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第22話「テスト勉強と蛍について(4)」
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『本日の天気は晴れのち曇り。夕方までは晴れますが、夜は雨こそ降らないものの雲が出てくるでしょう。今夜は湿度・気温共に高く、蒸し暑い夜になりそうです』
朝食のトーストと目玉焼きを頬張りながら、俺は朝の天気予報に目を向ける。
中年の男性気象予報士が天気図を指差しながら今日の天気を解説している。
日曜日。
蛍鑑賞当日——。
今日は珍しく朝7時に目が覚めた。
いつもの休日なら昼過ぎまで寝ているのが当たり前なのだが、昨夜は張り切ってテスト勉強をしたせいか脳が思ったよりも疲弊し、いつもより早く眠りについた。
最後に時計を確認した時は、まだ22時を少し過ぎたところだった。
そこから数えると約9時間ほど眠っていたらしい。
熟睡できたおかげで、昨夜の勉強の疲れはほとんど抜けている。
いい感じに焦げ目のついたトーストと、黄身が硬めの目玉焼きを完食し、猫舌の俺には熱すぎるコーヒーに息を吹きかけながら冷ましていると、テレビでは天気予報が終わりCMに入った。
榊原と会うのは19時。
ほたる駅まで歩いて行くとして、18時半には準備を終えて家を出れるようにしたい。
さて、問題はそれまでの間何をするかだ。
俺はやっと飲める程度に冷めたコーヒーをすすりながら考える。
普段なら迷わず二度寝をすることを選んだだろうが、熟睡できたおかげで今は全く眠気がない。
今飲んでいるコーヒーのカフェイン効果も相まって、むしろ目が冴えきっている。
しばらく考えた結果、ようやく結論が出た。
「……テスト勉強するか」
テストまで残り1週間。
俺には授業を一度聞いただけで内容を完璧に把握できる『才能』があるわけでも、教科書をパラパラと流し見しただけで全て暗記できるような『才能』があるわけでもない。
これに関してはそんな能力を持っている方が稀だろう。
俺のような凡人は地道にコツコツ学習を積み重ねる以外に高得点を取る方法はない。
俺はコーヒーを飲み干すと自室に戻った。
部屋に入ると、閉じられたカーテンの隙間から光が漏れ出している。
カーテンの傍まで行き、隙間に手を入れると勢いよくカーテンを開けた。
窓から外を眺めると、爽やかな青い空には幾つか雲ができている。
快晴というわけではないが、昨日に比べると段違いでいい天気だ。
俺は机の椅子に腰掛けると、ペンケースからシャープペンシルと3色ボールペンを取り出し、開きっぱなしになっていたノートに書き込みを入れていく。
一応言っておくが、俺は別に勉強が好きなわけではない。
そもそもの話、勉強が好きな奴なんてこの世に存在するのだろうか?
自分のため、将来のため、親に褒められるため……
勉強を好きでない人が勉強をする理由には幾つかあるだろう。
俺の場合、周りに「『才能』が何もない奴」と思われたくないためだ。
別に勉強に関する『才能』があるわけではない。
ただ、全国の高校生が当たり前にする事として認識されている勉強すらできないようでは、一体自分に何ができるのかといつまでも悩み、考えてしまう。
そして『点数』という形で他人から評価されるのが嫌で仕方なく勉強をしているのだ。
言うなれば、この行為はただの見栄だ。
全国の高校生の中でも、こんな事を考えて勉強している奴はそうそういないだろう。
そんな事を思いながら、俺は黙々とノートにテスト範囲のポイントを書き込んでいく。
数学、英語、歴史、地学、古文……
昨日と同じように1時間勉強して10分休憩を繰り返し、昼になったら昼食を食べ、それが終わればまた休憩を挟みつつテスト勉強に取り組む。
途中何度かスマホをいじったり、文庫本をめくったりはしたが割と順調に勉強は進んだ。
そして、本日2度目の数学の勉強をしているとペンでカリカリと文字を書く音だけが聞こえていた部屋に、スマホのアラーム音が鳴り響いた。
「もう時間か」
俺はアラームを止め、スマホのディスプレイに表示されたデジタル時計を確認する。
時刻はちょうど18時になったところだ。
俺は椅子から立ち上がり、思いきり体を伸ばすとクローゼットから服を取り出し着替え始める。
部屋着から外出着に着替え終わった後、トートバッグに財布と折りたたみ傘を入れ、スマホをポケットにしまって部屋を出た。
部屋を出て階段を降りていると、1階から階段で2階に登ってくる由紀とすれ違った。
「あれ?お兄ちゃんどっか行くの?」
「あぁ、ちょっと蛍を見に行ってくる。夕食は外で食べてくるから俺の分はいらないって母さんに言っておいてくれ」
そう由紀に伝えると、「蛍?お兄ちゃんが?」とキョトンとした表情で聞いてくる。
玄関で靴を履いていると後ろから「あんまり遅くならないようにね!」と子供に言い聞かせるように由紀が声をかけてきた。
俺は「わかった」と一言答えると、玄関の扉を開けて外に出た。
外に出ると、今朝の天気予報でも言っていたように空には雲が出ていた。
夕日は雲に隠れてしまっていて外は薄暗い。
