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第29章 禁断の杯
授かれる?
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「アーネスト……もう少し奥まで挿れて、大丈夫か?」
小刻みに腰を揺さぶられながら訊かれて、「うん、うん」と夢中で何度もうなずいた。はしたないけど、目隠しされているから大丈夫なのだ。……そのはずだ!
覆い被さるように伸び上がってきた寒月にキスされて、下肢もさらに突き出すようにひらかれる。
慎重に、それでいて確実に結合は深くなる。
未だ残る怯えから腰を引こうとしたけれど、すぐに大きな手に引き戻された。そうしてお仕置きのように、いっそう奥へと侵入される。
「ああっ! んん……っ」
感じるところを容赦なく突かれて淫らに喘ぎながら、なぜだか急に、ジェームズの手紙を思い出した。桃マルムについて書かれた、あの手紙を。
ご先祖のユージーンさんは、桃マルムが現れるたびに愛する人と致した結果、大きなマルム茸を通じてお子を授かった。そう書かれていたけれど……
あまりに突拍子もない話だったので、もしもそんな奇跡が本当に起こるならどんなに幸福だろうかと期待はしつつ、忙しない日々の中で、真剣に向き合うことをしないままだった。
正直、向き合うのが怖かったんだ。
すべて信じて、そうなると信じ切ってしまったあとで、希望が打ち砕かれたら。
やっぱりそんな奇跡は起こらないと思い知らされたら。
立ち直る気力は、僕にはもうないかもしれない。
寒月と青月を、心の底から愛している。
僕が短命の血から逃れられないとしても、せめて二人に子を遺したい。
その切望にすがったあとの落胆は、いかほどだろうか。
長くは生きられないだろうと、覚悟してきたつもりだ。
けれど諦めることに慣れていた昔と、双子に出会った今とは世界そのものが違う。
二人と一緒に過ごせる時間を惜しまずにはいられないし、そう遠くない未来に訪れるのであろう別れを思うと、寂しくて悲しくて……怖くて。想像しただけで胸が苦しくなって、泣きそうになる。
こんなつらさを、母も祖父も、どうやって耐えていたのだろう。
「……っ」
目隠しされていてよかった。
こらえきれず浮かんだ涙は、あふれる前にリボンに吸い込まれた。
でも双子は、敏感に僕の変化に気づいたようで……いつもとんちんかんな勘違いをするくせに、こんなときばかり鋭いというか、虎の野生の勘というか。
「どうしたアーネスト」
「寒月の馬鹿が乱暴すぎたんじゃないのか!?」
「ち、ちが」
違うと言い終わらないうちに、焦った双子に目隠しを外されてしまった。
涙はリボンに拭われているからよかったけども、この状況で二人にガン見されているという、別の意味で泣きたい事態になっている。でも……
「痛いのか? もうやめようか」
そう言って覗き込んでくる寒月のほうが泣きそうに見えて、あまりの愛おしさに吹き出してしまった。我ながら精神状態が安定しない。
手を伸ばし、汗に濡れた金色の髪をかき上げながら、「痛くないよ」と翠玉の瞳を見つめた。
「僕は本当に、寒月と青月のことを愛しているんだなって改めて思ったら……胸がいっぱいになっちゃった。それだけ」
「「アーネスト……!」」
心配そうだった二人の瞳が輝いたのを見て、またも吹き出しかけた。このイケメンな虎王子様たちは、ときどき本当に、幼い子供みたいな顔をする。
このおっきな子供たちのためにも、本気で『奇跡』を信じてみよう。
感情が嵐みたいに急降下したり急上昇したりするのをこらえ、愛する二人に微笑みかけると、寒月が感極まったように目元を赤くした。
「俺も愛してる。生涯お前だけだ、アーネスト」
「俺もだよアーネスト。ずっとお前だけを想い続ける」
「寒月。青月……」
珍妙な下着姿で寒月を受け入れながら愛を囁き合っているという、恥ずかしい状態は見ないことにして。
愛し愛される至福に、胸を熱くしていたら。
「よし! 痛くないのなら、胸だけじゃなくこっちもいっぱいにしような!」
「はひ?」
なんのことやら理解する前に、ズクッとさらに深く穿たれた。
……そういう意味かー!
