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第48話「夏休みについて(14)」
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土曜日。
キャンプ当日——
今日から明日にかけての2日間、ほたる市から少し離れたところにある時雨町で、秀一の親戚が経営しているというキャンプ場に1泊2日で宿泊することになっている。
そして俺たちは現在、そのキャンプ場の管理人である秀一の親戚が運転する迎えの車が到着するのを、ほたる駅の前で待っているところだ。
今日も朝から痛いほど澄んだ青空と白い太陽が夏の空を鮮やかに彩っていて、日差しは強いがまだそれほど暑さは感じられない。
爽やかな朝だ。
「それにしても、キャンプなんて久しぶりだな~。無料で宿泊させてくれる榎本の親戚に感謝しないとね!」
太陽のような眩しい笑顔で言うのは、俺のクラスメイトで中学からの付き合いの朝霧莉緒。
今日は黒いオフショルダーのギャザーブラウスにコバルトブルーのミニスカートという活動的かつ女子らしい、夏のファッションを身に纏っている。
うっすらと日に焼けた小麦色の肌が、朝霧の活発な一面をアピールしている。
「そうね。ところで、時雨町はほたる市からどのくらい離れているの?私、時雨町には行ったことなくて……」
そう尋ねるのは、朝霧と同じく俺のクラスメイトである榊原麗。
サックスのトップスにホワイトのハーフパンツという清涼感溢れるファッションを纏う榊原は、夏の爽やかな朝をイメージさせる。
艶やかで、腰まである長い黒髪が、爽やかなそよ風に靡くようなイメージが、頭の中に浮かび上がった。
『榊原と言えばスカート』というイメージがあったが、ハーフパンツ姿の榊原もとてもよく似合っている。
カジュアルな服装をしていても、榊原が纏うだけで何か特別上品なもののように思えた。
***
「時雨町はほたる市のずっと上の方にある町だよ。ほたる市よりも人口が少なくて、大きな建物とかもないけど、その分景色がすっごい綺麗なんだよ!」
あどけない少年のような顔をして言うのは、今回のイベントの発案者かつ俺と同じクラスメイトで、朝霧と同じく中学からの腐れ縁の榎本秀一。
英語のロゴの入った赤いTシャツとカーキ色の半ズボンからは、毎日の部活で日に焼けた浅黒い手足が伸びる。
側にいるだけで涼しく感じる榊原の爽やかさとは対照的に、秀一はその身に太陽を宿しているのではないかと疑ってしまうほどに暑苦しい。
ベスト暑苦しい男賞があれば間違いなく、秀一がグランプリだ。
「それは楽しみね。羽島君も莉緒さんも、そのキャンプ場には初めて行くのよね?」
「あぁ。時雨町には何度か行ったことはあるんだが、秀一の親戚がキャンプ場を経営してるなんて知らなかったしな」
「榎本は毎年そこでキャンプしてるのー?」
朝霧に尋ねられた秀一は、「いや」と口を開く。
「実は、中1の時に行ったっきりなんだよ。キャンプ場を経営してる親戚の叔父さんと叔母さんとは、毎年お盆とかに会ってるんだけど、なかなかキャンプをする時間が無くてなぁ。でも、中1の時に見たあの景色は忘れられなくてさ!今日は晴れで星がよく見えるらしいから、夜になったらみんなで天体観測しようぜ!」
秀一の瞳には、まるでその忘れられない景色というのが写っているようで、煌く星のように輝いていた。
***
そんなことを話していると、駅の駐車場に1台の車が入ってきた。
シルバーのファミリー向け大型普通車だ。
車は俺たちの前で止まると、運転席から1人の女性が出てきた。
「お待たせしてごめんねぇ~」
「叔母さん久し振りー!あっ、この3人が俺の高校の友達ね」
秀一が「叔母さん」と言ったその女性はいかにも温厚そうで、優しそうな瞳の周りには細かいシワがいくつか見える。
年齢はだいたい50歳くらいだろうか。
秀一の叔母さんは細身の体型で、首に巻いたタオルで額の汗を拭いながら、俺、朝霧、榊原を1人ずつ流れるように見ていく。
