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第6話

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 次の日、さっそくロジーさんからもらった紹介状を持って貴族街へ向かう。

 平民街から乗り合い馬車に乗って、揺られること数時間。
 
 貴族街に入るには検問を通らなくちゃいけなくて、ギルドで発行されている身分証明書代わりのタグと、ロジーさんがくれた紹介状を見せる。

 検問を通って入った貴族街は、一言で表すとこれぞファンタジーという感じだった。

 街並みも、大きな噴水広場も、とにかく映画の背景に出てきそうな荘厳な雰囲気。白い石畳が続いていて、歩いているだけで胸が躍る。

 平民街はどちらかというと牧歌的というか、もっと可愛らしい感じだ。私の価値観では平民街の方が住みやすい街なんだけど、やっぱり夜が乱交パーティーだらけだと思うと気分が落ち込む。

 ロジーさんがくれた地図を頼りに、公爵家と思われる屋敷の前まで来た。門番さんに伝えると、ロジーさんから連絡が届いていたみたいで、すぐに通してくれた。

 ロジーさんには感謝してもしきれないな。

 執事さんに案内してもらって、今まで見たこともないような豪奢な応接室で待たされる。

 どこに触れても汚してしまいそうで、縮こまって公爵様を待った。

 メイドさんが紅茶を出してくれたんだけど、緊張で手をつける気にもなれない。

「待たせたね」

 そう言ってやってきたのは、ものすごいイケメンのナイスミドルのおじ様だった。ハリウッド俳優みたいな綺麗な顔をしている。

 こんなに綺麗な男性、平民街では見かけなかった。

「ロジーから仕事の内容は聞いてるね?うちの息子達の教育係をお願いしたいのだが、大丈夫そうかい?」

 低く渋い声で問われて、ぼうっと見惚れていた頭が覚醒する。

「は、はい!御子息の教育係と聞いてきました。仕事の内容は詳しくは公爵閣下からお聞きするということだったのですが」

「私から?私から説明してもいいが、君の方が詳しいだろう」

 え、どういう意味だろう?私の方が詳しい?

「あの、私の方が詳しいとは?」

「君は異世界人だろう?異世界人は色んな知識や技巧を持っていると聞く。ぜひそれを息子達に教えてやってほしい」

 なるほど。確かに元の世界は知識に溢れている。今ではネットで検索すればほとんどのことを知ることができるもんね。

「はい!頑張ります!よろしくお願いします!」

 元気に頭を下げる。

「期待しているよ。君はすごく美人だから、息子達も気にいるはずだ。これで少しは大人しくなってくれるといいのだが…」

 お子様はおいくつなのだろう。息子達ということは、四人とも私が教育係として面倒を見るのだろうか?

 契約書を交わすこととなり、あとは執事長に任せてあると言って公爵様は出て行った。

 緊張したけど、採用されて素直に嬉しい。

 執事長と挨拶を交わし、契約書を渡される。細かい字でびっしりと書かれているから、詳しくはあとで読もう。

 とりあえず、公爵様の気が変わってしまわないか心配で急いでサインをした。

 契約書は魔法契約となっていて、特殊なインクに魔力を流すそうだ。

 魔法を使ったことがないから、魔力の流し方がわからなかったけど、ペンを持ったら自然と体から魔力が流れていった。

 すごい、私本当に魔力があるんだ。

 この時しっかりと仕事内容を聞かなかったこと、契約書の内容を読まなかったことを、あとで死ぬほど後悔することになるとは、魔法が使えるかもしれないという事実に浮かれていた私はまだ知らない。
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