「あ……っ、い、いっぱいすぎるぅ」
「うっわ可愛いぃ! はあ、やっべ。アーネストが好きすぎて鼻血出そう」
僕の憂慮など秒で吹き飛ばす寒月の言動に、いつもずいぶん救われていると思う。
浅い抜き挿しを繰り返す動きから、急に引き抜かれ、一気に深く侵入されて、余計な思考も吹っ飛んだ。
抽挿のたびにさらに奥までひらかれて、感じるところを容赦なく突かれる。内壁をこじ開けられる快感に、耳を塞ぎたくなるような声が口から飛び出すのを抑えられない。
寒月は色気が滴るような笑みを浮かべて、ぺろりと唇を舐めた。
「アーネストが自分から尻を押しつけてくるの、超エロくて幸せ」
「そんな、こと、あ……っ、し、してないっ」
「ほんとに~?」
言いながらズルッと抜かれて声を上げ、次の動きに備えていたが、寒月は先端をつぷりと潜り込ませただけで、動いてくれなかった。
またも焦らされて、僕は涙目で寒月をにらんだ。
「ううぅ。寒月ぅ」
「エロくお尻を動かしてると認めよ、アーネスト」
「ばかぁ!」
「うおっ、締まりすぎっ」
躰をビクッとさせた寒月を、青月が「いじめてんじゃねえよ」と氷点下の声で叱りつけた。が、寒月は「こんな可愛いのに、いじめるわけねーよなあ?」と反論し、唇を重ねてきた。
夢中で舌を絡めるうちに挿入が深くなり、腰の動きも激しくなって。
激しすぎる快楽に翻弄されながら、やはり寒月の言葉は正しかったと認めざるをえなかった。僕は気づけば淫らに喘いで腰を振り、貪欲に寒月を求めていたのだから。そうしてしっかり、あのことを伝えた。
「あっ、はあっ、あ……っ、奥に、寒月の、出して……ッ」
「アーネスト……マジ凶悪すぎるぞ、お前!」
「ひあっ、ああっ!」
ズクッとさらに深く抉られ、その衝撃で達していた。
触れもせず白濁を振りこぼしながら、寒月のものを締めつけてしまい……彼は「キツッ、やっば」などと言いながら、抽挿をさらに激しくした。
「ひゃうっ、まっ、待って、寒月……っ!」
吐精の快感が収まらぬまま突き上げられ、寒月を銜え込んだ部分から卑猥な粘着音が響く。
躰がおかしくなったみたいだ。
寒月の怒張に蹂躙される、そのすべてが気持ちよくて。
ビクビクと麻痺する躰の最奥に熱い迸りを叩きつけられ、その感触にすら、感じて喘いだ。そっと、震える手で下腹を撫でる。
「……お子、授かれるかなぁ……」
思わず呟いたら、双子がそろって驚愕に目を瞠った。
小刻みに腰を揺さぶられながら訊かれて、「うん、うん」と夢中で何度もうなずいた。はしたないけど、目隠しされているから大丈夫なのだ。……そのはずだ!
覆い被さるように伸び上がってきた寒月にキスされて、下肢もさらに突き出すようにひらかれる。
慎重に、それでいて確実に結合は深くなる。
未だ残る怯えから腰を引こうとしたけれど、すぐに大きな手に引き戻された。そうしてお仕置きのように、いっそう奥へと侵入される。
「ああっ! んん……っ」
感じるところを容赦なく突かれて淫らに喘ぎながら、なぜだか急に、ジェームズの手紙を思い出した。桃マルムについて書かれた、あの手紙を。
ご先祖のユージーンさんは、桃マルムが現れるたびに愛する人と致した結果、大きなマルム茸を通じてお子を授かった。そう書かれていたけれど……
あまりに突拍子もない話だったので、もしもそんな奇跡が本当に起こるならどんなに幸福だろうかと期待はしつつ、忙しない日々の中で、真剣に向き合うことをしないままだった。
正直、向き合うのが怖かったんだ。
すべて信じて、そうなると信じ切ってしまったあとで、希望が打ち砕かれたら。
やっぱりそんな奇跡は起こらないと思い知らされたら。
立ち直る気力は、僕にはもうないかもしれない。
寒月と青月を、心の底から愛している。
僕が短命の血から逃れられないとしても、せめて二人に子を遺したい。
その切望にすがったあとの落胆は、いかほどだろうか。
長くは生きられないだろうと、覚悟してきたつもりだ。
けれど諦めることに慣れていた昔と、双子に出会った今とは世界そのものが違う。
二人と一緒に過ごせる時間を惜しまずにはいられないし、そう遠くない未来に訪れるのであろう別れを思うと、寂しくて悲しくて……怖くて。想像しただけで胸が苦しくなって、泣きそうになる。
こんなつらさを、母も祖父も、どうやって耐えていたのだろう。
「……っ」
目隠しされていてよかった。
こらえきれず浮かんだ涙は、あふれる前にリボンに吸い込まれた。
