俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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輝彦、誠と文化祭初日での出来事について話をしながら帰宅した後、俺は部屋で1人、あいつのことを考えていた。

白月と柏城。

2人が俺のいない間に一体何を話していたのか、いくら考えても明確な答えは出てこない。帰り際に白月を捕まえて詳しく話を聞こうと思っていたが、気付いた時にはもうあいつは教室から姿を消していた。


「どうして……」

不意に言葉が溢れる。


どうして、白月は俺に隠そうとしたのか。
どうして、俺を頼ってくれないのか。

——どうして……。


この数ヶ月間で俺たちの関係は少しずつ良い方向に進んでいった。それはきっと「信頼」と呼べるレベルまで発展したと、俺はそう思っていた。

ゴールデンウィークを終えてから、俺たちは互いに “弱み” を見せ合い、それを理解し合った。

だから、白月が他の誰にも話すことができない『何か』を抱えていたとしても、俺にならきっと話してくれると、そう思っていた。


けれど白月は、2人で柏城と会っていたことも、そこで何かを話したことも、俺には伝えようとしなかった。

それが俺にはとても辛くて、悲しくて、悔しくて、どこにもぶつけることの出来ない理不尽な苛立ちがただ込み上がる。


互いを理解し合えたと、弱みを曝け出せる間柄であると思っていたのは俺だけだったのか?

俺が勝手にそう思い込んでいただけで、本当はあの頃から……初めて白月と出会ったあの日から、俺たちの関係は何も変わっていなかったのか?


……なぁ、白月。

お前にとって俺は、一体何なんだ……?


窓の外では、橙色に輝く太陽がゆっくりと山の稜線に沈んでいく。そして、もうじき街は暗闇に包まれ、長い夜がやってくる。


明日は文化祭2日目、最終日。

きっと、今日よりも大勢の参加者によって校内は賑わうことになる。
皆が良き思い出として記憶に残すため、全力で文化祭を、 “青春” を謳歌することだろう。

けれど、今の俺には昨日のような高揚感は無く、ただ耳障りな音を立てて蠢く蟲のような不安感だけが、心を黒く満たしていた。
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