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第2唱 可愛い弟子には旅をさせよ
お茶の顛末
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「だ、大丈夫ですか、ドロシアさんっ」
ラピスが顔を覗き込むと、ドロシアは「眩しいっ!」とふらつきながら立ち上がる。
「おおぅ。だいじょぶ、大丈夫よ~何も問題ありません! 天上人クラスの美少年の笑顔に、危うく昇天しかけただけ~。落ち着け~落ち着けわたし。でもでもそうね、一緒にお茶でもできたら、すっごく元気になれちゃうな~♡なんつって」
「なるほど。みんなで一緒にお茶を飲みたいのですね!」
ようやくちゃんと理解できることがあった。
ラピスは「待っててくださいね」と言い置いてカウンターに駆け寄り、お茶を注文した。クロヴィスから渡されていたお小遣いで支払おうとすると、ジークが横に来て払ってくれた。
にこにこしてジークと店主にお礼を言うと、店主もにこにこして「これは日持ちするから旅先でお食べ」と、ドライフルーツがいっぱい詰まった焼き菓子をくれた。ディードの好きな菓子なので嬉しい。
もう一度礼を言ってから席に戻ると、ドロシアがラピスを見つめながら目を潤ませ、立ち尽くしている。
「お店の人がお茶を運んでくれるって言うから、待っててくださいね」
「あ、ありがとおぉぉ~! まさか天使にご馳走してもらえるなんて~!」
(なんだか楽しい人だなぁ)
ラピスはくすくす笑って、先ほどから心配そうにドロシアを見ていた彼女の連れのメンバーたちにも声をかけた。
「お茶、美味しく召し上がってください! ドロシアさんも、みんなで一緒にゆっくりお召し上がりくださいね」
「へ?」
二人が話しているあいだに、ジークとディードは素早く身支度を済ませていた。さらにディードは、ドロシアに話しかけている最中のラピスに、外套や帽子などをパッパッと着させてくる。
――ラピス自身は、ドロシアの言った「一緒にお茶を」の意味を勘違いしたことに、気づいていなかった。
しかしジークとディードはラピスが勘違いしたことを正確に察知し、「この隙に」とばかり目配せして支度を始めたのだが、そのことにももちろん、気づいていなかった。
とても嬉しそうにしていたドロシアが、なぜかポカンと口をひらいたまま固まってしまったことを不思議に思ったものの、ジークたちが出発の態勢に入ったので深く考えず。
そもそも朝食のあとすぐ出発する予定だったので荷物はまとめてあったし、旅慣れた二人なので支度も早い。準備万端整えたディードが、
「では、ドロスン・アリスンさん。失礼します、よき旅を」
そう挨拶したのを汐に、
「じゃあまたね、ドロシアさん! みんなも古竜に会えますように!」
ラピスも笑顔で手を振り、宿をあとにしたのだった。
間を置かず、ドロシアのメンバーたちの卓へとお茶を運んできた店主が「はいよ、茶ぁお待ち!」と張り上げた声で、ドロシアはハッと我に返り――
「ドロスン・アリスンじゃねえよ!」
と、茶をがぶ飲みしていたなんてことは、もちろんラピスは知る由もない。
ラピスが顔を覗き込むと、ドロシアは「眩しいっ!」とふらつきながら立ち上がる。
「おおぅ。だいじょぶ、大丈夫よ~何も問題ありません! 天上人クラスの美少年の笑顔に、危うく昇天しかけただけ~。落ち着け~落ち着けわたし。でもでもそうね、一緒にお茶でもできたら、すっごく元気になれちゃうな~♡なんつって」
「なるほど。みんなで一緒にお茶を飲みたいのですね!」
ようやくちゃんと理解できることがあった。
ラピスは「待っててくださいね」と言い置いてカウンターに駆け寄り、お茶を注文した。クロヴィスから渡されていたお小遣いで支払おうとすると、ジークが横に来て払ってくれた。
にこにこしてジークと店主にお礼を言うと、店主もにこにこして「これは日持ちするから旅先でお食べ」と、ドライフルーツがいっぱい詰まった焼き菓子をくれた。ディードの好きな菓子なので嬉しい。
もう一度礼を言ってから席に戻ると、ドロシアがラピスを見つめながら目を潤ませ、立ち尽くしている。
「お店の人がお茶を運んでくれるって言うから、待っててくださいね」
「あ、ありがとおぉぉ~! まさか天使にご馳走してもらえるなんて~!」
(なんだか楽しい人だなぁ)
ラピスはくすくす笑って、先ほどから心配そうにドロシアを見ていた彼女の連れのメンバーたちにも声をかけた。
「お茶、美味しく召し上がってください! ドロシアさんも、みんなで一緒にゆっくりお召し上がりくださいね」
「へ?」
二人が話しているあいだに、ジークとディードは素早く身支度を済ませていた。さらにディードは、ドロシアに話しかけている最中のラピスに、外套や帽子などをパッパッと着させてくる。
――ラピス自身は、ドロシアの言った「一緒にお茶を」の意味を勘違いしたことに、気づいていなかった。
しかしジークとディードはラピスが勘違いしたことを正確に察知し、「この隙に」とばかり目配せして支度を始めたのだが、そのことにももちろん、気づいていなかった。
とても嬉しそうにしていたドロシアが、なぜかポカンと口をひらいたまま固まってしまったことを不思議に思ったものの、ジークたちが出発の態勢に入ったので深く考えず。
そもそも朝食のあとすぐ出発する予定だったので荷物はまとめてあったし、旅慣れた二人なので支度も早い。準備万端整えたディードが、
「では、ドロスン・アリスンさん。失礼します、よき旅を」
そう挨拶したのを汐に、
「じゃあまたね、ドロシアさん! みんなも古竜に会えますように!」
ラピスも笑顔で手を振り、宿をあとにしたのだった。
間を置かず、ドロシアのメンバーたちの卓へとお茶を運んできた店主が「はいよ、茶ぁお待ち!」と張り上げた声で、ドロシアはハッと我に返り――
「ドロスン・アリスンじゃねえよ!」
と、茶をがぶ飲みしていたなんてことは、もちろんラピスは知る由もない。
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