異世界で封印されていました。

銀狐

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 まだ早いですが、今年のファンタジー小説大賞(9月ごろ)にまた参加するつもりです。
 前みたいな順位は取れないと思いませんので、楽しんでいこうと思います。
 参加する作品は未定で、新しく書くかも未定ですが...

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 栞は一旦メストリアル王国の国王に会ってからグロウに戻るとのこと。
 国王から俺を栞の代わりに戦闘部隊隊長にどうかという話もされた。
 もちろん、お断りだ。
 そう言うと思っていたのか、栞もあらかじめ無理だと思うと言っていたらしい。

 日が変わって翌日、今日から祭りの再開だ。
 起きた時にはもう既に外は賑やかだった。
 昨日のことは一部の人間しか知らない。
 だからこそ、こうしてまた楽しんでいるんだろう。

「さて、出発するか」
「今日はどこのお店に行きます?」
「いや、今日はもう出発する。アロスト樹林国へ向かうぞ」
「えええぇぇ!!」

 朝からよくそんな大きな声を出せるな。
 一応、俺はこれでも昨日までは患者扱いだったんだぞ。
 頭に響く…。

「何でですか!?もっと楽しみましょうよ!!」
「元々この国に来た理由は栞に会うためだ。祭りはそのついで。それにもう楽しんだだろ?」
「まだ遊び足りないです…」

 メアリは子供ののようにぷくーっと頬を膨らませた。
 というか、そろそろいい年なんだから別にいいだろ…。

「…はぁ。分かりました」
「ん?意外だな」
「えっ?何がですか?」
「思ったよりあきらめが早いから。もっと駄々をこねると思っていた」

 既に駄々をこねているが、もっとこうジタバタするかと。

「そんなことしませんよ!確かにもうけっこう遊びましたし、ヒビにこれ以上迷惑をかけたくないなあって思っただけです」
「なんか、俺が駄々をこねているように聞こえるんだが」
「そうですか?」

 悪意があるのか、それともただの天然なのか…。
 まあ、素直について来てくれるならありがたい。

 いや、どこか様子が違うから何かあるな。
 何故か楽しみにしているようだし、何か企んでいるのか?

「どうしました?」
「何か企んでいないか?」
「何も企んでいないですよ?ただ単にアロスト樹林国に一度だけでも行ってみたかったんですよ!」

 グイっと顔を寄せてくる。
 楽しみなのはわかったが、近い近い。
 肩を掴んで押し返した。

「何か美味しいものでもあるのか?」
「美味しいものはあると思いますけど、何よりも動物とふれあいが出来るんです!」

 動物園やカフェみたいなものだろうか。
 娯楽としてあってもおかしくはないが、それぐらいなら他の国でもありそうなものだ。

「アロスト樹林国は空気がきれいで餌も豊富。動物にとって環境がとても良いところです。住む人たちは弱い動物たちを保護し、狂暴な動物から守っているそうですよ」
「その弱い動物たちとふれあいが出来るということか」
「よくわかりましたね」

 なるほど、だから龍一がいるのか。
 そういうところ好きそうだもんなぁ。

「話は歩きながらしよう。とりあえず出発だ」
「はい!」

 俺たちは祭りを横目に国から出ていった。
 早めに出発したほうだが、門番のうわさ話によると栞はもっと早めに出たらしい。
 無事に辿り着くことを願おう。

「方角はこちらの方です。少し道が悪いそうなので、歩いて6日かかるかもしれないそうです」
「それは何だ?」
「地図です。最初は高かったんですが、安く売ってくれました」

 容姿がいいから安くってか。
 俺が買おうとしたら逆に高くされそうな店だな。

 地図を見せてもらったが、何がどうなっているのか全然分からない。
 勉強しないと分からないぐらいで、そもそも俺たちがどこにいるかも分からない。

「よくこんなのが分かるな」
「実はこれ、詳しく描かれている地図なんです。ですから、勉強をしないと分からない描き方をされています」
「だから俺には分からないってことか」

 どうやら当たっていたようだ。
 地図は国にとって大切な道具の一つだからな。
 これを売っていた店の人は地図が分からなかったのだろう。
 だから売ってぼったくろうとしたが、そこにメアリが現れたと。
 入手ルートは…深く考えないでおこう。

 俺たちはアロスト樹林国へ向かって歩き始めた。

「リュウイチ様について教えてもらってもいいですか?」
「随分と急だな。そんなに気になるか?」
「はい。ヒビが苦手と言っていたので」

 余計なことを言ってしまったな。
 まあどうせ会うことになるだろうし、先に言っておいてもいいだろう。

「一言で言えば漫画みたいなやつだ」
「マンガ?」
「あー、つまり物語に出てきそうな人物だ」
「素晴らしい人じゃないですか!」

 ダメだ、こういってしまうと違う印象になってしまう。

「いや違うんだ。えーっと、どう説明すればいいんだ…」
「大丈夫ですよ。どんな王子様みたいな人でも、私はヒビを選びますから」
「そうじゃなくて…」

 嬉しいけど、そうじゃない。
 このままだと実際に会った時にイメージが崩れてしまう。

「ヤンキーって分かるか?」
「いえ、知りません」
「これもダメか…。そうだな、すぐにケンカをしたりするやつだ」
「ええっ!?」

 印象ががらりと変わっただろう。
 ここまでかみ砕いて言わないと伝わらないのは面倒くさいな。

「だが、動物に関しては人一倍に熱がある」
「んー…?ケンカはするけど、動物に優しい…?」
「動物に優しいが、動物を傷つけたりするとそいつを容赦なく殴ったりする」
「やさ…しい…?」

 優しいけど優しくない。
 度が過ぎているというか、愛が重いというか。

「普段は大人しいんだが、自分の身より動物が好きな奴なんだ」
「へぇー。少し怖そうです」
「見た目は怖くないから大丈夫だ。ただ、怒った時は手を付けられない」
「なるほど、分かりました。慎重に行動します」

 それが一番いいだろう。
 俺も怒らせると面倒だから刺激を与えたくない。

「ああ!だからアロスト樹林国にいるわけですね!」
「そういうことだ。『動物がいる=龍一の好きな場所』だからな」

 噂に聞いたが、近場のネコカフェは常連。
 動物園は年間パスポートを何種類か持ってると聞いたことがある。
 それが本当なら毎日見に行っていたのだろうか。

「楽しみですけど、少し緊張感が出てきました…」
「まだ早いぞ。歩き始めて1日も経っていないんだから」

 移動を始めて1日目。
 俺たちの足は少し重くなった。
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