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これは楽勝ですわー

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「どこに、行きたいの?」
「うーん…ここの層って広いの?」
「そこまでは。下の方が、もっと広い」

 ならここを先に終わらせてもいいんじゃないのか?
 別に最初の層からとは言ってなかったと思うし。

「じゃあこの層の案内って頼める?」
「代わりに、あれ、ちょうだい」
「クロ―」
「はいはい」

 クロが干し肉を渡す。
 美味しそうに食べているけど。
 そんなに美味しいか?
 いつも美味しいご飯をつくってもらってたからか。

「どう、周る?」
「出来れば全部の部屋を周りたいけど、できる?」
「わかった」

 ペタペタと歩き始めた。
 迷わず進んでいるけど大丈夫なのかな?

「まずは、安全な、ところ」
「トラップが少ないとか?」
「うん。マルの、後ろを、ついてきて」

 というわけでペタペタ歩く後ろをついていった。
 たくさんある部屋があってもトラップに引っかからないように教えてくれた。
 …練習の意味ねぇ。

「それにしても敵もいないのか」
「スライムは、マルが、命令出した」
「「「「「えっ?」」」」」
「スライムの、ボスは、マル」

 まあ薄々気づいていましたよ?
 明らか様にキングです!見たいな見た目だったし。
 キングじゃなくてクイーンだったけど。

「スライムのってことは他にもいるの?」
「ここには、ほかにも、住んでいる。全員に、ボスは、いるよ」

 たとえどんな種族でも長はいる。
 俺たちもだけどここは弱肉強食の世界。
 同種族でもこうなってしまう。

「マルの、友達には、キズついて、ほしくないから」
「…ありがとう」

 今はマルに甘えさせてもらおう。

「マルー!」
「シロ?どうしたの?」
「ここで終わりなのー?」

 本を見てみると最初に落ちた地点。
 戻ってきたみたいだ。

「まだ、後は、ほかの種族が、いる」
「危険ってこと?」
「うん」

 テリトリーでもあるのかな。
 容易に踏めば襲い掛かる。
 気を付けないといけない。

「ジル、今日は戻るのはどうでありんすか?」
「…ビビっちゃったの?」
「違うでありんすよ!時間でありんす!」
「ああ!」

 ただただ歩いただけだけど時間は経っている。
 最初の層を考えると戻ってそっちを終わらせた方がいいのかもしれない。

「それにしても下に行くほど広くなるのか」
「一年間でやるでありんすよ?狭かったらつまんないでありんす」
「そうだよなぁ」

 プラス思考で考えれば初日でここまで進んだんだ。
 いい方だろう。

「上に行くことってできる?」
「もちろん。階段が、ある」

 通った道にはなかったけど。
 しっかりあったんだね。

*

「この先の、部屋にある。けど、あれ見て」
「ゴブリンだな」
「そう。だから、戦わないと、いけない」

 なるほどね。
 だから通らなかったのか。
 問題は誰かが戦うか。

「誰が戦う?」
「全員でいかないのー?」
「この人数で戦いに行ったら狭いだろ?」
「そうだね!」

 戦えてせいぜい2人。
 誰が戦うべきかな?

「わっちが行くでありんす!」
「シロも戦う―!」
「し、シロちゃん…」
「どうしたのー?」
「僕に戦わせてくれない?」
「「「「「えっ!?」」」」」

 意外すぎる!
 あの温厚なラウくんが?
 一応急変したところは見たことがあるけどさ。
 それは違うじゃない?

「わっちはいいでありんすよ」
「ちょうどやってみたいことがあるんだ」
「あぁ、あれでありんすね」

 やってみたいこと?
 何か秘策でも?

「2人とも、気を付けて」
「ありがとうマルちゃん」
「そこで見てるでありんす」

 さて、何をするんだろう?

