俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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正直、もっと声が震えるものだと思っていた。

周波数の合っていないラジオから流れる曲のように一言一言がぶつぶつと途切れ、言葉にすらならないんじゃないかと、そう思っていた。
けれど、俺の口から出たその言葉は1本の線となって、折れることも切れることもなく、ただ真っ直ぐに白月のもとへと進んでいった。

***

俺の唐突な言葉に驚いた白月は、ゆっくりと顔を上げる。先程まで瞳から零れ落ちていた涙はいつの間にか止まっていた。
代わりに白月の瞳は純粋な驚きと困惑で大きく見開かれ、人形のように白い頬はほんのりと紅く染まっている。

そんな白月の表情を目にして、緊張が遅れてやってきた。
手汗が酷い。動悸が激しい。今にも燃え上がりそうなほど体温が上がっている。

俺はオーバーヒート寸前の脳を回転させ、自分が今、一体何をしたのか再確認する。


……そうだ。俺はこいつに告白したんだ。


まさか、自分が誰かに想いを伝える日が来るとは夢にも思わなかった。
しかし、実際に今こうして、俺は白月に想いを伝えた。お前のことが好きだと、告白をした。

別に、感情が昂ぶってしまって思わず口から飛び出したというわけではない。

俺は自分の中で何度も何度も悩み、迷い、考えた結果、明確な意思を持ってその想いを伝えることに決めたのだ。

だから、後悔なんてしていない。


「……どうして」

心の中で自分自身に言い聞かせるように言葉を並べていた俺に、未だ震えが残る声で白月が尋ねる。

……どうして。
それは、『どうして私のことが好きなのか』という意味だろうか。それとも、『どうして今そんなことを言うのか』という意味の『どうして』だろうか。

いや、恐らくはその両方だろう。俺は少し考えたあとで再び口を開く。


「……俺自身、どうしてお前なんかのことを好きになってしまったのかよく分かってない。あれだけ忌み嫌っていたはずのお前に、こんな感情を抱いていることに、俺自身が一番驚いてる。だって仕方ねぇだろ。気がついた時にはもう、俺の中にこの感情が棲みついていて、いつの間にかその不思議な感情に名前まで付いてたんだから」

俺は続ける。


「俺は、お前が俺たちの前から姿を消したと知った時点で、この想いを伝えようと考えていた。そして、今お前の本心を聞いて、言うなら今だと思った」

これで白月が納得したとは思えない。
俺自身、自分が何を言っているのか上手く理解できていない。

だから、もう少しだけ言葉を付け加えて話すことに決めた。
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