そうして頭のてっぺんからつま先まで眺め終わると、ニカッと満面の笑みを浮かべて口を開いた。
「秀ちゃんから聞いてた通り、みんないい顔してるねぇ。可愛らしい女の子が2人にかっこいい男の子が2人もいれば、うちのキャンプ場も繁盛間違いなしだね」
「かっこいいだなんて、照れるなぁ~あっはっはっは!」
秀一は掌で頭を撫でながら、上機嫌になって笑い出す。
どうやら秀一の叔母さんは褒め上手らしい。
俺はありがたくお世辞を受け取り、それに応えるように自己紹介をする。
「挨拶が遅れてすみません。羽島悠と言います。秀一とは中学時代からの付き合いで、仲良くさせてもらってて……この度はキャンプ場にご招待いただきありがとうございます」
すると、俺に続くように朝霧と榊原も挨拶を交えて自己紹介を始めた。
「初めまして! 朝霧莉緒です。榎本とは中学からの知り合いで同じ陸上部に入ってます。今日はキャンプ楽しませてもらいます!」
「初めまして。榊原麗です。この度はキャンプ場への招待ありがとうございます。存分に楽しませていただきますね」
それぞれの自己紹介に頷きながら耳を傾けていた秀一の叔母さんは、俺たちが自己紹介を終えると「ご丁寧にどうもねぇ」と柔らかな表情を浮かべた。
「それじゃぁ、そろそろ行こうかね」
自己紹介を終えると、そう言って秀一の叔母さんは車後方のスライド式のドアを開けた。
俺たちは先頭を行く秀一に続いて車へと乗り込むと、朝霧と榊原は車の真ん中の席に座り、俺と秀一はその後ろの席に座った。
車の中は冷房が効いていおり、フロントガラス付近に設置された芳香剤から、ベルガモットの爽やかな香りが漂ってくる。
俺たちが全員車に乗ったのを確認した叔母さんは、運転席の方へ回り込んでドアを開き、乗り込んだ。
叔母さんがカチッという音と共にシートベルトを締め、後ろにいる俺たちの方を振り向き確認する。
「準備いいかな?」
「オッケーです!」
秀一が代表して答える。
「それじゃあ、出発するよ」
そう言って叔母さんがアクセルを踏むと、車は徐々にスピードを上げ、目的地である『時雨キャンプ場』へ向かって走り出した——。
キャンプ当日——
今日から明日にかけての2日間、ほたる市から少し離れたところにある時雨町で、秀一の親戚が経営しているというキャンプ場に1泊2日で宿泊することになっている。
そして俺たちは現在、そのキャンプ場の管理人である秀一の親戚が運転する迎えの車が到着するのを、ほたる駅の前で待っているところだ。
今日も朝から痛いほど澄んだ青空と白い太陽が夏の空を鮮やかに彩っていて、日差しは強いがまだそれほど暑さは感じられない。
爽やかな朝だ。
「それにしても、キャンプなんて久しぶりだな~。無料で宿泊させてくれる榎本の親戚に感謝しないとね!」
太陽のような眩しい笑顔で言うのは、俺のクラスメイトで中学からの付き合いの朝霧莉緒。
今日は黒いオフショルダーのギャザーブラウスにコバルトブルーのミニスカートという活動的かつ女子らしい、夏のファッションを身に纏っている。
うっすらと日に焼けた小麦色の肌が、朝霧の活発な一面をアピールしている。
「そうね。ところで、時雨町はほたる市からどのくらい離れているの?私、時雨町には行ったことなくて……」
そう尋ねるのは、朝霧と同じく俺のクラスメイトである榊原麗。
サックスのトップスにホワイトのハーフパンツという清涼感溢れるファッションを纏う榊原は、夏の爽やかな朝をイメージさせる。
艶やかで、腰まである長い黒髪が、爽やかなそよ風に靡くようなイメージが、頭の中に浮かび上がった。
『榊原と言えばスカート』というイメージがあったが、ハーフパンツ姿の榊原もとてもよく似合っている。
カジュアルな服装をしていても、榊原が纏うだけで何か特別上品なもののように思えた。
***
「時雨町はほたる市のずっと上の方にある町だよ。ほたる市よりも人口が少なくて、大きな建物とかもないけど、その分景色がすっごい綺麗なんだよ!」
あどけない少年のような顔をして言うのは、今回のイベントの発案者かつ俺と同じクラスメイトで、朝霧と同じく中学からの腐れ縁の榎本秀一。
