46 / 186
45
しおりを挟む
普段なら学校からここまで20分もかからないはずなのだが、葉原の歩く速度に合わせていたため30分近くかかってしまった。
けれどまぁ、悪いことだとは思わない。
約1年振りに親しい後輩とこうして話すことができたのだから、有意義な時間だったと思うべきだろう。
と、そんな風に思っていると、隣を歩いていた葉原が一歩前に出て俺の正面立ち、足を止めた。
「それにしても、久し振りに晴人くんとちゃんと話せて良かったぁ。次からは学校で会っても無視しないでよね!」
「あぁ。なるべく声をかけるようにする」
「なるべくじゃなくて! 絶対!」
「はいはい絶対絶対」
「なんかテキトー……」
葉原はくりっとした大きな瞳を細めて、じっとりと睨むように俺の顔を見つめる。
「そういうお前はいい加減、その『晴人くん』ってのやめろよ。せめて学校では『先輩』って呼べ」
「えー、やだよぉ。晴人くんは晴人くんだし」
「なんだそれ……」
葉原は少しも検討する素振りも見せずに拒否すると、悪戯っぽくにこりと笑ってみせた。
「それじゃあ、晴人くん。お互いテスト頑張ろうね!」
「入学して初っ端から赤点とか取るなよ」
「取らないよぉ!」
「どうだかな。……まぁ、何か困ったことがあれば声かけてくれ。出来る限りのことはしてやる。先輩だからな」
最後の一言を強調して言う。
すると葉原は「ありがと! 晴人先・輩・」と生意気な口調で言葉を返し、俺が何かを口にする前に「またね」と軽く手を振りながら脇道へと消えていった。
そうして1人残された俺は、女子高生成り立ての葉原が持つ底知れぬの活力に圧倒されながら、自宅へと続く薄明の帰り道を一歩一歩ゆっくりと進んでいった。
けれどまぁ、悪いことだとは思わない。
約1年振りに親しい後輩とこうして話すことができたのだから、有意義な時間だったと思うべきだろう。
と、そんな風に思っていると、隣を歩いていた葉原が一歩前に出て俺の正面立ち、足を止めた。
「それにしても、久し振りに晴人くんとちゃんと話せて良かったぁ。次からは学校で会っても無視しないでよね!」
「あぁ。なるべく声をかけるようにする」
「なるべくじゃなくて! 絶対!」
「はいはい絶対絶対」
「なんかテキトー……」
葉原はくりっとした大きな瞳を細めて、じっとりと睨むように俺の顔を見つめる。
「そういうお前はいい加減、その『晴人くん』ってのやめろよ。せめて学校では『先輩』って呼べ」
「えー、やだよぉ。晴人くんは晴人くんだし」
「なんだそれ……」
葉原は少しも検討する素振りも見せずに拒否すると、悪戯っぽくにこりと笑ってみせた。
「それじゃあ、晴人くん。お互いテスト頑張ろうね!」
「入学して初っ端から赤点とか取るなよ」
「取らないよぉ!」
「どうだかな。……まぁ、何か困ったことがあれば声かけてくれ。出来る限りのことはしてやる。先輩だからな」
最後の一言を強調して言う。
すると葉原は「ありがと! 晴人先・輩・」と生意気な口調で言葉を返し、俺が何かを口にする前に「またね」と軽く手を振りながら脇道へと消えていった。
そうして1人残された俺は、女子高生成り立ての葉原が持つ底知れぬの活力に圧倒されながら、自宅へと続く薄明の帰り道を一歩一歩ゆっくりと進んでいった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
記憶屋
卯月青澄
ライト文芸
僕は風間。
人の記憶(思い出)を消す事の出来る記憶屋。
正しく言うと記憶、思い出を一時的に取り出し、『記憶箱』と呼ばれる小さな木箱に閉まっておく事が出来るというもの。
でも、それはいつかは本人が開けなければならない箱。
僕は依頼のあった人物に会いに行き、記憶を一時的に封印するのが仕事。
そして今日もこれから依頼人に会いに行く。

