異世界で封印されていました。

銀狐

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「蒼一朗、てめえがカロルの…」
「そうだよ。父親、と言ってもいいかな」

 よりによってこいつがボスかよ。
 蒼一朗は清水に次ぐ成績上位者。
 俺とは学校の時から何から何かまで圧倒的な差があった。

 蒼一朗はクラスのみんなとも差別なく話す、人当たりがいいやつだ。
 だが、どこかつかめない部分が時々感じ取られた。
 証拠なんてなく、ただの勘でしかない。

「そんな勘が当たっていたのか」
「ん?何か言ったかな?」
「何でもねぇよ…」
「そう?なら早く始めた方がいいよ。時間は無限にあるわけではないからね」

 蒼一朗はメアリの方を向いた。
 時間はない、早くカロルを倒さなければ――

「先手必勝だね」

 メアリの方を向いていたら、カロルが隙を見て攻撃をしてくる。
 戦いはもう始まってると言いたいのだろうが、そんなことは俺も分かっている。

ファイアー
「ん?隠していたのか…」
「お前のことだ。何をするか大体予測できただけのこと」

 恐らく口を凍らせた時と同じように氷魔法を使う。
 それならあらかじめ溶かすか、もしくは凍らせられないようにしておけばいい。

 だが今はカロルより蒼一朗の方が気になる。
 これで蒼一朗も入ってきたらどうなるか…。

「安心しなよ。ボスは手を出さないからさ。今日は見ているだけだよ」
「…そうかよ」

 今はこの言葉を信じておこう。
 それなら気兼ねなくカロルと戦える。

火炎世界ヒートワールド
「おっと、氷対策をあっさりされちゃったなあ…」

 そりゃあするに決まっている。
 今まで何回も氷の魔法を使っているということが分かれば、それを封じるのが一番。
 その上、火の魔法で溶けると分かれば周りを火の海にすればいい。

「こりゃあ困ったねぇ…。火が邪魔だ」
「ならすぐ戦いが終わるだけだ。ファイアー
「じゃあ火を消そうか。強雨パワーレイン

 カロルが魔法を使うと雲が出来始め、雨が降り始める。
 しかも勢いが強く、雨に当たるだけで肌が痛い。
 長く雨の中にいたら、全身血まみれになるほどだ。

「…お前、本当にユミルと同じ角魔人ハーフデビルなのか?」
「それはどういう意味かな?」
「強さが違いすぎるという話だ。本当に同じ立場だったのか?」

 ユミルは油断をしていただろうが、戦闘能力を考えればカロルの方が断然上。
 カロルの能力が何かまでは分からないものの、魔法だけで強さに差が出ている。

「生まれたのは多少時期にばらつきはあったけど、立場は同じ。強いて言うなら俺がユミルに魔法を教えたぐらいだよ」
「なるほどな。師匠と弟子というわけか」
「まあ、そんな感じではあるけど昔の話だよ」

 俺を一度殺したユミルの師匠であるカロル。
 一回も死なずに勝てるのか?
 いや、まだあの技が残っているからまだ分からないな…。

「話もいいけどさ、このまま話し続けるとタイムアウトの上に出血多量になって死んじゃうよ?」
「それもそうだな。なら…サンダー

 雨が降っているなら使わせてもらうだけだ。
 雲もあって俺がつくった雲は見えない。
 攻撃を仕掛けるのにちょうどいい環境だった。

「いっ…てぇ…」
「嘘だろ…。雷をまともに受けて生きているのかよ」
「俺はどうも特別製なもののようでね。魔法の抵抗はあるけど、痛いものは痛いんだよ」

 その抵抗の影響なのか、カロルの目からは血の涙が流れる。
 ケガは浅いものの、ダメージは確実にあるはずだ。
 だが、その抵抗というのがどれぐらいの種類もあるかが話だな。

「ここからが俺の番だ。同じ痛みを味わいな。反射リバース
「くっ!シールド

 盾を使って守ろうとしたが、威力があって貫通する。
 少しは軽減できただろうが、それでも威力は十分ある。
 普通の人だったら即死していておかしくはないな。

「へぇ、人間って結構脆いんだけど君はけっこう頑丈だね」
「お前が特別製であるように、俺も特別製なんでね」
「ふーん、でもギリギリみたいだよ」

 カロルの言う通り、今はけっこうギリギリ。
 いっそのこと、一回死んだ方が楽だったかもしれないほどだ。
 生半可に残るのが一番つらいんだよなあ。

「しかし妙だな。反射リバースは俺も知っているが、実際に使うと威力は受けた魔法より下がる。なのに今は逆に上がっていた」
「さあ?俺がよく使っていたからじゃないかな?もしくはユミルの怨念かもよ」

 怨念だったらそれはそれで笑い話に…なるわけではないな。
 話を濁したということは、何か隠しているのか?

「さあさあ、次に行こうじゃないか。岩拘束ロック
「今度は足を止めるか。インパクト
「やっぱりすぐ壊すよね。だけど…反射リバース
「なっ!?」

 一般的に反射リバースは利用者自身に当たってようやく使える魔法。
 普通、魔法は避けるか防ぐからこの魔法を覚える者は少ないはず。
 そんな使うのが難しい魔法をあえて使っているカロルは変な奴だとは思っていた。

 だが、その答えが今わかった。

「お前がつくった魔法でも、反射リバースが使えるのか…」
「正解。しかも、巻き戻しワンモア
「くそっ!」

 同じ魔法をさらに繰り返すか!
 ということは、致命傷になる魔法を与えれば与えるほど俺が不利になるということか?

「なんという、チートやろうなんだよ」
「これが俺の強さだよ」

――――――――――――――――――

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投稿日前日である日曜日が休日ではなくなったため、投稿する曜日変更させてください。

『月曜日から、木曜日に変更させていただきます』

今月いっぱいは木曜日になりますが、来月から月曜日に戻すかもしれません。
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