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第10章 ヨメです

けっこうなお仕事で

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「そうだと思った」

 レオンハルトがプッと吹き出している。
 自分から「協力させて」と言っておいて即座に断る我が儘な妻なのに、笑って許してくれるのだから……

「僕の旦那様は、世界一寛大で優しいイケメンです」
「ユーシアとユーチア限定だがな」

 そうだろうか。部下や使用人に対しても、とても気さくで寛大に接していると、ユーシアは思うのだけど。
 考えごとは、ユーシア自身に尻をひらいて待機してもらうことを諦めたレオンハルトが、自らの躰でユーシアの両脚を押しひらいてきたために中断した。
 再び潤滑油をたっぷり塗ったレオンハルトの指が、ユーシアの秘所をぬるりと撫でる。

「うひゃっ」

 柔らかな輪郭をくるくると撫でられて、相変わらず色気のない声が飛び出した。ついでにそこをギュッと締めてしまい、侵入を阻まれたレオンハルトの指に、ツンツンとノックされる。

「もしもし? 力を抜いてくれませんか」
「はひっ。抜いてるつもり、なのですけど……ひゃーっ!」

 グッと押された感触に驚いて、さらにギューッとお尻が力んでしまった。
 脚をひらいて最も恥ずかしい箇所を晒しているくせに、後孔は全力で閉じようとしているという、わけのわからないこの状況。こんな初夜、どの本にも載っていなかった。

「お、お待ちください。すぐ、今すぐに、開けますのでっ!」
「開ける……」

 目を丸くしたレオンハルトが、盛大に吹き出した。すぐに「失礼」と言って顔を逸らしたけれど、明らかに笑いをこらえている。

 初夜を迎えるにあたってユーシアが目指した目標は、変なことをやらかしてレオンハルトに嫌われないようにするという、その一点だった。なのに早くも、常に紳士的なレオンハルトが必死で笑いをこらえねばならないほど、間抜けなことを言ってしまったらしい。
 思わず涙目で見上げると、レオンハルトはハッ! と目を瞠り、「すまない、笑いごとではないな」とユーシアの顔中にキスしてくれた。

「すまん。決して馬鹿にして笑ったわけではないのだ。こんなに完璧に綺麗なきみが、あまりに不器用に頑張るから、愛おしくてたまらず笑ってしまった」
「い、いいえ。僕のほうこそ、ごめんなさい……何ひとつ上手くできず」

 言葉にすると改めて情けなくなったが、いきなりレオンハルトの指先が、つぷんと後孔に侵入してきて、「みゃーっ!」と驚愕の声を上げた。
 レオンハルトが「みゃーって」とまた吹き出しかけたものの、寸でのところでこらえた。が、指の動きは止まらず、つぷつぷと行きつ戻りつしながら侵入を深めてくる。
 お尻に異物が入ってくる初めての感覚に、ユーシアの太腿がぷるぷると震えた。

「ほら、上手く指を迎え入れられた。痛くはないか?」
「いた、くは、ない、です……でも、なん、か、変な感……じーっ!」

 潤滑油のぬめりの助力で、指が奥まで入ってきたので、ユーシアはたまらず腰をくねらせた。しかも、指がゆっくり引き抜かれると、とろりと自分の中から何かが溢れてきて、ユーシアは小さく悲鳴を上げた。

「なっ! なんっ、何!? おもおもおも」

 お漏らしと言うのが恥ずかしすぎて、混乱しながら上体を起こしかけ、レオンハルトのキスで留められた。

「大丈夫。魔抱卵の効果だ。これがおそらく『潤滑作用』なのだろう」
「えっ! もう魔抱卵が入ってるのですか!? いつのまに」
「たった今入れたところだよ」
「そんなにすぐ効果が出るのですか!? ……あっ」

 声を出してお腹に圧がかかると、奥からとろとろと分泌物が出てくる。ある意味お漏らしだ。あわてふためくユーシアをなだめるように、レオンハルトがユーシアの下腹を撫でた。

