俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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時刻は16時を回り、ここに来た頃に比べると随分と涼しく感じるようになった。
校内で活動していた運動部や吹奏楽部は、2時間ほど前に練習を切り上げて各自帰宅してしまったようだ。開け放たれた窓からは変わらず蝉の鳴き声が聞こえて来るだけで、野球部の掛け声も吹奏楽部の演奏も聞こえて来ない。なんとなく作業BGMのように感じていただけあって、それらが聞こえなくなると、何だか急に物寂しい気持ちになる。


校内には、あのどれくらい生徒が残っているのだろうか……。
ひょっとすると、学校に来ていた生徒はもう皆帰ってしまって、今ここにいるのは俺たち3人だけになってしまったのかもしれない。


そう考えを巡らせると、改めて自分たちが今、特別なことをしているのだと実感させられる。普段は数多くの生徒が利用し、それぞれの学校生活を送るこの校舎も、今だけは俺たち3人の城といっても過言ではない。

そんな少しばかりの優越感に浸りながら、俺はテーブルの上に広げられた黒いボール紙に印を書き写していく。


「皇くん、そっちはどう?」

「ん……あー……まぁ、なんとか」

俺は正面に座る白月に対し、少し悩むように首を傾げながら答える。


「何か分からないことがあれば、すぐに私が葉原さんに聞いてちょうだい」

「えっと……それじゃあ、この……等級? ってどうやって見分ければいいんだ? 1等星と5等星の違いは見れば分かるけど、隣り合った等級の差がイマイチよくわからん……」

淡々と自分の作業を進める白月に、今行き詰まってる原因について話すと、俺の隣に座っていた葉原がグイッと体をこちらに乗り出してきた。


「あー、それはねー……あった! この等級一覧表を確認するといいよ。大体の星の等級はここに書いてあるから、それを見て1等星は赤、2等星は橙、3等星は黄色……って感じで色分けしていくと楽だよ」

葉原は机の上に置かれた星座図鑑を手元に引き寄せページをパラパラと捲ると、夏の星座が描かれたページの下の方を指差して言った。


「おぉ、サンキュー」

葉原に向かって礼を言うと、俺は再び自分の作業へと戻った。
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