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白月蒼子は、言うなれば『未完の天才』なのだ。彼女のあり方は繊細な硝子細工のようで見ている分には美しく、人の心を魅了するけれど、ほんの少し衝撃を与えてやるだけでそれは無残に砕け散る。そして彼女の持つ類稀なる才能は、いつしか自分自身を焼き焦がしてしまう危険すらもある。
……まるで、青白く輝くというシリウスのように——。
そんな白月が葉原に好きな星を訊かれた時、この星の名を口にしたのは、彼女自身がそのことを十分に理解していたからなのだろう。それと同時に、白月はシリウスが持つ星言葉に憧れていたのかもしれない。偽りではなく、いつか本物のシリウスになれたらという願いを込めて。
「ねっ! 蒼子ちゃんにぴったりでしょ!」
「あぁ……そうだな」
俺は無邪気な笑顔を浮かべる葉原にそう返すと、再び白月に目を向ける。
「何よ」
「……別に」
視線に気づいた白月と目が合い、嫌悪感丸出しで睨まれた俺は、視線を明後日の方向に向けてそう返す。
「色々と考えているようだけれど、特に深い意味はないから。ただ単に好きなだけよ」
「あぁ、そう」
まぁ、本人がそう言うならそうなのだろう。こちらから相手のテリトリーに深く踏み込むなんて面倒なことはしたくない。
そんなことを思って短く息を吐くと、空を見上げていた葉原が突然大きく声を上げた。
「ねぇねぇ! ちょっとちょっと! 今、流星群見えたよ!!」
葉原の呼び声に反応してふと空を見上げると、確かに一瞬だけ濃厚の空を白い光の尾を引いて駆けていくものが見えた。
「ほら!」
「あぁ、確かに見えた」
「蒼子ちゃんも見えたでしょ?」
そう言って葉原が興奮気味に問いかけると、白月は軽く微笑んで「えぇ、しっかりと」と、それに答えた。
「こう言うのを、“生命の輝き”って言うんだろうな」
俺は初めて目にする流星群に胸が昂ぶるのを感じながら、ポツリと呟く。
「何だか、皇くんが言うと中二臭く聞こえるわね」
「……そこは『えぇ、そうね』でいいだろうが。……流せよ」
せっかくいい感じのことを言ったはずなのに、白月の余計な一言のせいで台無しだ。葉原に関しては、ケラケラと声を上げて笑っているし。
こんな幻想的な景色を目にしても、人を揶揄うことを忘れない白月には感心すら覚える。
そんなことを思っていると、落ち着きを取り戻した葉原が静かに呟いた。
「明日はこれ以上に沢山の星が流れるんだよね。……すっごい楽しみ」
白月が言うには、明日の22時頃にペルセウス座流星群のピークが訪れるらしい。今でも十分に見応えはあるが、明日はこれ以上に素晴らしい光景を目にすることが出来るということで、自ずと期待が高まる。
「そうだな」
「そうね」
俺と白月が葉原の呟きにそう返すと、再び濃紺の夜空を白い光が勢いよく駆けていった。
***
それから白月がカメラの片付けを始めるまでの約1時間。俺たちは静かに星空を眺めていた。いくら夏だからといって、あまり長い時間外にいれば、体も冷えてしまう。
そういうわけで、合宿1日目の天体観測はトラブルもなく無事に終わりを迎えたのだった。
……まるで、青白く輝くというシリウスのように——。
そんな白月が葉原に好きな星を訊かれた時、この星の名を口にしたのは、彼女自身がそのことを十分に理解していたからなのだろう。それと同時に、白月はシリウスが持つ星言葉に憧れていたのかもしれない。偽りではなく、いつか本物のシリウスになれたらという願いを込めて。
「ねっ! 蒼子ちゃんにぴったりでしょ!」
「あぁ……そうだな」
俺は無邪気な笑顔を浮かべる葉原にそう返すと、再び白月に目を向ける。
「何よ」
「……別に」
視線に気づいた白月と目が合い、嫌悪感丸出しで睨まれた俺は、視線を明後日の方向に向けてそう返す。
「色々と考えているようだけれど、特に深い意味はないから。ただ単に好きなだけよ」
「あぁ、そう」
まぁ、本人がそう言うならそうなのだろう。こちらから相手のテリトリーに深く踏み込むなんて面倒なことはしたくない。
そんなことを思って短く息を吐くと、空を見上げていた葉原が突然大きく声を上げた。
「ねぇねぇ! ちょっとちょっと! 今、流星群見えたよ!!」
葉原の呼び声に反応してふと空を見上げると、確かに一瞬だけ濃厚の空を白い光の尾を引いて駆けていくものが見えた。
「ほら!」
「あぁ、確かに見えた」
「蒼子ちゃんも見えたでしょ?」
そう言って葉原が興奮気味に問いかけると、白月は軽く微笑んで「えぇ、しっかりと」と、それに答えた。
「こう言うのを、“生命の輝き”って言うんだろうな」
俺は初めて目にする流星群に胸が昂ぶるのを感じながら、ポツリと呟く。
「何だか、皇くんが言うと中二臭く聞こえるわね」
「……そこは『えぇ、そうね』でいいだろうが。……流せよ」
せっかくいい感じのことを言ったはずなのに、白月の余計な一言のせいで台無しだ。葉原に関しては、ケラケラと声を上げて笑っているし。
こんな幻想的な景色を目にしても、人を揶揄うことを忘れない白月には感心すら覚える。
そんなことを思っていると、落ち着きを取り戻した葉原が静かに呟いた。
「明日はこれ以上に沢山の星が流れるんだよね。……すっごい楽しみ」
白月が言うには、明日の22時頃にペルセウス座流星群のピークが訪れるらしい。今でも十分に見応えはあるが、明日はこれ以上に素晴らしい光景を目にすることが出来るということで、自ずと期待が高まる。
「そうだな」
「そうね」
俺と白月が葉原の呟きにそう返すと、再び濃紺の夜空を白い光が勢いよく駆けていった。
***
それから白月がカメラの片付けを始めるまでの約1時間。俺たちは静かに星空を眺めていた。いくら夏だからといって、あまり長い時間外にいれば、体も冷えてしまう。
そういうわけで、合宿1日目の天体観測はトラブルもなく無事に終わりを迎えたのだった。
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