俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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「ありがとうございました」

教室から去っていく最後の客に、白月がそう言葉をかける。それを見た俺と葉原も同じように言葉を口にすると、遠ざかっていく客の後ろ姿に向かって丁寧に頭を下げた。

壁に掛けられた時計の長針は、プラネタリウム上映を開始してからちょうど1周したところで、それまで教室に集まっていた客は、昼食を求めて飲食系の出し物をしているクラスの方へと戻っていった。

***

本日初回のプラネタリウム上映は、昨日同様なかなかに好評で、満足して帰っていく客がほとんどだった。そんな客の悦に入った表情を眺める俺たちも、同じように心が満たされていた。


「満足してもらえたみたいで良かったね」

再び天文部員だけとなった教室で、葉原がそう口を開く。


「あぁ。あんなにも喜んでもらえると、こちらとしても作った甲斐がある」

「次もたくさん人来るといいね」

「そうだな」

嫌なことなんか1つもないと言ったような満面の笑みを浮かべる葉原。ひょっとすると、この笑顔を目的にまた来てくれる客もいるかもしれない。
そんなことを考えて言葉を返す。


昨日今日と行ってきたこのプラネタリウム上映も、次の上映が最後となる。

長いようであっという間だった夏休みから今日まで、たった3人でここまでやってきた。

それがあと少しで終わってしまう。

俺たちの、天文部としての文化祭が、もうすぐ幕を閉じる。

きっと、それには大きな達成感があり、同時に大きな喪失感もあることだろう。

……この文化祭が終わったら、次はどんな企画を立てようか。


秋の星空の下でハロウィンパーティをしてもいいし、冬には3人で少し遠出をして、オリオン座や双子座流星群を観に行くことも出来る。
そして春には、新しい部員を募集して、全員で花見なんかをしてみてもいいかもしれない。

とにかくこれからのことは、また3人でじっくりと話し合って決めていけばいい。


と、そんな暖かな未来の姿を静かに想像していると、葉原の隣に立つ白月が小さく口を開いた。
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