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遅れましたが、投稿はしますよー。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「んっ…」
「ヒビ?大丈夫そう?」
「ああ。ここは?」
「昨日泊った宿です。お店の人は避難していないですが…」
どれぐらい寝てたのだろうか。
日の傾きからして、数時間ぐらいだろう。
流石はこの身体、ケガ以外の疲労でも数時間で治ってしまうのか。
「あっ!まだあまり動かないでください」
「大丈夫だ。俺が大丈夫なのは知ってるだろう?」
「それでもだめです!シオリさんが戻ってくるまで大人しくしててください」
起きようとしたが、メアリに押し戻されてしまった。
「栞はどこか行っているのか?」
「国王様に知らせに行ったそうです。そろそろ避難も解除されるそうですよ」
「そうか。脅威は去ったようようだしな」
それなら戻ってくるまで待っていよう。
勝手に動いたらまたメアリに言われそうだし。
「メアリの方は大丈夫か?」
「大丈夫です。ケガは何一つも、ほら!」
バッと両手を広げるが、分かりづらい。
まあ元気みたいだし、栞がすぐ助けていたから本当に大丈夫だろう。
自分の身より心配だったからな。
「遅れてごめん――って、何してるの?」
「メアリにケガがないか聞いていたんだ」
「…まずは自分の心配をした方がいいと思うけどね」
そう言われても、もう治っているからなあ。
何か大袈裟かのように包帯を巻いているけど邪魔でしかない。
…っていうか、一番ケガを負っているはずの腹に一切ないんだが。
気になってメアリの方を向いたら、赤くなって目を逸らされた。
まさかと思うが、恥ずかしくてやらなかったのか?
包帯を巻いてくれたのはうれしいが、一番ケガをしていそうなところを巻いてもらわないと意味がない。
「俺は大丈夫だ。とりあえず今の状況を聞きたい」
「分かったわ。簡単に言えば、避難警告は解除されてみんなが帰り始めている。だけど祭りの再開は明日からで、警備がさらに厳しくなるみたい。もちろん祭りは1日延長してね」
「ということは、脅威は蒼一朗だけだったってことか」
「あと角魔人ね。追手が来る気配もないし、来たとしても部隊がすぐに到着するようにしているわ」
あれからもう数時間は経っている。
追手が来るとしても、すでに遅すぎるだろう。
「今起きているのはこれだけよ。何か聞きたいことはあるかしら?」
「今のところはない。が、他で聞きたいことはある」
「私もよ。まずはそちらからどうぞ」
「そうさせてもらう。何故グロウのみんなを置いて行った?」
まずはこの理由を知りたい。
栞を無理やり連れて行ったのは分かったが、腑に落ちないところがある。
あのカロルと一緒にいたサザンをも倒す実力。
人間や獣人の軍でも手を焼くほどの実力者で間違いがない。
それなら、グロウの生徒を人質にされても守り抜けることが出来そうなものだ。
「そうね。あの子たちには悲しい思いをさせてしまったわ。でも連れて行くわけにはいかなかったのよ」
「何故だ?あの場所が大切だったからか?」
「それもそうだけど、大きな理由はあるわ。14人の英雄に裏切り者がいるから、という噂を聞かされたからよ」
俺たちクラスメイトに裏切り者がいるという噂。
現にその中の一人、蒼一朗が敵となって俺たちの前に現れた。
噂は本当だったということだ。
「私ひとりでどうにか出来るかも怪しかったの。だから、あの子たちに危険な場所へ連れて行くわけにはいかなかったのよ」
「なら、せめて時々顔を見せに行ったら良かったんじゃないか?」
「……」
栞は黙って下を向いてしまった。
「あいつらどうしてたと思う?あいつらはな――」
「ヒビ、それ以上は――」
