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正門前に設置された『凪ノ宮祭』の看板とカラフルなバルーンアーチをくぐり、俺は昇降口へと続くアプローチを進む。
アプローチの両脇には各クラスや部活動が出店している屋台がずらりと並び、一般参加者の来場に備えて、忙しなく準備を進めている様子が見て取れる。
そのまま昇降口へ向かい、靴を履き替えて校舎内に入ると、外同様に生徒たちが溢れ出る活力に身を任せ、それぞれのクラスで行われる出し物の準備に励んでいた。
***
今日明日の2日間は、1年間で最も賑やかとなる2日間である。生徒や教員など千名近い学校関係者に加え、毎年校外からも同じくらいの参加者がこの文化祭を訪れる。
1年生にとっては初めての文化祭。
2年生にとっては二度目の文化祭。
そして3年生にとっては、これが高校生最後の文化祭となる。
皆それぞれ文化祭にかける想いがあり、誰しもが心からの成功を願っている。
それがこの賑やかさと活気を生み出しているのだろう。そんなことを考えながら、俺は階段を上り、西棟3階の部室棟へとやってきた。
普段は限られた生徒しか訪れることのないこの場所も、文化祭ともなればまた違ってくる。
部員たちの似顔絵が描かれた華やかなポスターが目を惹く美術部。
クマの着ぐるみを着て『手芸体験やってます』と書かれたプラカードを手に持つ手芸部員。
首から重厚な感じのカメラをぶら下げ、部員同士で記念撮影を行う写真部。
『文集「残響」販売してます!一部300円!』とビラが貼り出されている文芸部。
それらの部室を通り過ぎ、俺は一番奥に構える一室の前で足を止めた。
扉には『天文部へようこそ! 3-3にてプラネタリウム行います』の一言と、美術部にも負けていないイラストが描かれたポスターが貼られてある。
俺はそれを見て口の端を少し上げると、短く息を吐き、扉を軽く二度ノックする。
すると中からは「開いてるわよ」と、予想通りの返答が返ってきた。
俺はその声に応えるように扉を開く。
「よう」
「えぇ」
部室の奥の窓から中庭を眺めていた白月と、挨拶とも言えないような短い言葉を交わし、俺は中央のテーブル席に腰を下ろす。
「……葉原は?」
「学校には来ているわよ。さっき昇降口で会ったから。『クラスの出し物の準備があるから』って教室の方に向かって行ったけど、そろそろこっちに来るんじゃないかしら」
そう白月が口にした直後、タイミングを見計らったように部室の扉が勢いよく開いた。
「おはよー!! クラスの方でいろいろと準備してたら遅くなっちゃった」
そう言って現れたのは、テンプレートなメイド服に身を包んだ葉原夕だった。そんな予想外の衣装に身を包んだ葉原に困惑しつつ声をかける。
「……葉原、その格好なんだよ」
「あー、うちのクラス、メイド喫茶するんだよ。私のシフトお昼からだから蒼子ちゃんも晴人くんもぜひ来てね!」
「誰が言い出したのか知らねぇけど、ベタなことするよな……」
文化祭でメイド喫茶をしようとするやつが本当に存在したことに驚きながらも、案外メイド姿が似合っている葉原に言葉を返す。
「おはよう葉原さん。その服、似合ってるわよ」
「ほんと!? ……なんか照れる」
「あとでお邪魔させてもらうわね。よかったら私たちのクラスにも足を運んでもらえると嬉しいわ」
「もちろんだよ! ……ところで、蒼子ちゃんたちのクラスって何するの?」
白月からの誘いに笑顔でそう答えた葉原は、首を傾げながら疑問を口にする。
「俺たちのクラスはクレープ売るんだよ。葉原も、ぜひ売り上げに貢献してくれ」
「クレープ! 絶対行くよ!!」
前のめりになりながらそう答える葉原を微笑ましく思いながらも、何故うちのクラスの出し物がクレープに決定したのかを思い返すと、少し頭と胸が痛くなる。
