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選択される命 1

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エコーでダウン症の可能性を判断できるようになるのは、妊娠11週以降。11週以降になると胎児が検査に十分な大きさになり、ダウン症児の特徴がわかるようになる。
紹介状を持って転院してき妊婦さんに羊水検査や絨毛検査などの確定診断を受けて貰い、ダウン症の有無について伝える。

「今回は……中絶します」

羊水検査でクラインフェルター症候群の診断が出た妊娠15週の夫婦。
クラインフェルター症候群は男児500人に1人の割合で発症する先天性異常。
目に見える症状が出ず、日常生活を送ることに支障のないケースも多く、一生クラインフェルター症候群だとわからないまま過ごすケースもある。
ただ、女性化乳房や不妊、運動機能の低下などがあり、38歳夫と35歳妻は堕胎を選択した。

羊水検査でダウン症が遺伝子的疾患があるとわかると、中絶を決める夫婦は多い。

ダウン症候群(21トリソミー)は、染色体異常症のなかで出生児の約600人に1人の頻度で発生する最も多く見られる症例。
妊婦の年齢が高齢になるにつれて発症率も高くなる。
顔貌の特徴としては、目尻が上がっていて二重まぶたで顔は平たく鼻が低い点が挙げられ、後頭部は絶壁で、知的発達の遅延や筋肉の緊張が低下することに伴う運動機能の低下などの症状が見られる。

エドワーズ症候群(18トリソミー)は発症頻度には性差があり、1対3で男児よりも女児に多い傾向があり、発症頻度は出生児の約6,000人に1人。
手足に特異症状が見られ、手をグーの状態にして指が重なり合うようになっていたり、脚の親指が上向きにカーブしていたりすることがある。
寿命が短く、妊娠中に母体内で亡くなってしまうことも少なくなく、無事出産できても、1年以内に亡くなってしまうことが多い。

パトー症候群(13トリソミー)は出生頻度は約10,000万人に1人で、平均寿命は3~4ヵ月ほどとされており、1年以内に亡くなってしまうケースが9割。
無事に生まれたとしても心臓疾患や生殖器の異常など、さまざまな臓器に重度の障害を抱えていることが多く、高度な医療的ケアが必要。

ターナー症候群は、女児のみに発症する疾患で低身長、不妊などの障害があり、女児2,000人に対して1人の頻度で発症し、二次性徴期にはホルモンによる治療が必要になる。

トリプルエック症候群は女児1,000人に1人と他の染色体異常と比べて高い出生頻度で目に見えて特異的な身体的所見が少ないものの、知能の遅れや言語発達の遅れがみられるのが特徴で、まれに月経不順や不妊症などが見られることがある。

健康で優秀な子を熱望し、宿った命を障害を理由に育てられないと堕胎する。
羊水検査をしなければわからずに産まれてこれた命。

妊娠22週までは中絶手術ができる。
産婦人科の専攻医になり、週に3~5回、多い時は日に3回、中期中絶の堕胎のための普通分娩にら立ち合い、気持ちが沈んだ。

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