俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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「そんじゃ、俺たちは先に打ち上げ行って待ってるから。晴人、あとで絶対来いよ!」

部室内の明かりが漏れ出す廊下で、輝彦が俺をじっと見つめながら強く念を押す。

そんな輝彦に向かって、俺が「あぁ」と短く返事を返すと、輝彦の隣に立つ誠も不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。


「あんまり来るのが遅いと、晴人の分の焼肉も食べちゃうからね」

それは困る。せっかく行ったのに食うものがないんじゃあ、損だろう。

俺はそんなことを思いながら、苦笑を浮かべて言葉を返す。


「分かった。なるべく早く向かうことにする」

「うん。……それじゃあ、また後で」

「あぁ、また後で」

そんな一時の別れの挨拶を済ませると、輝彦と誠は俺の隣に立つ蒼子と葉原とも同じように挨拶を交わし、部室とは反対方向へ向かって去って行った。

そうして2人の後ろ姿が完全に見えなくなったところで、俺はぽつりと呟く。


「……さて」


これで、あとはとの関係に決着をつけるだけだ。それで、全て無事に終わる。

……と言っても、俺があいつと話し合うわけじゃない。

あいつとの関係に決着をつけるのは、今もこうして俺の隣に佇む1人の『天才』。白月蒼子自身だ。


俺はガラスのように透き通った瞳で、じっと真っ直ぐこちらを見つめる蒼子に向かって尋ねる。


「あいつに伝える言葉は、しっかりと決まったか?」

「えぇ」

蒼子は強い意志のこもった声で、そう答える。


「……もう、怖くはないか?」

「えぇ。……だって、2人がいるもの」

その答えを聞いて、俺の心配は杞憂だったとほっと息を吐く。
そんな俺を見て、葉原も自分の胸をトンと叩きながら蒼子に言葉をかける。


「もし、蒼子ちゃんが折れちゃいそうな時には、私が全力で支えるから安心して!」

「頼りにしてるわ、葉原はばら……いえ、 “ゆうさん” 」

少し揶揄うように名前を呼ばれた葉原は、一瞬表情に出た驚きを、みるみるうちに喜びへと昇華させていった。


「うん!」

そうして満面の笑みで返事を返す葉原を見て、俺は今一度2人に向かって口を開く。


「それじゃあ、行くか」

2人はそんな俺の言葉に大きく頷いて応えると、部室の明かりを消して、あいつがいるであろう2-1教室へ向かってゆっくりと歩き出した。
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