梅雨特有の蒸し暑い空気が肌にまとわりつき、背中に汗が滲む。
俺はまとわりつく蒸し暑さを振り払うように、ほたる駅に向かって足を動かした——。
朝食のトーストと目玉焼きを頬張りながら、俺は朝の天気予報に目を向ける。
中年の男性気象予報士が天気図を指差しながら今日の天気を解説している。
日曜日。
蛍鑑賞当日——。
今日は珍しく朝7時に目が覚めた。
いつもの休日なら昼過ぎまで寝ているのが当たり前なのだが、昨夜は張り切ってテスト勉強をしたせいか脳が思ったよりも疲弊し、いつもより早く眠りについた。
最後に時計を確認した時は、まだ22時を少し過ぎたところだった。
そこから数えると約9時間ほど眠っていたらしい。
熟睡できたおかげで、昨夜の勉強の疲れはほとんど抜けている。
いい感じに焦げ目のついたトーストと、黄身が硬めの目玉焼きを完食し、猫舌の俺には熱すぎるコーヒーに息を吹きかけながら冷ましていると、テレビでは天気予報が終わりCMに入った。
榊原と会うのは19時。
ほたる駅まで歩いて行くとして、18時半には準備を終えて家を出れるようにしたい。
さて、問題はそれまでの間何をするかだ。
俺はやっと飲める程度に冷めたコーヒーをすすりながら考える。
普段なら迷わず二度寝をすることを選んだだろうが、熟睡できたおかげで今は全く眠気がない。
今飲んでいるコーヒーのカフェイン効果も相まって、むしろ目が冴えきっている。
しばらく考えた結果、ようやく結論が出た。
「……テスト勉強するか」
テストまで残り1週間。
俺には授業を一度聞いただけで内容を完璧に把握できる『才能』があるわけでも、教科書をパラパラと流し見しただけで全て暗記できるような『才能』があるわけでもない。
これに関してはそんな能力を持っている方が稀だろう。
俺のような凡人は地道にコツコツ学習を積み重ねる以外に高得点を取る方法はない。
俺はコーヒーを飲み干すと自室に戻った。
部屋に入ると、閉じられたカーテンの隙間から光が漏れ出している。
カーテンの傍まで行き、隙間に手を入れると勢いよくカーテンを開けた。
窓から外を眺めると、爽やかな青い空には幾つか雲ができている。
快晴というわけではないが、昨日に比べると段違いでいい天気だ。
俺は机の椅子に腰掛けると、ペンケースからシャープペンシルと3色ボールペンを取り出し、開きっぱなしになっていたノートに書き込みを入れていく。
一応言っておくが、俺は別に勉強が好きなわけではない。
そもそもの話、勉強が好きな奴なんてこの世に存在するのだろうか?
自分のため、将来のため、親に褒められるため……
勉強を好きでない人が勉強をする理由には幾つかあるだろう。
俺の場合、周りに「『才能』が何もない奴」と思われたくないためだ。
別に勉強に関する『才能』があるわけではない。
ただ、全国の高校生が当たり前にする事として認識されている勉強すらできないようでは、一体自分に何ができるのかといつまでも悩み、考えてしまう。
そして『点数』という形で他人から評価されるのが嫌で仕方なく勉強をしているのだ。
言うなれば、この行為はただの見栄だ。
全国の高校生の中でも、こんな事を考えて勉強している奴はそうそういないだろう。
そんな事を思いながら、俺は黙々とノートにテスト範囲のポイントを書き込んでいく。
数学、英語、歴史、地学、古文……
昨日と同じように1時間勉強して10分休憩を繰り返し、昼になったら昼食を食べ、それが終わればまた休憩を挟みつつテスト勉強に取り組む。
途中何度かスマホをいじったり、文庫本をめくったりはしたが割と順調に勉強は進んだ。
そして、本日2度目の数学の勉強をしているとペンでカリカリと文字を書く音だけが聞こえていた部屋に、スマホのアラーム音が鳴り響いた。
「もう時間か」
俺はアラームを止め、スマホのディスプレイに表示されたデジタル時計を確認する。
時刻はちょうど18時になったところだ。
俺は椅子から立ち上がり、思いきり体を伸ばすとクローゼットから服を取り出し着替え始める。
部屋着から外出着に着替え終わった後、トートバッグに財布と折りたたみ傘を入れ、スマホをポケットにしまって部屋を出た。
部屋を出て階段を降りていると、1階から階段で2階に登ってくる由紀とすれ違った。
「あれ?お兄ちゃんどっか行くの?」
「あぁ、ちょっと蛍を見に行ってくる。夕食は外で食べてくるから俺の分はいらないって母さんに言っておいてくれ」
そう由紀に伝えると、「蛍?お兄ちゃんが?」とキョトンとした表情で聞いてくる。
玄関で靴を履いていると後ろから「あんまり遅くならないようにね!」と子供に言い聞かせるように由紀が声をかけてきた。
俺は「わかった」と一言答えると、玄関の扉を開けて外に出た。
外に出ると、今朝の天気予報でも言っていたように空には雲が出ていた。
夕日は雲に隠れてしまっていて外は薄暗い。
梅雨特有の蒸し暑い空気が肌にまとわりつき、背中に汗が滲む。
俺はまとわりつく蒸し暑さを振り払うように、ほたる駅に向かって足を動かした——。
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