英語のロゴの入った赤いTシャツとカーキ色の半ズボンからは、毎日の部活で日に焼けた浅黒い手足が伸びる。
側にいるだけで涼しく感じる榊原の爽やかさとは対照的に、秀一はその身に太陽を宿しているのではないかと疑ってしまうほどに暑苦しい。
ベスト暑苦しい男賞があれば間違いなく、秀一がグランプリだ。
「それは楽しみね。羽島君も莉緒さんも、そのキャンプ場には初めて行くのよね?」
「あぁ。時雨町には何度か行ったことはあるんだが、秀一の親戚がキャンプ場を経営してるなんて知らなかったしな」
「榎本は毎年そこでキャンプしてるのー?」
朝霧に尋ねられた秀一は、「いや」と口を開く。
「実は、中1の時に行ったっきりなんだよ。キャンプ場を経営してる親戚の叔父さんと叔母さんとは、毎年お盆とかに会ってるんだけど、なかなかキャンプをする時間が無くてなぁ。でも、中1の時に見たあの景色は忘れられなくてさ!今日は晴れで星がよく見えるらしいから、夜になったらみんなで天体観測しようぜ!」
秀一の瞳には、まるでその忘れられない景色というのが写っているようで、煌く星のように輝いていた。
***
そんなことを話していると、駅の駐車場に1台の車が入ってきた。
シルバーのファミリー向け大型普通車だ。
車は俺たちの前で止まると、運転席から1人の女性が出てきた。
「お待たせしてごめんねぇ~」
「叔母さん久し振りー!あっ、この3人が俺の高校の友達ね」
秀一が「叔母さん」と言ったその女性はいかにも温厚そうで、優しそうな瞳の周りには細かいシワがいくつか見える。
年齢はだいたい50歳くらいだろうか。
秀一の叔母さんは細身の体型で、首に巻いたタオルで額の汗を拭いながら、俺、朝霧、榊原を1人ずつ流れるように見ていく。
そうして頭のてっぺんからつま先まで眺め終わると、ニカッと満面の笑みを浮かべて口を開いた。
「秀ちゃんから聞いてた通り、みんないい顔してるねぇ。可愛らしい女の子が2人にかっこいい男の子が2人もいれば、うちのキャンプ場も繁盛間違いなしだね」
「かっこいいだなんて、照れるなぁ~あっはっはっは!」
秀一は掌で頭を撫でながら、上機嫌になって笑い出す。
どうやら秀一の叔母さんは褒め上手らしい。
俺はありがたくお世辞を受け取り、それに応えるように自己紹介をする。
「挨拶が遅れてすみません。羽島悠と言います。秀一とは中学時代からの付き合いで、仲良くさせてもらってて……この度はキャンプ場にご招待いただきありがとうございます」
すると、俺に続くように朝霧と榊原も挨拶を交えて自己紹介を始めた。
「初めまして! 朝霧莉緒です。榎本とは中学からの知り合いで同じ陸上部に入ってます。今日はキャンプ楽しませてもらいます!」
「初めまして。榊原麗です。この度はキャンプ場への招待ありがとうございます。存分に楽しませていただきますね」
それぞれの自己紹介に頷きながら耳を傾けていた秀一の叔母さんは、俺たちが自己紹介を終えると「ご丁寧にどうもねぇ」と柔らかな表情を浮かべた。
「それじゃぁ、そろそろ行こうかね」
自己紹介を終えると、そう言って秀一の叔母さんは車後方のスライド式のドアを開けた。
俺たちは先頭を行く秀一に続いて車へと乗り込むと、朝霧と榊原は車の真ん中の席に座り、俺と秀一はその後ろの席に座った。
車の中は冷房が効いていおり、フロントガラス付近に設置された芳香剤から、ベルガモットの爽やかな香りが漂ってくる。
俺たちが全員車に乗ったのを確認した叔母さんは、運転席の方へ回り込んでドアを開き、乗り込んだ。
叔母さんがカチッという音と共にシートベルトを締め、後ろにいる俺たちの方を振り向き確認する。
「準備いいかな?」
「オッケーです!」
秀一が代表して答える。
「それじゃあ、出発するよ」
そう言って叔母さんがアクセルを踏むと、車は徐々にスピードを上げ、目的地である『時雨キャンプ場』へ向かって走り出した——。
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