でも双子は、敏感に僕の変化に気づいたようで……いつもとんちんかんな勘違いをするくせに、こんなときばかり鋭いというか、虎の野生の勘というか。
「どうしたアーネスト」
「寒月の馬鹿が乱暴すぎたんじゃないのか!?」
「ち、ちが」
違うと言い終わらないうちに、焦った双子に目隠しを外されてしまった。
涙はリボンに拭われているからよかったけども、この状況で二人にガン見されているという、別の意味で泣きたい事態になっている。でも……
「痛いのか? もうやめようか」
そう言って覗き込んでくる寒月のほうが泣きそうに見えて、あまりの愛おしさに吹き出してしまった。我ながら精神状態が安定しない。
手を伸ばし、汗に濡れた金色の髪をかき上げながら、「痛くないよ」と翠玉の瞳を見つめた。
「僕は本当に、寒月と青月のことを愛しているんだなって改めて思ったら……胸がいっぱいになっちゃった。それだけ」
「「アーネスト……!」」
心配そうだった二人の瞳が輝いたのを見て、またも吹き出しかけた。このイケメンな虎王子様たちは、ときどき本当に、幼い子供みたいな顔をする。
このおっきな子供たちのためにも、本気で『奇跡』を信じてみよう。
感情が嵐みたいに急降下したり急上昇したりするのをこらえ、愛する二人に微笑みかけると、寒月が感極まったように目元を赤くした。
「俺も愛してる。生涯お前だけだ、アーネスト」
「俺もだよアーネスト。ずっとお前だけを想い続ける」
「寒月。青月……」
珍妙な下着姿で寒月を受け入れながら愛を囁き合っているという、恥ずかしい状態は見ないことにして。
愛し愛される至福に、胸を熱くしていたら。
「よし! 痛くないのなら、胸だけじゃなくこっちもいっぱいにしような!」
「はひ?」
なんのことやら理解する前に、ズクッとさらに深く穿たれた。
……そういう意味かー!
「あ……っ、い、いっぱいすぎるぅ」
「うっわ可愛いぃ! はあ、やっべ。アーネストが好きすぎて鼻血出そう」
僕の憂慮など秒で吹き飛ばす寒月の言動に、いつもずいぶん救われていると思う。
浅い抜き挿しを繰り返す動きから、急に引き抜かれ、一気に深く侵入されて、余計な思考も吹っ飛んだ。
抽挿のたびにさらに奥までひらかれて、感じるところを容赦なく突かれる。内壁をこじ開けられる快感に、耳を塞ぎたくなるような声が口から飛び出すのを抑えられない。
寒月は色気が滴るような笑みを浮かべて、ぺろりと唇を舐めた。
「アーネストが自分から尻を押しつけてくるの、超エロくて幸せ」
「そんな、こと、あ……っ、し、してないっ」
「ほんとに~?」
言いながらズルッと抜かれて声を上げ、次の動きに備えていたが、寒月は先端をつぷりと潜り込ませただけで、動いてくれなかった。
またも焦らされて、僕は涙目で寒月をにらんだ。
「ううぅ。寒月ぅ」
「エロくお尻を動かしてると認めよ、アーネスト」
「ばかぁ!」
「うおっ、締まりすぎっ」
躰をビクッとさせた寒月を、青月が「いじめてんじゃねえよ」と氷点下の声で叱りつけた。が、寒月は「こんな可愛いのに、いじめるわけねーよなあ?」と反論し、唇を重ねてきた。
夢中で舌を絡めるうちに挿入が深くなり、腰の動きも激しくなって。
激しすぎる快楽に翻弄されながら、やはり寒月の言葉は正しかったと認めざるをえなかった。僕は気づけば淫らに喘いで腰を振り、貪欲に寒月を求めていたのだから。そうしてしっかり、あのことを伝えた。
「あっ、はあっ、あ……っ、奥に、寒月の、出して……ッ」
「アーネスト……マジ凶悪すぎるぞ、お前!」
「ひあっ、ああっ!」
ズクッとさらに深く抉られ、その衝撃で達していた。
触れもせず白濁を振りこぼしながら、寒月のものを締めつけてしまい……彼は「キツッ、やっば」などと言いながら、抽挿をさらに激しくした。
「ひゃうっ、まっ、待って、寒月……っ!」
吐精の快感が収まらぬまま突き上げられ、寒月を銜え込んだ部分から卑猥な粘着音が響く。
躰がおかしくなったみたいだ。
寒月の怒張に蹂躙される、そのすべてが気持ちよくて。
ビクビクと麻痺する躰の最奥に熱い迸りを叩きつけられ、その感触にすら、感じて喘いだ。そっと、震える手で下腹を撫でる。
「……お子、授かれるかなぁ……」
思わず呟いたら、双子がそろって驚愕に目を瞠った。
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