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大浴場を独り占めにし、熱い湯に浸かって1日の疲れをしっかりと癒した俺は簡素なジャージに着替えると、白月と葉原が待つ部屋へと戻った。部屋の扉を開けると、奥から弱い涼風が吹いてきた。どうやら窓が開いているらしい。
そんな体に残った熱を優しく絡め取っていく夜風を肌で感じながら部屋に上がると、窓の近くの壁にもたれかかるようにして2人が座っているのが見えた。
「上がったぞ」
「あっ、おかえりー。あのね! 今ちょうど青子ちゃんと漫画の感想を言い合ってたの!」
「……あぁ、そう。楽しそうだな」
満面の笑みで報告してくる葉原にそう返すと、隣に座る白月が手に持った漫画から視線をこちらに向けてきた。
「なに? 話に混ざれないからって拗ねてるの?」
「ちげぇよ。天文部の合宿中に漫画の批評会開いてることに困惑してんだ。昼間は敢えて深く追求しなかったが、そもそもなんで2人とも合宿に漫画持ってきてんだよ。合宿に私物持ってくんじゃねぇよ」
「皇くんはいつからそんな真面目くんになったのかしら。そもそも、『私物の持ち込みは禁止』なんて言った覚えはないけれど?」
確かに、そういった学校行事では定番の注意事項は聞いていない。しかし、普通合宿って言ったら、そういう類のものは持ち込まないっていう暗黙のルールみたいなのがあるだろ。…………いや、まぁ、今まで合宿とかした経験が無いからよく知らんが。
そんなことを考えながら言い返すための言葉を探していると、葉原が一冊の少女漫画をこちらに差し出してきた。
「まぁまぁ、晴人くんもそんな堅いこと言わないでさぁ~。試しにこれ読んで見なよ。大丈夫、みんなも読んでるから。これ、男子が読んでも面白いって話題なんだよ! きっとすぐハマるから!」
「……葉原の言いたいことはよく伝わったけど、それだとなんかヤバい薬勧めてるみたいに聞こえるからやめような」
完全に素人を沼に引きずり込もうとしている目で訴えかける葉原にそう言って、俺は葉原の勧めてきた少女漫画を仕方なく受け取った。
それを見た白月は、
「流星群が見える時刻までまだ少しあるわけだし、あなたもそれを読んで待っていなさいよ」
そう言って、左隣の空いているスペースを叩いた。
俺はそんな白月の言葉に耳を傾け、手に持った少女漫画から窓の外に視線を向けると、すっかり暗くなった夏の夜空を見上げる。明かりの点いたこの部屋からではあまりよく星は見えないが、チカチカと点滅する光がゆっくりと移動しているのは視認できた。
おそらくあれは飛行機だろう。それか、もしかすると未確認飛行物体かもしれない。
どちらにせよ、日が完全に沈みきった後の濃紺の空を、今もこうして誰かが移動しているというのは、よくよく考えてみると凄いことなのだと思う。
今頃、空の上からは地上がどのように見えているのだろうか。きっと、無数に輝く街灯や家の明かり、街を走る車のライトが星のように見えているのではないだろうか。
そんなことを考えながら、俺は再び葉原から貸し出された漫画に目を向ける。表紙には背中合わせに立つ男女の姿が描かれている。
俺はしばらくそれを眺めたあとで静かに息を吐き出すと、少し間を空けるようにして白月の隣にゆっくりと腰を下ろした。
そんな体に残った熱を優しく絡め取っていく夜風を肌で感じながら部屋に上がると、窓の近くの壁にもたれかかるようにして2人が座っているのが見えた。
「上がったぞ」
「あっ、おかえりー。あのね! 今ちょうど青子ちゃんと漫画の感想を言い合ってたの!」
「……あぁ、そう。楽しそうだな」
満面の笑みで報告してくる葉原にそう返すと、隣に座る白月が手に持った漫画から視線をこちらに向けてきた。
「なに? 話に混ざれないからって拗ねてるの?」
「ちげぇよ。天文部の合宿中に漫画の批評会開いてることに困惑してんだ。昼間は敢えて深く追求しなかったが、そもそもなんで2人とも合宿に漫画持ってきてんだよ。合宿に私物持ってくんじゃねぇよ」
「皇くんはいつからそんな真面目くんになったのかしら。そもそも、『私物の持ち込みは禁止』なんて言った覚えはないけれど?」
確かに、そういった学校行事では定番の注意事項は聞いていない。しかし、普通合宿って言ったら、そういう類のものは持ち込まないっていう暗黙のルールみたいなのがあるだろ。…………いや、まぁ、今まで合宿とかした経験が無いからよく知らんが。
そんなことを考えながら言い返すための言葉を探していると、葉原が一冊の少女漫画をこちらに差し出してきた。
「まぁまぁ、晴人くんもそんな堅いこと言わないでさぁ~。試しにこれ読んで見なよ。大丈夫、みんなも読んでるから。これ、男子が読んでも面白いって話題なんだよ! きっとすぐハマるから!」
「……葉原の言いたいことはよく伝わったけど、それだとなんかヤバい薬勧めてるみたいに聞こえるからやめような」
完全に素人を沼に引きずり込もうとしている目で訴えかける葉原にそう言って、俺は葉原の勧めてきた少女漫画を仕方なく受け取った。
それを見た白月は、
「流星群が見える時刻までまだ少しあるわけだし、あなたもそれを読んで待っていなさいよ」
そう言って、左隣の空いているスペースを叩いた。
俺はそんな白月の言葉に耳を傾け、手に持った少女漫画から窓の外に視線を向けると、すっかり暗くなった夏の夜空を見上げる。明かりの点いたこの部屋からではあまりよく星は見えないが、チカチカと点滅する光がゆっくりと移動しているのは視認できた。
おそらくあれは飛行機だろう。それか、もしかすると未確認飛行物体かもしれない。
どちらにせよ、日が完全に沈みきった後の濃紺の空を、今もこうして誰かが移動しているというのは、よくよく考えてみると凄いことなのだと思う。
今頃、空の上からは地上がどのように見えているのだろうか。きっと、無数に輝く街灯や家の明かり、街を走る車のライトが星のように見えているのではないだろうか。
そんなことを考えながら、俺は再び葉原から貸し出された漫画に目を向ける。表紙には背中合わせに立つ男女の姿が描かれている。
俺はしばらくそれを眺めたあとで静かに息を吐き出すと、少し間を空けるようにして白月の隣にゆっくりと腰を下ろした。
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