「お前に会いたくて俺たちの前で泣いていたんだぞ!どんな思いをして過ごしていたと思っているんだ!」
「分かっているわ!分かっていたけど、私のせいで巻き込んでしまうと思って怖くなってしまったのよ…」
栞の目からは涙がこぼれていた。
大切に思っていたけど会いに行けない。
辛いのは栞も同じだったんだ。
「悪い。言い過ぎた」
「ううん。私も悪いことをしていたから…」
その瞬間、頭に痛みが走った。
誰かに殴られた、というよりはチョップされた痛み。
相手はすぐわかった。
「な、なんだよ」
「…女の子を泣かせるなんて最低ですよ。それに言い過ぎです」
「わ、悪かったって…」
メアリは怒っていた。
止めに入ったのにも関わらず、話し続けた俺が悪い。
「本当に反省してますか?」
「してるって…」
…なんかいつの間にか立場が逆転しているような。
栞が落ち着くまで待つと、今度は栞から質問が飛んできた。
「響風くんはどこかに隠れていたの?」
「あー、それについてはな」
封印されていたこと、解かれたときに起きていたこと。
そしてここまで来る途中までを話した。
「ということは、漣くんはまだユガの町に?」
「まだいるぞ。グロウのみんなで行ってみたらどうだ?」
「そうね。漣くんがいるなら、グロウのみんなと一緒にそちらへ移り住もうかな」
「部隊長の方はいいのか?」
「大丈夫よ。蒼一朗の目的は私たち。ここにいるよりは、同じ強さを持っている仲間の近くの方が安全だわ」
確かにそっちの方も安全かもしれないが、ユウのそばよりはこっちの部隊の方が強そうだが…。
まあ人は見た目によらないともいうし、何よりモミジがいるならグロウのみんなも喜びそうだ。
「響風くんはこれからどうするの?」
「まだ旅を続けるよ。誰かどこにいるか情報をしらないか?」
「確か西野くんがアロスト樹林国にいるって聞いたわよ」
「げっ。よりによって龍一か…」
アロスト樹林国は元々行くつもりだった国。
森の種族の大国だったっけか。
「どういう人なんですか?」
「西野龍一くんって言う人なんだけど」
「まあ会ってみればわかるよ。俺は苦手なタイプなんだが…」
「???」
次の目的地、行きたくないなあ…。
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「んっ…」
「ヒビ?大丈夫そう?」
「ああ。ここは?」
「昨日泊った宿です。お店の人は避難していないですが…」
どれぐらい寝てたのだろうか。
日の傾きからして、数時間ぐらいだろう。
流石はこの身体、ケガ以外の疲労でも数時間で治ってしまうのか。
「あっ!まだあまり動かないでください」
「大丈夫だ。俺が大丈夫なのは知ってるだろう?」
「それでもだめです!シオリさんが戻ってくるまで大人しくしててください」
起きようとしたが、メアリに押し戻されてしまった。
「栞はどこか行っているのか?」
「国王様に知らせに行ったそうです。そろそろ避難も解除されるそうですよ」
「そうか。脅威は去ったようようだしな」
それなら戻ってくるまで待っていよう。
勝手に動いたらまたメアリに言われそうだし。
「メアリの方は大丈夫か?」
「大丈夫です。ケガは何一つも、ほら!」
バッと両手を広げるが、分かりづらい。
まあ元気みたいだし、栞がすぐ助けていたから本当に大丈夫だろう。
自分の身より心配だったからな。
「遅れてごめん――って、何してるの?」
「メアリにケガがないか聞いていたんだ」
「…まずは自分の心配をした方がいいと思うけどね」
そう言われても、もう治っているからなあ。
何か大袈裟かのように包帯を巻いているけど邪魔でしかない。
…っていうか、一番ケガを負っているはずの腹に一切ないんだが。
気になってメアリの方を向いたら、赤くなって目を逸らされた。
まさかと思うが、恥ずかしくてやらなかったのか?
