繋がる幸せ…愛しい人と

鳴宮鶉子

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地獄のような多忙を極めていたシステム課は、現在、嘘のように落ち着いている。

理由は、HPやアプリ開発に関して、新堂先輩がテンプレートを何パターンか作り、各パソコンのソフトとして入れてくれて、複雑なプログラミングに関しても瞬時に対応してくれてるから。

システム部部長補佐のわたしが、なぜか、ヘルプで対応する役割をし、呼ばれない間はマニュアル作りを言い渡された。

新堂先輩が帰国し、5年間も音信不通だったのに、再会したその日から、わたしを昔のように可愛がってくれて、そばに置いてくれて、新堂先輩の隣に居られる事がとても嬉しくて楽しかった。

新堂先輩は会社から徒歩5分のところに最近建設されたタワーマンションの最上階の1番広い部屋を購入していた。
タワーマンションと言っても、うちの億ションとは違い、高級感が売りでは無い。
地下にスーパーは入っていても、一階はブランド店でなく本屋と電気屋と百均が入ってた。
リビングが広く、室内庭園があるのが新鮮。
アメリカから届いた荷物を片付けるために先輩のうちに通っていたら居心地が良くて、居着いてしまった。
新堂先輩に《天音歌恋》の新作を見て貰いたくて、先輩から許可を貰い、空いてる一室にわたしのマンションの創作部屋に置いてたパソコン等を引っ越しセンターを呼んで運んでもらった。
わたしが住んでいた億ションの最上階に、将来のアメバドアの社長夫婦住んでいるのが気まずく、新堂先輩に甘えて、彼のマンションに身を寄せた。
マンションを売りに出したら元値より高く売れた。


新堂先輩が、システム部部長に就任した日にわたしが彼に抱きついた事から、大学時代の先輩後輩で恋人同士で、再会してすぐに復縁して、一緒に住んでいて、社内でもラブラブしていると噂が流れてるけど、実際は一緒にいてわたしが頭を撫でられてるだけの存在に過ぎない。
新堂先輩とは社内社外問わずにずっと隣に居た。
ランチタイムも部長室でわたしが作ったお弁当を食べたり、たまにランチに連れ出してくれたりした。
仕事の関係で新堂先輩と一緒に居られない時は凛花達とランチに行く。

「大学時代の時から、仲良かったよね。
咲良と新堂先輩。いちゃつき過ぎなんだけど」
今日は駅前のお寿司の丼やへきた。
新堂先輩のおかげで、システム部は平和そのもの。
こうやって、ランチタイムを楽しめるようになり、業績もかなり伸びた。

周りからかなり誤解を受けてるけど、新堂部長と常に一緒にいるけど、彼とはいわゆる繋がる行為はしてない。
それは大学時代の頃も同じで、寄り添い一緒の布団で寝ていても、抱きしめてくれるだけ。


「部長職以上管理職会議あるから夕飯は食べてくる。面倒くさい、無意味…」

夕方に秘書から内線がきて、いつもながらの突然の収集に、嫌そうな顔して電話を切る。

季節は12月の半ば。
新堂先輩がシステム部部長になり1ヶ月半経った。
その間、2週間に1度ほど行われる金曜日に管理職会議という飲み会に召集される。
中身のない会で、社長の娯楽で行われてるようで、時間の無駄とかなりご立腹だ。

わたしも、その会で新堂先輩が有川営業部長とIT関係の技術に関しての内容だけどわりと話すとかで、かなり複雑だ。
有川営業部長の事を【腹黒営業部長】と言ってるから、そう仲良くは無いと思うけど…。

新堂先輩に有川営業部長と付き合っていた(?)事は話してない。
流されて付き合ってた(?)関係が不純すぎて話せなかったりする。
有川営業部長との関係は誰も知らない。
わたしのシステム課への異動は、新堂先輩が会社側に打診したそうで、社長は有川営業部長の身内調査はしてないようだ。