子供の言い分 大人の領分
ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。
「はーい、全員揃ってるかなー」
王道婚約破棄VSダウナー系教師。
いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。

気だるげ男子のいたわりごはん
水縞しま
ライト文芸
第7回ライト文芸大賞【奨励賞】作品です。
◇◇◇◇
いつも仕事でへとへとな私、清家杏(せいけあん)には、とっておきの楽しみがある。それは週に一度、料理代行サービスを利用して、大好きなあっさり和食ごはんを食べること。疲弊した体を引きずって自宅に帰ると、そこにはいつもお世話になっている女性スタッフではなく、無愛想で見目麗しい青年、郡司祥生(ぐんじしょう)がいて……。
仕事をがんばる主人公が、おいしい手料理を食べて癒されたり元気をもらったりするお話。
郡司が飼う真っ白なもふもふ犬(ビションフリーゼ)も登場します!
猫と幼なじみ
鏡野ゆう
ライト文芸
まこっちゃんこと真琴と、家族と猫、そして幼なじみの修ちゃんとの日常。
ここに登場する幼なじみの修ちゃんは『帝国海軍の猫大佐』に登場する藤原三佐で、こちらのお話は三佐の若いころのお話となります。藤原三佐は『俺の彼女は中の人』『貴方と二人で臨む海』にもゲストとして登場しています。
※小説家になろうでも公開中※

その後の愛すべき不思議な家族
桐条京介
ライト文芸
血の繋がらない3人が様々な困難を乗り越え、家族としての絆を紡いだ本編【愛すべき不思議な家族】の続編となります。【小説家になろうで200万PV】
ひとつの家族となった3人に、引き続き様々な出来事や苦悩、幸せな日常が訪れ、それらを経て、より確かな家族へと至っていく過程を書いています。
少女が大人になり、大人も年齢を重ね、世代を交代していく中で変わっていくもの、変わらないものを見ていただければと思います。
※この作品は小説家になろう及び他のサイトとの重複投稿作品です。
叶うのならば、もう一度。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ライト文芸
今年30になった結奈は、ある日唐突に余命宣告をされた。
混乱する頭で思い悩んだが、そんな彼女を支えたのは優しくて頑固な婚約者の彼だった。
彼と籍を入れ、他愛のない事で笑い合う日々。
病院生活でもそんな幸せな時を過ごせたのは、彼の優しさがあったから。
しかしそんな時間にも限りがあって――?
これは夫婦になっても色褪せない恋情と、別れと、その先のお話。
白薔薇園の憂鬱
岡智 みみか
ライト文芸
おじいちゃんの作品を取り戻せ! 大好きだったマイナー芸術家のおじいちゃんの作品は、全て生活費のために父に売られてしまった。独りになった今、幸せだったあの頃を取り戻したい。
ナツキス -ずっとこうしていたかった-
帆希和華
ライト文芸
紫陽花が咲き始める頃、笹井絽薫のクラスにひとりの転校生がやってきた。名前は葵百彩、一目惚れをした。
嫉妬したり、キュンキュンしたり、切なくなったり、目一杯な片思いをしていた。
ある日、百彩が同じ部活に入りたいといい、思わぬところでふたりの恋が加速していく。
大会の合宿だったり、夏祭りに、誕生日会、一緒に過ごす時間が、二人の距離を縮めていく。
そんな中、絽薫は思い出せないというか、なんだかおかしな感覚があった。フラッシュバックとでも言えばいいのか、毎回、同じような光景が突然目の前に広がる。
なんだろうと、考えれば考えるほど答えが遠くなっていく。
夏の終わりも近づいてきたある日の夕方、絽薫と百彩が二人でコンビニで買い物をした帰り道、公園へ寄ろうと入り口を通った瞬間、またフラッシュバックが起きた。
ただいつもと違うのは、その中に百彩がいた。
高校二年の夏、たしかにあった恋模様、それは現実だったのか、夢だったのか……。
17才の心に何を描いていくのだろう?
あの夏のキスのようにのリメイクです。
細かなところ修正しています。ぜひ読んでください。
選択しなくちゃいけなかったので男性向けにしてありますが、女性の方にも読んでもらいたいです。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる