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シロとペイルの修行1

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「これなにー?」
「それはここ一体に生えている花っす」
「これはー?」
「それは食べられるキノコっすね。ちょっと貸してください」

 サリアはシロからキノコを渡してもらうと火をキノコにあてた。
 キノコは程よく焼け、美味しそうな匂いが漂っている。

「おいしそー!」
「美味しいっすよ。どうぞ」
「んー!美味しい!!ペイルも、はい!」
「ガウッ!」

 先ほど、ペイルは鳴き声が変わった。ある程度の成長を迎え、人間で言う声変わりに入ったのだ。
 もちろん姿にも成長が現れ始めている。
 牙や爪、鱗の硬さなどいっぱしのドラゴンへと近づいている。大きさも見てわかるほど成長し、大きくなっている。すでにシロが人の姿で抱きかかえているのが無理なほどに。
 ドラゴンが皆こういうわけではなく、ペイルはこのように急に成長し、終わるとそのままが続く。

「ペイルくん、試しに人の姿になってみるのはどうっすか?」
「ガウ?」
「そうだよ!やってみようよ!」
「ガウ!」

 ペイルは人の姿へとなった。
 前にもペイルは人の姿になっていた。男だが容姿は女の子より、まだ子供だからというのもある。
 それに比べ、今のペイルは成長をし、なんとシロの身長を超すほど成長をしている。

「うそー!!!」
「へぇー!変わってるっすね。普通ドラゴンの時と人間の時のサイズは比例しているのにドラゴンの時は小さくて人の姿の時は大きいっす」
「シロおねえ…ちゃん?」
「もはや逆っすね」

 理由は分からない。分かることは人の成長が早く、ドラゴンの成長が遅いこと。予想外のことが起きている。

「まあこれは師匠にでも聞くっす。今は他のことを覚えるっすよ」
「「はーい!!」」
「いい返事っすね」

 先ほどと同じようにまた森の中を歩く。
 何かを見つけては聞き、何かを見つけてはまた聞くのを繰り返す。こんだけのことだが、一つ一つ新しい知識を得ていく。

「そろそろ新しいことでもやるっすか」
「何やるのー?」
「どんなこと?」
「ドラゴンの姿で言葉を言えるようにすることっす。シロちゃんもペイルくんもまだっすよね?」
「まだ言えないよー」
「まだ全然言えないよ」

 ドラゴンは昔、人と会話するために人語を覚えてからドラゴンの姿でも話せるようになった。しかし、幼いドラゴンはしゃべれなかった。解決するには実際に人の姿になるのが手っ取り早いとわかった。
 かと言ってそのままにしておくべきではない。本来はドラゴン。ドラゴンの姿でも話せるようにするのがドラゴンの世界で一般的だ。
 シロやペイルのように他のドラゴンに教わるのは一つの方法。孤独のドラゴンは感覚で覚えている。

「じゃあ一旦ドラゴンになるっすよ。ここなら人はいなくていても動物ぐらいっすから」
「「わかったー!」」
「いっくよー!ボンッ!」
「ポンポポ…ポンッ!」
「なんすか、その掛け声は…」

 シロとペイルは掛け声とともにドラゴンの姿へとなった。
 サリアもドラゴンの姿へとなった。茶色のドラゴンで、ペイルはもちろんシロより大きい。もう人でいう成人したドラゴンだ。

「じゃあしゃべってみようか」
「ガウッ!」
「ガアッ!」
「鳴き声っすね、それ」

 やはり簡単には話すことはできない。最初から話せていたら修行の必要がない。そうなったらサリアの役目が減ってしまう。
 サリアが言われたことは3つ。
 1つ目は知識を蓄えること。
 この子は過保護だったのか、外の世界について疎い。もしその過保護の元がいなくなったら生きていけなくなる。悲しい話だが、もしがあるなら潰しておく必要がある。
 2つ目は今やっているドラゴンで話せること。
 必要がないと思うが過去に話せることが普通になり、話せないことは未熟のドラゴンと思われたりする。
 最後にドラゴンとしての戦闘能力をあげること。
 この子はいい意味でも悪い意味でも人に馴染めている。いや、馴染め過ぎている。
 それは単純にドラゴンとしての戦闘能力がない。ドラゴンと戦闘する場合、ドラゴンとして生きてきた幼竜に簡単に負けてしまう。