有川営業部長との関係は5ヶ月ほどの事。
今は全く関係ない。

新堂先輩が役員会議という名の社長の娯楽に付き合ってる間、新堂先輩のマンションの一室、わたし専用の創作活動部屋で、黙々とイラストレーターでイラストを書いてた。
新堂先輩が帰ってきてから、《天音歌恋》としての活動は順調。
クリスマス向けに作詞作曲してアニメーションPDをつけて歌を引き込んだ動画が大ヒットした。
そして、HPに小説を掲載し始めた。
それを読むために、HPのアクセス数が増えた。

午前2時過ぎに、新堂先輩が帰ってきた。
「あれ、咲良、起きてたの?また創作活動してたの…」
わたしが玄関まで駆けつけると、先輩がいつものようにわたしの頭を撫で回す。
「シャワー浴びてくる…」
社長にホステスがいる飲み屋に連れて行かれたのか、コートに甘ったるい残り香がある。
「咲良、このコートとスーツ、クリーニング出しといて」
新堂先輩はすぐに浴室に入って行った。
新堂先輩は潔癖な所がある。
絶対に不純な事はしない。
大学時代も、先輩といた期間の後半はわたしは彼のマンションに入り浸り、寝起きを共にしてたけど、彼と繋がる行為はなかった。
彼が、
『学生身分で責任が取れる立場にいないから』
と、線引きし、わたしを大切にしてくれた。
有川営業部長と正反対。
だから、新堂先輩に有川営業部長と関係があった事を知られたくない。
知られる事が怖かった。


「咲良、ヤホトピとかに《天音歌恋》の活躍についてネタ上がってたね」
シャワーを浴びて出てきた新堂先輩がパジャマ姿で髪をガシガシ拭きながらリビングに出てきた。
「おかげさまで、仕事が忙しくて半年ぐらい副業が停止状態だったから、その反動もあるのかHPのアクセス数も毎日億いってるし、アプリや曲のダウンロード件数も停滞してたのがうなぎのぼり。年始年末休暇に入るし新しく何か作りたいなって考えてる」
新堂先輩に冷蔵庫で冷やしてるミネラルウォーターをコップに入れて渡した。
「そっか、咲良は一般職なんだから、本来は残業はいけないんだよな?
いつも俺に付き合わせて退社が遅くさせてるけど…。
これからは定時に退社して、《天音歌恋》の活動時間に当てれるよう気をつける。
俺も《天音歌恋》のファンの1人だから、仕事よりもこっちの活動に専念して欲しい」

新堂先輩はわたしの事を1番に考えてくれて、わたしが喜ぶ言葉をかけてくれる。

「ありがとう」

と、わたしが先輩に抱きつくと顔を赤めて、抱きしめてくれて、頭を撫でてくれる。

わたしとしては、それ以上の大人の関係を知ってしまったから、先輩にもっと深く触れて貰いたいと願ってる。
それをわたしから先輩に伝える事ははしたなく思うし、でも先輩は真面目だから、きっかけが無ければずっと今のままな気がする。

「もう遅いから寝よう」

と、彼に声をかけられ、ダブルベットで彼に抱きしめられて眠る。
先輩と一緒にいるのに、寂しさを感じてしまう、大人の関係を知ってしまったわたし。


「咲良、ご飯行こうよ。新堂部長、今日も役員会議で夕飯別なんでしょ?」
今日は定時退社できるらしい凛花。
新堂先輩がシステム部部長になり、廃人化していたSE達が健康的な顔色に戻り、毎日生き生き仕事をしてる。
「そうだね。行く行く!!」
今日も、役員会議という名の社長の娯楽に徴収されげんなりしてた新堂先輩。
申し訳ないなと思いつつ、凛花と駅前の創作和の国和食居酒屋の【茶々小屋】に入った。
忘年会シーズンに入るから、店内は混み合っていた。
「新堂部長も大変だね。ここのとこ毎週金曜日役員会議でしょ」
役員会議という名の中身の無い無意味な社長の娯楽という事実は、親友にも言えない。
「新堂部長がうちの会社に入って、短期間に業績がかなり伸びたよね」
営業がとってくる仕事に対し、今までは納期がかかりすぎて業績が伸びなかった。
それが、新堂部長がシステム部部長に着任し、彼が作ったテンプレートのおかげで仕事にかかる時間や負担がかからなくなり、そして仕上がりのレベルが上がった事からかなり業績が伸びた。
SEのスキルの低さが問題だったのを、新堂部長が1ヶ月もかけずに解決させた。

