差があって、次男の方に栄養がいってないようで心配はあるけど、心配していた先天性疾患と染色体疾患はなさそうと言ってるから、ほっとしてる。

「3Dエコーでみるとこの2人、似てないな」

長男は私と将生にそっくりだけど、次男は違う。
翔琉に少し似てた。もしかしたら、異父過妊娠したのかもしれないと頭によぎる。

翔琉の子を妊娠する事ができた。
将生が勘づくかもしれないけど、結婚してからの不貞行為は1度だけ。
気づかないふりをして許してくれると思う。

「データ収集、将生くんが心愛の代わりにしてくれてるんだってな。今度お礼を言わないといけないな」

子宮頚管が短くなってるのもあり、最低限しか立ち歩く事ができない。
将生がデータを集めて渡してくれたのを昼間、ノートパソコンに取り込み、システム開発のプログラムを組んでる。
水曜日の午後に翔琉がそのデータを取りにくる。
兄妹だからお見舞いにきてもおかしくないけど、すぐに帰っていく。

将生がデータを前みたいに吉原先生に託さないし、翔琉が私のお見舞いに吉原先生を連れてきた事はない。

管理入院を始めて1ヶ月半経った。
35週目に入り、推定体重は長男が2000gで次男が1200gで、2人とも体は完全にできあがっていて、麻山から、もう帝王切開で出産しても問題はないといわれた。

次男をもう少し、お腹の中で育てたい。
だから、37週と3日に予定帝王切開をする事にした。


子宮頚管が1.5cmとかなり下がっていて、陣痛がきたら即、帝王切開といわれる。
子宮収縮抑制剤のウテメリンの点滴をし、ベッドにテルパスの仕事もせずにベッドに横になってた。

やる事もなく、お昼ご飯を食べた後に眠っているといきなりお腹が痛くなり目が覚め、ナースコールを鳴らすも、線を切られていて音が鳴らない。

ちょうど午後の回診の後でしばらく看護師と医師の巡回がない時間帯。
将生にLINEを送るもたぶん予定オペの執刀で届かない。

パンっと下腹部から音がした途端に生暖かい潮の匂いがする羊水が流れ出てきて、ベッドを濡らす。

「……なんで、子宮収縮抑制剤の点滴入れてて、子宮頚管が短くなってると言われたけど、こんなに早く、陣痛がくる!?」

特別個室で5分置きにくる陣痛に苦しみながら立ち上がろうとするも、頭がくらっとして無理だった。

考えたくないけれど、薬剤の取り間違えで陣痛抑制剤を陣痛促進剤と間違えていれられたのかもしれない。
しかも、通常の倍以上な気がし、左手の点滴の針を抜いた。
点滴を抜いたから装置からブザーがなり、看護師さんが駆けつけてきて、陣痛で苦しんでいる私の姿をみてすぐに麻山先生と将生を読んでくれた。

「……将生、この点滴材の中の薬剤、調べさせて。たぶん、陣痛促進剤を基準量以上入れられてる」

「……だろうな。麻山先生、これは俺が預かる」

将生が私を抱き上げベッドの上に下ろし、すぐに麻山先生が子宮口を確認した。

「……えっ、全開!!分娩監視装置持ってきて……、陣痛が帝王切開間に合わないわ。普通分娩で産むしかない。分娩室に移動!!」

5分間隔に90秒間ぐらい陣痛がきていて、双子のどちらかが産まれそうな感覚はあった。
車椅子に乗せられ、分娩室に入る。

将生も点滴の袋を信頼できる薬剤師に渡し、至急調査の依頼をしてから分娩室に駆けつけた。

「心愛さん、いきんで!!」

1人目が出てきた。私と将生にそっくりな1980gの男の子が出てきた。
元気な泣き声をあげてたけど、すぐにNICUに運ばれる。
そして、その15分後に、翔琉そっくりな子が産まれてきた。
でも呼吸はしていても泣き声をあげなくて、様子がおかしいとすぐにかんごしが新生児科の医師に連絡を入れ、NICUに連れていく。

将生も息子達についてNICUへいき、私は分娩室に残り、麻山先生から後産の処置を受ける。
分娩後2時間は分娩室から出られない。

次男が無事か心配で堪らないけど、分娩台に横たわる事しかできず、悶々としてた。

誰かが意図的に私に陣痛促進剤を投与し、出産させた。
長男は問題なさそうだったけど、次男は顔が青白く、ダメかもしれないと思い、哀しく涙が溢れてくる。

将生に想いを寄せてる女医や看護師はいる。
卑劣な命を脅かす行為をした犯人の事が許せなかった。



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