アプローチの両脇には各クラスや部活動が出店している屋台がずらりと並び、一般参加者の来場に備えて、忙しなく準備を進めている様子が見て取れる。
そのまま昇降口へ向かい、靴を履き替えて校舎内に入ると、外同様に生徒たちが溢れ出る活力に身を任せ、それぞれのクラスで行われる出し物の準備に励んでいた。
***
今日明日の2日間は、1年間で最も賑やかとなる2日間である。生徒や教員など千名近い学校関係者に加え、毎年校外からも同じくらいの参加者がこの文化祭を訪れる。
1年生にとっては初めての文化祭。
2年生にとっては二度目の文化祭。
そして3年生にとっては、これが高校生最後の文化祭となる。
皆それぞれ文化祭にかける想いがあり、誰しもが心からの成功を願っている。
それがこの賑やかさと活気を生み出しているのだろう。そんなことを考えながら、俺は階段を上り、西棟3階の部室棟へとやってきた。
普段は限られた生徒しか訪れることのないこの場所も、文化祭ともなればまた違ってくる。
部員たちの似顔絵が描かれた華やかなポスターが目を惹く美術部。
クマの着ぐるみを着て『手芸体験やってます』と書かれたプラカードを手に持つ手芸部員。
首から重厚な感じのカメラをぶら下げ、部員同士で記念撮影を行う写真部。
『文集「残響」販売してます!一部300円!』とビラが貼り出されている文芸部。
それらの部室を通り過ぎ、俺は一番奥に構える一室の前で足を止めた。
扉には『天文部へようこそ! 3-3にてプラネタリウム行います』の一言と、美術部にも負けていないイラストが描かれたポスターが貼られてある。
俺はそれを見て口の端を少し上げると、短く息を吐き、扉を軽く二度ノックする。
すると中からは「開いてるわよ」と、予想通りの返答が返ってきた。
俺はその声に応えるように扉を開く。
「よう」
「えぇ」
部室の奥の窓から中庭を眺めていた白月と、挨拶とも言えないような短い言葉を交わし、俺は中央のテーブル席に腰を下ろす。
「……葉原は?」
「学校には来ているわよ。さっき昇降口で会ったから。『クラスの出し物の準備があるから』って教室の方に向かって行ったけど、そろそろこっちに来るんじゃないかしら」
そう白月が口にした直後、タイミングを見計らったように部室の扉が勢いよく開いた。
「おはよー!! クラスの方でいろいろと準備してたら遅くなっちゃった」
そう言って現れたのは、テンプレートなメイド服に身を包んだ葉原夕だった。そんな予想外の衣装に身を包んだ葉原に困惑しつつ声をかける。
「……葉原、その格好なんだよ」
「あー、うちのクラス、メイド喫茶するんだよ。私のシフトお昼からだから蒼子ちゃんも晴人くんもぜひ来てね!」
「誰が言い出したのか知らねぇけど、ベタなことするよな……」
文化祭でメイド喫茶をしようとするやつが本当に存在したことに驚きながらも、案外メイド姿が似合っている葉原に言葉を返す。
「おはよう葉原さん。その服、似合ってるわよ」
「ほんと!? ……なんか照れる」
「あとでお邪魔させてもらうわね。よかったら私たちのクラスにも足を運んでもらえると嬉しいわ」
「もちろんだよ! ……ところで、蒼子ちゃんたちのクラスって何するの?」
白月からの誘いに笑顔でそう答えた葉原は、首を傾げながら疑問を口にする。
「俺たちのクラスはクレープ売るんだよ。葉原も、ぜひ売り上げに貢献してくれ」
「クレープ! 絶対行くよ!!」
前のめりになりながらそう答える葉原を微笑ましく思いながらも、何故うちのクラスの出し物がクレープに決定したのかを思い返すと、少し頭と胸が痛くなる。
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