「でもさ、新堂部長がオレンジを辞めてうちの会社に来たの、勿体無いよね」
ビールを片手に凛花がいう。
わたしも、新堂先輩がオレンジを辞めて日本に帰国し、アメバドアに転職した事を疑問に思ってた。
先輩は大学のゼミの教授とは新しいプログラミング技術についてよく連絡しあっていて、それでわたしの勤務先を聞いたと言ってた。

新堂先輩は、オレンジに入社してからも、わたしの《天音歌恋》としての活動をずっと見守ってくれてた。
今年の4月以降に活動がほぼ停止しているのが気になり、
「咲良の事が心配になって、オレンジを辞めて帰って来た」
と言ってた。
「オレンジで成し遂げたかった仕事は充分にしたから」
と付け加えてらたけれど…。

美味しい料理に舌鼓し、酎ハイに2杯飲んで満足したわたし。
マンションに帰り、リビングのソファーでうたた寝してしまった。


「咲良、こんなところで寝ちゃったら、身体が痛くなるよ」
夜中の2時過ぎ、新堂先輩が帰宅し、リビングのソファーで、コートを着たままソファーにもたれて夢の中にいるわたしに声をかけた。
「ちょっと待ってて。タバコと酒の匂いを落としてくる」
わたしの頭を撫でて、先輩は浴室へ行った。
5分ほどで戻ってきた。
そして、ソファーにもたれてるわたしのコートを脱がし、抱き上げて寝室に連れていった。

今日のわたしは、赤いVネックのセーターに膝上スカート、黒いあったかいタイツを履いてた。
新堂先輩はベッドに寝かせて困ってるようだった。
寝苦しそうな服装をしてるから、着替えさせるべきか悩んでるようだった。
タイツだけはせめて、蒸れるから脱がして欲しいと思いつつも、新堂先輩は動かない。
しかも、iPhoneで何かを調べ始めた。
そして、結局はわたしの下着以外を脱がし、ブラのフォッグを外して楽にしてくれた。
でも、無防備な恰好になったからか、いつもは抱きしめて寝てくれるのに、先輩はわたしに背を向けて寝ようとした。
薄着だし、先輩が抱きしめてくれないから、寒い。

「新堂先輩、なんで、わたしにキスとかしてくれないんですか?」
背中を向けてる先輩を後ろから抱きつく。
「さ、咲良…」
戸惑い、焦って、オドオドしてる先輩。
「新堂先輩、わたし、先輩が大好きです。先輩が好きすぎておかしくなりそうです。先輩、キス以上の事をわたしにして下さい」
先輩が身体の向きをわたしの方に向けて、わたしを抱きしめて、優しく1度キスし、そして舌を絡ませ、不慣れで歯をぶつけながらむしゃぶりつくように長いキスをした。
そして、わたしの肌を壊れ物を触るように撫で、小ぶりの2つの山の頂を口に含み吸った。
先輩は今まで女性と身体を交えた事は無いとわかる。
不器用にわたしを抱いてくれる。

「咲良、ゴムがないから、今日は辞めよ」
先輩がわたしの中に肉棒を埋めようとして思い留まる。
でも、愛しい新堂先輩に触れて貰い、身体中が疼いてしまい、はしたないけど、先輩に馬乗りになり肉棒をわたしの中に埋めた。
先輩の肉棒をしごくように、わたしは頬を赤らめながら腰を上下する。
戸惑う先輩のくちびるにキスをし、舌を絡める。
先輩はたまらず、わたしの中に白い遺伝子の詰まったエキスを放出した。

愛している人と繋がる事はとても気持ちが良くて穏やかな気持ちになるんだと、先輩と繋がって知った。
そして、愛しい人と寄り添い過ごす時間がこんなに楽しくて幸せなんだと感じた。

初めて繋がった日の明る朝。
新堂先輩はしばらくの間は照れて、わたしを見るたびに赤面した。
せっかく繋がれたのに、いけない事をしてるかのように、新堂先輩がわたしを触れるのを避けるから、わたしの方から彼にアプローチして繋がった。

新堂先輩との生活。
職場でも家でも常に2人寄り添っていく。





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