*

「フウちゃん、タイミングお願いね」
「そっちこそ失敗をしないでほしいでありんすよ」

「じゃあ行くよ!敵を穿て!石ノ礫グラベル!」
「火をおこし、燃やし、焼き尽くせ!火炎弾ファイアーバブル!」

 2人の魔法が放たれると空中で合わさる。
 最初はただの石だったのが炎を纏っていく。

「これが魔法の合わせ技!」
隕石メテオライト!」

 真横から飛んでくる隕石。
 あんなの当たったらひとたまりも――

「「「「「グギャアアアァァァ!!!」」」」」

 ないよね…。
 ただでさえ骨折れてるんじゃないかと思うぐらいの威力が飛んでくる。
 そこからの追い打ちで燃えていく。
 …封印しない?その攻撃。

「「「「「こわっ…」」」」」
「フフンッ!」
「ひ、ひかないでよー!」

 どや顔のフウちゃんと焦るラウくん。
 この2人やばいぞ。
 見守ってあげようかなと思ったけど一緒にいさせたら危ない。

「と、とにかく階段にいける…いけますね」
「そ、そうね。いけますね」
「いい加減元に戻ってよー!!」

*

 上に上りまた周る。
 下とは違い、ここは外が近いから敵はいないとのこと。
 代わりにトラップが多い。

「なんでトラップが多いのー?」
「ご飯が、ほしいから?」
「な、なるほど」

 思った以上に現実的。
 食べないと死んじゃうからね。

「あとは、入り口だけ」
「マルも一緒に行こうよー!」
「だめ。マルは、ここを、離れられない」
「えー!!」

 ボスだからか。
 大変そうだな。

「また来るからその時に会うことはできる?」
「もちろん!!!」
「じゃあシロ。どっちにしろ1年間はここに来ないといけないんだから」
「明日!マル!明日ね!」
「うん!!」

 訓練かダンジョンか選べるからな。
 明日もダンジョンだ。

「じゃあ、また明日ね」
「「「「「バイバーイ!!」」」」」

 マルはスライムに戻るとうにょうにょ動いて戻っていった。

「あっ…服どうなったんだろう?」
「シロ一緒で変身すれば出てくるんじゃない?」
「そうなのかしら?ならそのままでいいわね」

 一瞬で消えたからさすがに一緒でしょ。
 これで消えたら服がたくさんないといけなくなるけど。

*

「おかえりー!」
「お疲れ様。今日はけっこう進んでいたわね」
「知ってたのー!?」
「姿隠していたじゃないか…」

 透明人間になって見守ってくれていたはずなんだけど。
 見えてなかったから忘れちゃったんだな。

「いや、トラップにかかってからバラバラになっちゃったから私たちはずっとここにいたよ!」
「こんなこともあろうかとあらかじめこういう魔法を付けていたのよ」

 シルヴィ先生が本を見せると青い光の点が9個あった。

「これって俺たち?」
「そうよ。こうして今どこにいるのか見ていたの。もちろん敵に襲われたのか分かるようにもなっているわ」
「へぇー!すごい!」

 敵は赤色の光だった。
 ん?よく見ると同じ層にもう一つ点があるけど。
 なんで黄色いんだ?

「これは?」
「このダンジョンのボスよ。ずっと一緒にいたんでしょ?」
「先生もマル知ってるのー?」
「もちろんよ!私たちの時も一緒にいたわ!」

 ダンジョンの案内人ならぬ案内スライム。
 何年もずっとやっていたんだ。

「人になったときは驚いたわね」
「ねー!」
「「えっ?」」
「先生知らなかったのー?」
「う、うん。ずっとスライムのままだったんだけど」
「まさか変化もできたなんて…」

 あ、人型になったのは俺たちが初めてみたい。
 そういえば最初できるのか分からない感じだったもんね。

「じゃあ今日は帰ろうか!疲れたでしょ?」
「「「「「疲れたー!!」」」」」
「本当に疲れたのかしら…?」

 返事は元気だけど本当に疲れていますよ…。
 何せマッピングするだけだったけどずっと歩いていたんですから。
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