俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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教室にはかき氷を目当てに並ぶ客の列が出来ており、その最後尾には先ほど教室に入っていった輝彦の姿があった。

そして、客が並ぶ列の先。
そこには案の定、あいつ——、柏城翔太の姿も確認できた。

柏城の方は接客が忙しいようで、あいにくこちらにはまだ気づいていないようだ。
俺と誠は静かに輝彦の元へと近づくと、その後ろに続く形で列へと並んだ。


かき氷という商品の性質上、加熱やラッピングといった工程は必要ないため、次々と列が進んでいく。カウンターまで遠いように思えた列も、気がつけば俺たちの番が次に迫っていた。

1つ前にいる客が2人いる店員の内1人——、もとい柏城に小銭を手渡すと、もう1人の店員が100円均一で購入したらしいカップに削った氷を投入し、各種あるシロップからストロベリーシロップを手に取り、それを山のように積もった白い氷の上にかけていく。


「ありがとうございましたー」

商品の購入が済むと、客はそう言って店員に手渡されたかき氷を片手にそそくさとその場を離れ、友人らしき人物と共に教室を出て行った。

それと同時に、輝彦が足を一歩前に出し、店員の柏城に注文を言いつける。


「えっと、ブルーハワイ1つ」

「200円です」

輝彦は財布を開き、中から銀色に光る100円硬貨を2枚取り出すと、それを柏城に手渡す。


「はい。ありがとうございましたー」

ものの10秒ほどで輝彦が注文したかき氷は出来上がり、輝彦はそれを受け取るなりすぐに脇へ一歩ずれた。

そして、俺は正面から輝彦がいなくなったのを確認すると、足を一歩前に踏み出してカウンターの前で立ち止まる。


「よォ」

「…………」

柏城は俺の顔を見ても特に動揺することはなく、むしろ「よく来たな」と歓迎するかのような笑みを浮かべてみせた。


「抹茶1つ」

こちらも感情を顔に出さないよう気をつけながら、それだけを口にする。
そして、その注文を受けてからかき氷が出来上がるまでの短い時間の中で、柏城は俺に向かって口を開いた。


「……白月蒼子の決断は、一体どうなったんだろうなァ……」

「……は?」

無視を貫くと決めていたにも拘らず、その意味有りげな一言によって思わず声がこぼれた。
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