「ガアッ!」
「ウガアッ!」
「しまった、これだと何を言っているか自分でもわからないっすね…」

 本当はラグドラーグから話している内容を聞ける特別な石を貰っていた。これはジルが持っているペンダントと同じ性能だ。
 サツキだけ戻ろうにも、この2人を置いて行くのは心配。さっき森の中を歩いていた時も勝手に動いていたためだ。

「しょうがないっすね、この魔法は黙っていてくださいっすよ『思考閲読シンキング・リーディング』」

 この魔法は無条件で相手の思考を読むことができる。
 大体は頭で考えながらしゃべるから大体内容が分かる。また、同時に考えていることも分かってしまう。
何も考えずにしゃべると便利なことに話していることが分かる。恐らく子供の2人はこっち側が聞こえるだろう。

『ねえねえ!!』
「なんすか?もう聞こえるっすよ」
『やった!やっと話せた』
「いやいや、これは自分の魔法で聞こえているだけっす。話している内容は脳内から聞こえるけど、耳からはガウガウしか聞こえないっすよ」
『なーんだ、まだだめなのか』
「まだここからっすから!コツを教えるんで頑張りましょう!」
『『はーい!』』

 この後も話せることはなく、一旦戻り昼飯を食べた。
 午後も午前中のようにまた歩きながら何があるのかを教えていった。ある程度の場所までいくとドラゴンの姿になり、また話せる練習をした。

『全然はなせなーい!飽きてきたー!!』
「だめっすよー。こればっかりは出来るようにしてもらわないと」
『えー!!』
「ペイルくんを見てみるっす!まだ頑張って話せるようにしてるっすよ」
『飽きてきたー…』
「二人ともっすか!?」

 まだ一日目。二人は早くも飽きてしまった。
 でも相手は子供。予想はしていた。

「ならこの姿で軽く戦ってみるっすか?」
『いいの?』
「いいっすよ。ただここの森から出ないこと。これだけは守ってもらうっすよ」
『『わかった!!』』

 やはり子供。体を動かす方が好きなようだ。

『それより魔法見てみたい!』
「うちのっすか?」
『うん!見てみたい!』
『見てみたーい!』
「うーん、いいっすよ!でも危ないから上から見て居ることっすよ」

 危ないから二人とも上へ飛んだ。下にはサリアと森が広がっている。

「いくっすよー!『地割れクラック』」

 ゴゴゴという音と共に地面が割れ、バキバキという音と共に木が折れていく。
 範囲は広く、やがて地面は何等分かに別れた。

「次行くっすよー!『岩石浮遊フローティング・ロック!』

 何棟分かされた岩は宙を舞い始めた。大きくて直径50メートル、小さくて2メートルの岩が浮いている。

『それをどーするのー?』
「こうするっす!」

 浮いていた岩は地面にたたきつけられた。
 地面に触れると同時に、大きな地震のように揺れた。

「ふぅ…!こんなの当てちゃったらひとたまりもないっすからねぇ」
『すごーい!シロもできるようになるかな?』
「うーん、覚えればできるかもしれないっすけどまずは違う魔法を覚えてほしいっすね」
『どんな魔法?』
「…あっ。そっちを見せればよかったすね」

 ついつい見せたいと思う心が動いてしまい、得意の魔法を使ってしまった。教えるならこの魔法を先にやって置けば楽だった。

「今度はそこから見てて大丈夫っすよ。『切断風カッターウィンド』!」

 翼を羽ばたかせると風がおき、スパスパと木が切れていく。切れ目も金属で切ったかのようにきれいに斬れている。
 それだけではなく、翼で羽ばたかせた分魔法が飛んでいるため、羽ばたくたびにどんどん奥の木が切れていく。

『羽ばたいただけなのに!?』
「いや、魔法っすよ…。これはドラゴンならみんな使える簡単な魔法っすのでまずはこれを覚えるっす」
『わかったー!』
『がんばる!』

 こうして飽きたら別のことをするように回し、文句は言いつつもシロとペインは修行をしていた。
 魔法を覚えるのは早く、シロは2日目には木に切れ込みが入るまで成長をした。遅れながらもペイルも翌日に切れ込みが入った。これは驚愕の早さだった。予定では1週間と呼んでいたが、残りの日が余ってしまった。
 だが、ドラゴンの姿で話す方が遅れているため、空いた時間は全てこれに持っていかれた。もちろん2人ともブツブツ言っていたが、出来ないは出来ないでいやでやめることなくこなした。

 ここまでで一週間。得たのは最初の魔法だけ。言葉は何となく似たような音をだせるぐらいまで成長をした。
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