包帯を巻いてくれたのはうれしいが、一番ケガをしていそうなところを巻いてもらわないと意味がない。
「俺は大丈夫だ。とりあえず今の状況を聞きたい」
「分かったわ。簡単に言えば、避難警告は解除されてみんなが帰り始めている。だけど祭りの再開は明日からで、警備がさらに厳しくなるみたい。もちろん祭りは1日延長してね」
「ということは、脅威は蒼一朗だけだったってことか」
「あと角魔人ね。追手が来る気配もないし、来たとしても部隊がすぐに到着するようにしているわ」
あれからもう数時間は経っている。
追手が来るとしても、すでに遅すぎるだろう。
「今起きているのはこれだけよ。何か聞きたいことはあるかしら?」
「今のところはない。が、他で聞きたいことはある」
「私もよ。まずはそちらからどうぞ」
「そうさせてもらう。何故グロウのみんなを置いて行った?」
まずはこの理由を知りたい。
栞を無理やり連れて行ったのは分かったが、腑に落ちないところがある。
あのカロルと一緒にいたサザンをも倒す実力。
人間や獣人の軍でも手を焼くほどの実力者で間違いがない。
それなら、グロウの生徒を人質にされても守り抜けることが出来そうなものだ。
「そうね。あの子たちには悲しい思いをさせてしまったわ。でも連れて行くわけにはいかなかったのよ」
「何故だ?あの場所が大切だったからか?」
「それもそうだけど、大きな理由はあるわ。14人の英雄に裏切り者がいるから、という噂を聞かされたからよ」
俺たちクラスメイトに裏切り者がいるという噂。
現にその中の一人、蒼一朗が敵となって俺たちの前に現れた。
噂は本当だったということだ。
「私ひとりでどうにか出来るかも怪しかったの。だから、あの子たちに危険な場所へ連れて行くわけにはいかなかったのよ」
「なら、せめて時々顔を見せに行ったら良かったんじゃないか?」
「……」
栞は黙って下を向いてしまった。
「あいつらどうしてたと思う?あいつらはな――」
「ヒビ、それ以上は――」
「お前に会いたくて俺たちの前で泣いていたんだぞ!どんな思いをして過ごしていたと思っているんだ!」
「分かっているわ!分かっていたけど、私のせいで巻き込んでしまうと思って怖くなってしまったのよ…」
栞の目からは涙がこぼれていた。
大切に思っていたけど会いに行けない。
辛いのは栞も同じだったんだ。
「悪い。言い過ぎた」
「ううん。私も悪いことをしていたから…」
その瞬間、頭に痛みが走った。
誰かに殴られた、というよりはチョップされた痛み。
相手はすぐわかった。
「な、なんだよ」
「…女の子を泣かせるなんて最低ですよ。それに言い過ぎです」
「わ、悪かったって…」
メアリは怒っていた。
止めに入ったのにも関わらず、話し続けた俺が悪い。
「本当に反省してますか?」
「してるって…」
…なんかいつの間にか立場が逆転しているような。
栞が落ち着くまで待つと、今度は栞から質問が飛んできた。
「響風くんはどこかに隠れていたの?」
「あー、それについてはな」
封印されていたこと、解かれたときに起きていたこと。
そしてここまで来る途中までを話した。
「ということは、漣くんはまだユガの町に?」
「まだいるぞ。グロウのみんなで行ってみたらどうだ?」
「そうね。漣くんがいるなら、グロウのみんなと一緒にそちらへ移り住もうかな」
「部隊長の方はいいのか?」
「大丈夫よ。蒼一朗の目的は私たち。ここにいるよりは、同じ強さを持っている仲間の近くの方が安全だわ」
確かにそっちの方も安全かもしれないが、ユウのそばよりはこっちの部隊の方が強そうだが…。
まあ人は見た目によらないともいうし、何よりモミジがいるならグロウのみんなも喜びそうだ。
「響風くんはこれからどうするの?」
「まだ旅を続けるよ。誰かどこにいるか情報をしらないか?」
「確か西野くんがアロスト樹林国にいるって聞いたわよ」
「げっ。よりによって龍一か…」
アロスト樹林国は元々行くつもりだった国。
森の種族の大国だったっけか。
「どういう人なんですか?」
「西野龍一くんって言う人なんだけど」
「まあ会ってみればわかるよ。俺は苦手なタイプなんだが…」
「???」
次の目的地、行きたくないなあ…。
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