俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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校内に文化祭2日目の開幕を告げるアナウンスが鳴り響いた後、俺と白月は2-2教室を出て階段を上り、天文部の作品展示会場となっている3-3教室の前へとやってきた。アナウンスと同時に一般参加者の入場も始まったこともあり、校内は一層賑やかになっている。


「あっ、やっときたー。2人とも遅いよぉ」

教室前の廊下では、俺たちより随分と前に来ていたらしい葉原が頬を膨らませて立っていた。


「悪い。いろいろあってな」

「いろいろ?」

葉原はふくれっ面のまま首を傾げる。
すると、そんな葉原を見た白月が口を開いた。


「葉原さん、ごめんなさいね。私が遅れて登校してしまったの。2人には、連絡を入れておくべきだったわね」

そう言って頭を下げる白月に、葉原は多少困惑したようで、手をあたふたと彷徨わせながら声をかける。


「あ、蒼子ちゃん頭あげてよ! わたしだって遅刻するときくらい普通にあるしさ! それにプラネタリウムまでまだ時間あるし、大丈夫だよ」

「……そうね。ありがとう、葉原さん」

そうして白月は葉原の気遣いにしっかりと礼を言うと、2人は互いに微笑みを浮かべあった。

……なんだか、葉原の態度が俺と白月で微妙に異なるようにも思えたが、敢えて口に出すことはしなかった。


その後、白月があらかじめ職員室で借り受けていた鍵を使って教室の扉を開けると、部屋の中央で存在感を放つプラネタリウムのドームと、壁や黒板に貼り付けられた天体写真に装飾された教室内に入り、簡単なミーティングを行った。


「今日もこの後11時からプラネタリウムを行うわよ」

「ねぇ、蒼子ちゃん。今日はビラ配りやらないの?」

ミーティングを進める白月に向かって、葉原の口から最もな質問が出た。


「えぇ。実は昨日来てくれたお客の中に、ブログやSNSでプラネタリウムのことを紹介してくれている人がいて、それが結構ネットでも評判が良いみたいなの」

そう言って白月はスカートのポケットからスマホを取り出すと、何やら画面を操作してディスプレイを俺たちに向けてきた。

そこには、ブログで凪ノ宮高校の文化祭に参加したことや文化祭の様子、そして俺たち天文部のことが書かれていた。
読んでみると「なかなか本格的だった」「よく作られている」など好評と受け取って差し支えない内容が記載されている。そして、それに対するコメントでも「わたしもプラネタリウム体験してみたいです!」「明日、参加予定なので行ってみます」と言った喜ばしいコメントが多くあった。


「ホントだ!ありがたいことだねぇ」

「あぁ、そうだな」

自分たちが一から製作したものを「良かった」と評価してくれる人がいる。
ただそれだけの事で、今までの努力が報われたような気がした。

すると、白月は付け足すように言葉を続ける。


「それに教室を貸してくれている3-3の方々も天文部の集客に協力してくれるって言っていて、商品を買いに来たお客に天文部のビラを配ってくれるそうよ」

「マジかよ。あとで何か買いに行かないとな」

一体いつの間に話を進めていたのかは分からないが、こうして周りが快く手助けをしてくれていることに、俺は思わず涙してしまいそうになった。

これもきっと、俺や葉原が入部する以前からたった1人でこの部を支えて来た白月の尽力によるものだと、俺はそう思う。

全ての努力が報われるわけではないけれど、必ず誰かは、その頑張りを見てくれているのだ。

心の中でそんなことを呟いていると、白月は話をまとめに入った。


「そういうわけだから、今回はビラ配りはしなくても大丈夫よ。万が一人が来なくても、お金をとるわけじゃないから利益に不足は出ないですしね。……まぁ、昨日と同じように身構えずにやっていきましょう」

「そうだね。……それじゃあ文化祭最終日、みんなで成功させよー! おー!」

1人で意気込み、1人で声を上げる葉原につられるようにして、俺と白月も遅れて声を上げた。


「「おー」」
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