「そのようだな。俺も使ったのは初めてだが、以前ヨハネス……陛下から、『即効性がある』と聞いたことがある。本当に即効なのだな」

 感心したように後孔を見つめられて、ユーシアは顔から火を噴きそうだった。
 いきなり尻から分泌物が出てきても、不思議なほど不快感はないのだが、後庭をテカテカにして『準備万端!』となっているのを、レオンハルトに見られているのだと思うと……

「って、うあっ!? んっ、んんー!」

 恥ずかしくて油断していたところへ、二本に増やされた指が入ってきた。レオンハルトはユーシアの隙をついてくるのが上手すぎる。

「ああ……っ、ふ……うぅ」
「痛いか? 挿れた感じは絶妙な潤滑っぷりなのだが」

 絶妙と言われれば、確かにそうかもしれない。
 やたらヌルヌルしてるわけでもなく、痛みや引っかかりを感じない程度に挿入を助けてくれている。 

「痛くない、ですぅ……けっこうな、お仕事で……んぅ」
「無理に魔抱卵を褒めようとしなくていいんだぞ? ……大丈夫そうだな……もう一本、増やそう」
「えうっ」

 増やすと言われて、またもギクッと力んでしまった。
 しかし指は一向に増えず、プチュプチュと卑猥な音をたてながら、二本の指が抜き挿しされる。そのたび、ユーシアの躰をビクンと震わせるほど気持ちいい箇所があって、「ああ」と声を洩らしながら快感を追った。
 すると、三本に増えた指が、後孔を潜り抜けてきた。

「はうぅ……っ、あ、あ、は……っ!」
「痛みはない?」
「だい、じょぶ、です。でも変、なん、だか」

 痛みがないから、内壁を擦られる感触がいっそう生々しく感じられる。もどかしいような、切ないような、なんともいえない感じ。
 そのとき、長い指がある箇所を――これまで引っ掻く程度に刺激していたそこを、グッと押してきて、強烈な快感にユーシアは声を上げた。

「あー! や、や、あー……」
「ここだな。うん、わかった」

 何がわかったというのか。ユーシアにはさっぱりわからぬまま、先走りが溢れてくる。いっそ自分で触れてしまいたいほど、切羽詰まっていた。
 ――もう、イキたい。さっきみたいに、イかせてほしい。
 
「レオンハルト、様……もう」
「ん、わかった。でも、もう少し我慢な?」
「うー」

 唸って不満を表明したら、その唇をキスで塞がれた。
 これまでで一番情熱的な、そのまま溶けてしまいそうなキス。小刻みに腰が跳ねて、そのたび揺れる花茎から、透明な蜜が滴る。

「さて、本番。……大丈夫か?」
「あ。は、い。どうぞ……」

 本番とはつまり、いよいよレオンハルトのレオンハルトが入ってくると、そういうことだろう。
 ユーシアは思わずゴクリと生唾を飲み込んだが、レオンハルトを受け入れることはユーシアの望みでもある。

(……やっぱりお尻をひらいて待機するくらいのことは、したほうがいいんだろうか)

 潔く覚悟を決めるか――と思っていたら、レオンハルトが枕をひとつ手に取って、「じゃあ、これを腹の下に敷いて、うつ伏せに」と促してきた。

「ユーシアの顔を見れないのは残念だが、初めてだし、うしろからのほうが負担が少ないと思う」
「え……」

 素直にうつ伏せになりかけていたユーシアだが、話を聞いてまた仰向けに戻った。

「僕もレオンハルト様のお顔が見えないと、不安です……」
「ユーシア。そんな可愛いことを言うと、そろそろ俺も大変なことに」

 確かに、レオンハルトのレオンハルトも、凶悪なほどいきり立っている。
 正直、本当にこれを受け入れられるのかと、恐れる気持ちもあるけれど……だからこそ、しっかりと愛する人を見つめていたいと思うのだ。

「このままで、お願いします……」
「……わかった」
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