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家族になろう

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翔が蓮翔くんに懐いてるのを見ると、蓮翔くんが翔の父親になりたいというなら、家族になるのもいいのかなと思った。

日曜日の夕方に、叔父さんから預かったマカロンを届けてくれた蓮翔くんに、翔が遊んでと離れなかったらしい。

蓮翔くんが帰ろうとすると、腕につかみ離れようとしない翔。

蓮翔くんに泊まって貰う事にしたら、翔が、蓮翔くんに『銭湯に連れて行って』とお願いした。

女親だと小学生以降は、銭湯で息子と一緒に入ることはできない。

銭湯で思いっきり楽しんで帰ってきた翔。
蓮翔くんと並んで歯磨きをして、蓮翔くんに添い寝して貰って、眠った。

「翔、寝た?」

翔の部屋をのぞくと、蓮翔くんは、すやすや眠る翔を眺めて笑みを浮かべてた。

父親の顔をしてる。

翔の部屋に入り、ベッドに近づく。

「相馬助教授、お時間少しよろしいですか?」

「そんな、よそよそしい言い方、辞めてくれないか。翔くんにも相馬助教授って言うの辞めさせたい。銭湯で
大声で言われて、周りから注目されたよ」

わたしが蓮翔くんのことを相馬助教授っていうから、翔も同じように言ってしまう。

思わず、“クスクス”っと笑ってしまった。

「そういえば、家庭教師をしてくれてた時も、先生って呼んだら怒ってたよね。じゃ、今から、また、蓮翔くんって呼んでいい?」

わたしがそういうと、ずっと翔の寝顔を眺めてた蓮翔くんがわたしの方を振り返って見てきた。

「咲良、ありがとう。嬉しい」

蓮翔くんの優しいはにかんだ笑顔。
昔と変わらない。


「蓮翔くん、あのね、翔の事を考えて、蓮翔くんが前に言ってくれた事を前向きに考えようと思うの…」

「俺と家族になってくれるの?」   

蓮翔くんがわたしの両手を取り、わたしの顔をまじまじと見る。

わたしは、恥ずかしくて頷く事しかできない。

「俺、咲良の事も翔の事も大事にする。
咲良と関係を持って以降、俺、咲良以外に興味が持てなくなって、あれからずっと、咲良の事だけを愛してた。 嘘じゃない。本当。
だから、咲良が俺の子を産んで1人で育ててくれた事が嬉しかった」

「えっ、わたしと結婚したいの、教授の椅子が欲しいからじゃないの?」

蓮翔くんの告白に、わたしはとんでもない返しをしてしまった。

「それは中津助教授だろ。別に俺、教授にならないでもいいし。咲良と翔くんがそばに居てくれるなら、それだけでいい。
咲良は、俺の子を身籠り、産んで、育ててくれた。
咲良も、俺の事を愛してくれてると思っていい?」

蓮翔くんがわたしを見つめて言う。
恥ずかしくて、頷く事しかできない。

「咲良、俺、咲良と翔くんと暮らしたい。俺のマンションで3人で暮らそう。咲良と翔くんと離れたくない。家族になろう」

蓮翔くんの言葉に、わたしは、もちろん、頷いた。
そして、わたしも言う。

『蓮翔くん、わたしと翔の家族になって下さい』

この時から、わたしと翔は、蓮翔と家族になった。

叔父さんと加奈子さんに、蓮翔と家族になる事を伝えた。

祝福してくれた。

そして、翔に、蓮翔が翔の本当の父親だと伝えた。 

翔はわかってた。

似てるからでなく、本能的に父親と感じたらしい。

親子は、不思議な絆で結ばれてるのかもしれない。





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