俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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まず、クラスの出し物をクレープにしようと言い出したのは、意外にもクラスの男子数名だった。

表向きは、子供から大人まで男女関係なく気軽に訪れやすいからというもので、クラスの女子も「センスがいい」などと言って即決定となったわけだが、真の理由は焼きそばやたこ焼きといった店より、女性客が圧倒的に多く訪れ、校内外問わず多くの女子生徒と自然にお近づきになることが出来るからという、センスのかけらも無い不純すぎるものだった。

だから万が一、純粋極まりない葉原にそんな魔の手が伸びたらなんて考えると、罪悪感で胸が締め付けられるように痛んでしまう。

けれど売り上げが伸びれば、文化祭後の打ち上げもそれだけ豪華なものとなるわけで、理由はどうであれ多くの参加者に足を運んでもらいたいというのが正直なところだ。

そんなことを考えている間にも、一般参加者の来場時間は刻々と迫り、天文部の方でも準備を始めなければいけない時間となっていた。


「それじゃあ、そろそろ今日のスケジュールを確認しましょうか」

壁にかけられた時計を見た白月がそう切り出すと、改めていよいよ俺たちの文化祭が始まるのだなという緊迫した気持ちになる。


「最初のプラネタリウムは11時から。それまでに正門でビラ配りをしておかないとね。受付は基本2人いれば十分だから、うまく交代して回していきましょう」

そう話す白月に対し、俺と葉原は頷いて応える。


「……いい、文化祭にしよう」


その言葉は、わざわざ口にしなくても2人には伝わっていると知っていた。

けれど……それでもやっぱり、口に出さずにはいられなかった。

2人もそれを分かった上で笑みを浮かべ、口を開く。


「うん、そうだね! この日のために合宿したんだから!」

「えぇ。この文化祭が、私たちのいい思い出になるように頑張りましょう」


そうして、それぞれが文化祭に懸ける想いを口にしたところで、校内にアナウンスが鳴り響いた。


『10時になりました。生徒の皆さんは、一般参加者の来場に備え、各自持ち場について下さい。ここに第45回凪ノ宮祭の開催を宣言します』


文化祭実行委員長の一言で、校内のいたるところから歓声が沸き起こった。

俺たちの文化祭がいよいよ始まったと、そう実感した瞬間だった——。
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