俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

文字の大きさ
上 下
117 / 186

117

しおりを挟む
「……わぁ……! 綺麗……」

バレー部のスパイクの音や、バドミントン部の掛け声に紛れて、葉原の感嘆の声が聞こえる。ふと、視線を葉原と白月に向けると、2人の瞳にはあまりにも美しすぎる人工的な光がきらきらと反射して映っていた。

俺はそんな2人に向かって静かに口を開く。


「これで正真正銘、プラネタリウム無事完成だな」

「えぇ。このプラネタリウムが完成できたのも2人のお陰よ。だから改めて礼を言うわ。……ありがとう」

淡く照らされるドームの中でそう呟く白月に対し、葉原が子供に言い聞かせるように言葉を返す。


「蒼子ちゃん、2人じゃないでしょ? これは私たち “3人” で作り上げたものなんだから」

そんな葉原の言葉を聞いて、白月は「一本取られた」とでも言うかのように小さく笑い声をあげると、

「そうだったわね。これは、私たちが3人で作り上げたもの。……だから、沢山のお客さんに喜んで貰えるように宣伝の方も頑張りましょうね」

と、笑みを浮かべて口にした。


俺はそんな白月の笑顔を見て、どうしようもないくらいに胸が強く締め付けられるのを感じ取った。

それはきっと、柏城が転校してきてから初めて白月が俺たちに見せた笑顔だったからだろう。



文化祭が終わってからも、ずっとこの笑顔を見ていたい。

例え、『天才』という枷に縛られていたとしても、俺は白月に笑っていてほしい。



そんなことを願っている自分に気がつくたびに、ふと思う。



……これはもう、認めるしかないんだろうな。



だって俺は、自分が抱いているその感情の名前を、すでに知ってしまっているのだから——。


***

それから俺たちは、残された時間を宣伝用のビラ作りに使うことにした。

俺と葉原が文章を考え、白月がデザインをする。そうして出来上がったビラは、見た人が思わず足を運んでしまいそうになるほど魅力的で、それこそそのままどこかのコンクールに出展できるような出来だった。

合宿中に撮影したペルセウス座流星群の写真も、しっかりと印刷して展示用に保存し、あとは文化祭当日を待つだけとなった。


文化祭が近づくにつれて、学校中が一段と色めき出し、期待や興奮が人から人へと次々に伝播していく。
それは俺も例外ではなく、文化祭前日の夜は期待と少しばかりの不安でなかなか眠りにつくことが出来なかった。



そして、迎えた9月15日土曜日。

気温も落ち着きを取り戻した秋晴れの中、待ちに待った凪ノ宮高校文化祭、1日目が幕を開けた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

記憶屋

卯月青澄
ライト文芸
僕は風間。 人の記憶(思い出)を消す事の出来る記憶屋。 正しく言うと記憶、思い出を一時的に取り出し、『記憶箱』と呼ばれる小さな木箱に閉まっておく事が出来るというもの。 でも、それはいつかは本人が開けなければならない箱。 僕は依頼のあった人物に会いに行き、記憶を一時的に封印するのが仕事。 そして今日もこれから依頼人に会いに行く。

短めの話

ポンニート
ライト文芸
他のを探せば似たような話もあるだろうけど、十人十色だと思って感じていただきたい

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多
ライト文芸
 恋人に振られて独立を決心!  尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!  庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。  さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!  そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!  古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。  見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!  見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート! **************************************************************** 第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました! 沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました! ****************************************************************

「しん、とら。」

人体構成-1
ライト文芸
これは世界が終わるまでのほんの数年間の物語。 高校を卒業してから数年が経ち、久しぶりに皆で集まろうと声を掛けた二人組は最後の一仕事を終えるべく、少しづつ物語を綴っていく。 「たしかあれは……。」 話者:マメの語る思い出を、筆者:羽曳野冬華は多分に加筆しながら小説とし、これまでの数年間を皆で振り返りながら多くの人に読んでもらうべく完成させ、インターネットへと発信する(予定である)。 徐々に増える年越しメンバーと、彼女達と関わった怪異や遺物によって引き起こされた事件達は各々の目にどう映っていたのか。 一人の視点だけでは見えてこない裏側もいつか観られるかもしれない(し観られないかもしれない)。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

子供の言い分 大人の領分

ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。 「はーい、全員揃ってるかなー」 王道婚約破棄VSダウナー系教師。 いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。

気だるげ男子のいたわりごはん

水縞しま
ライト文芸
第7回ライト文芸大賞【奨励賞】作品です。 ◇◇◇◇ いつも仕事でへとへとな私、清家杏(せいけあん)には、とっておきの楽しみがある。それは週に一度、料理代行サービスを利用して、大好きなあっさり和食ごはんを食べること。疲弊した体を引きずって自宅に帰ると、そこにはいつもお世話になっている女性スタッフではなく、無愛想で見目麗しい青年、郡司祥生(ぐんじしょう)がいて……。 仕事をがんばる主人公が、おいしい手料理を食べて癒されたり元気をもらったりするお話。 郡司が飼う真っ白なもふもふ犬(ビションフリーゼ)も登場します!

猫と幼なじみ

鏡野ゆう
ライト文芸
まこっちゃんこと真琴と、家族と猫、そして幼なじみの修ちゃんとの日常。 ここに登場する幼なじみの修ちゃんは『帝国海軍の猫大佐』に登場する藤原三佐で、こちらのお話は三佐の若いころのお話となります。藤原三佐は『俺の彼女は中の人』『貴方と二人で臨む海』にもゲストとして登場しています。 ※小説家になろうでも公開中※

処理中です...