俺が白月蒼子を嫌う理由

ユウキ ヨルカ

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教室で白月と別れた後、俺は校門で待つ2人の友人の元へと急いだ。

昇降口で靴を履き替え外へ出ると、校門に背中を預けてスマホを操作する2人の姿が見えた。

待たせてしまったという申し訳ない気持ちも少しあって、俺は小走りで2人の元へ駆け寄る。

「あっ、きたきた」

そんな俺に気がついてスマホをスクロールする手を止め、こちらに目を向けるのは同じクラスの霞ヶ原かすみがはら まこと。遠目だと女子と間違えそうになるような端正な顔立ちに華奢な身体。男にしては長い髪が、微風でサラサラとなびく。

「悪い。ちょっと厄介な奴に絡まれてな」

「おいおい、また白月さんと痴話喧嘩してたのか?勘弁してくれよなぁ」

明らかに揶揄する口調で言うのは、これまた同じクラスの天童てんどう 輝彦てるひこ。誠とは対照的に、身体のあらゆる部位がゴツゴツとした岩肌を思わせるような男性的な容姿。短く刈り上げた髪が日に焼けた黒い肌に合っている。

「勘弁してくれはこっちのセリフだっつーの。毎日毎日金魚のフンみたいに付き纏いやがって……」

「でも、あんまり嫌がってるようには見えないけどね」

「だよな。なんだかんだ言って、お前本当はあの美人な白月さんと毎日話せてラッキーとか思ってんじゃねぇか?」

否定したばかりだと言うのに、2人はこちらに疑いの眼差しを向けてくる。

「だから違ぇって。てか、そんなことよりさっさと行こうぜ。早くしないと部屋埋まっちまうぞ」

「おー、そうだったそうだった。……あっ、遅れた罰として今日の払いは晴人持ちな」

「サンキュー晴人」

「勝手に決めんなよ……」

遅れたのは白月に絡まれた所為であって、決して俺が悪いわけじゃないんだが、ここで言い争っても時間の無駄だ。

仕方ない。将来への投資の意味も込めて、今回は俺の奢りってことにしておいてやる。


と、まぁ、そんなこんなあって俺たち3人はようやく学校近くのカラオケ店に向かって足を進めた。


前を歩く2人の後ろをついて行きながら、まだ彼女が居残っているであろう校舎2階のとある教室を一瞥する。

春の匂いを含んだ茜色の光が、教室の窓硝子に反射して煌めく。

ここからじゃ、あまりよく見えないな……


「おーい、晴人。置いてくぞ」

「おー、今行く」


そう言って輝彦の呼ぶ声に返事を返すと、20メートル程先で待つ2人の元へ向かって、アスファルトの上を駆け出した。
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