異世界で封印されていました。

銀狐

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お昼当たりに『作品情報』の方へ書きましたが、帰省時に渋滞にはまってしまい遅れてしまいました。
申し訳ございませんm(_ _)m

――――――――――――――――――――――――――――――

 宿を探し回り5分。
 高い宿も何件か埋まっていたほど人が多い。
 ようやく見つけたのは、高い宿の中でも相当高そうな宿。

「こちらは1部屋1泊、金貨1枚になります」
「はい。これでいいですか?」
「ではご案内いたします」

 今回泊った宿は金貨1枚。
 一般的な宿が銀貨1枚で、安いと銅貨6、7枚。
 10枚でワンランク上に上がるから、一般的な宿の10倍高いというわけだ。

 2人泊れると聞いてビジネスホテルなんかを想像していたが、着いた部屋はそんなことはなくとても広い。
 一般的なホテルに似ていて、トイレもシャワーもある。
 つくりが日本そっくり…って、これも誰かが広めたのだろうか。

 窓からは外へ出られるベランダもあり、贅沢な部屋で最高だ。
 だけど問題がひとつだけある。

 何でこんなに広いのに、ベッドが1つしかないんだろう。
 しかも王様とかが寝そうな大きいやつ。

「うーん…」
「眠いのか?」
「はい…」
「なら先に寝てていいぞ。俺は明日のことで、考えなくてはならないことがあるから」

 たくさん遊んで、たくさんはしゃいで、たくさん寝る。
 たしかにまだ子供だが、少し幼い子供と同レベルな気が…。

 メアリが寝ている間、俺はさっさとシャワーを浴びてベランダに出ている。
 寒い季節でユガの町のように寒さ対策まではなかったが、自分の空間をつくって外に出ている。
 店はほとんど閉じているが、夜通しでも開いている店がちらほらあった。

「大変そうだな」

 周りを楽しむのもいいが、それより今は明日のための対策だ。

 カロルのあの魔法、氷系の魔法だったな。
 反発させるよりも、どう避ける方が無難な気がする。
 バルのように空中に飛んで戦うのもいいかもしれない。
 ただ、そうなった場合は俺の体力次第になるからなあ。

「夜はまだ長いし、考える時間はまだある」

 何よりメアリの寝ている姿を見ると、自分が危なくなる気がした。
 だからこうしてベランダに出ているんだし。

*

「あれ?ヒビくん外に出ているよ?」
「俺に言われても知らん。姫でも守っているんじゃないのか?」
「そうかもね。中から攻めても王国の軍がすぐにやってくるから、攻めやすい外が一番危険だからね」

 遠くの屋根の上にいるサザンとカロル。
 カロルは魔法を使い、遠くにいるヒビを見ている。

「それでボスはなんだって?」
「人間のままでいて、手を出すなと」
「じゃあヒビくんがユミルを倒したのかー」

 楽しそうに笑うカロル。
 しかし、その笑顔は少し不気味だ。

「ねえ、今殺しに行っちゃだめ?」
「聞いていたか?手を出すな。それにユミルを殺したやつだ。そう簡単に倒せないだろう」
「確かにそうだね」

 笑顔だったカロルの顔は変わり、真剣な顔になる。

(ならどうしてやろう?闘技場は殺すことは出来ない。王国には14人の英雄の1人がいるから、そんなことをしたら自分の身が危うくなるだけだ。なら――)

「どうした?」
「ん?別に何でもないよ」

 カロルは立ち上がり、屋根から降りる。
 続けてサザンも屋根から降りた。

(なら“遊べる場所”をつくればいいんだ)

 カロルは一番と言っていい笑った顔をしている。
 その顔は悪魔そのものと言っても過言ではなかった。

*

「ん?いつの間にベッドに?」

 翌朝、起きたら俺はベッドの上にいた。
 眠くて眠くて知らずのうちに動いていたのか?

「時間は…大丈夫か。まだ朝早い」

 身体を起こし周りを見ると、メアリがいない。
 先に行ったかと思ったが、シャワーがある部屋から音が聞こえる。
 どこかにいなくなったなら一大事だが、いるのが分かったならもう少し寝ておくか。
 すっかりと、よく寝るようになったなあ。

「あれ?今起きていた気がしたんだけど」

 メアリが出て来るときにはヒビはもう寝ていた。
 そんなヒビにメアリは近づく。

「起きているときはかっこよく振舞っているけど、寝ているときはどっちかというと可愛い、かな?」

 見た目は高校生のまま。
 生きている時間は違うが、見た目から考えれば同い年だ。

「すぅ…すぅ…」
「ふふっ。よく寝ている。あっ!」

 ヒビは腕を出して寝ている。
 そして手には指輪がついたままだ。

 メアリは自分の手についている指輪を見る。
 嬉しそうにほほ笑み、ヒビの頬へとキスをした。

「好きだよ。ヒビ」

*

「…ん?」
「あ、おはよう」
「おはよう」
「そろそろ時間だから起きた方がいいよ?」

 自然と横に座っているが、何をしていたんだろうか。
 俺の寝顔を見ていた、なんて自意識過剰な気がするな。

「どうした?」
「いえ、何でもないですよ?」

 ニヤニヤしていて何か顔に書いたかと思ったが、書くものなんて部屋にはない。
 何をニヤニヤしているのか聞いたが、答えてはくれなかった。
 だけど何故かすごく嬉しそうだ。

 準備を済ませ、闘技場へと向かう。
 昨日の夜考えたことをやれば大丈夫だろう。

「メアリはどうするんだ?」
「選手の付き添いは専用の席があるのでそこから見ます」
「ほう、どのへんなんだ?」
「ドーム状の一番近い席です。どこかまでは分かりませんけど」

 そうなると特等席か。
 参加者以外にも、ドーム状全体に人が埋まるほど観客は多い。
 つまり、メアリがいるところは特等席ということだ。

 メアリとここで一旦分けれ、闘技場の中に入ると人がもうけっこういた。
 獣人に人間に、あれはエルフか?
 合計で200人ぐらいもいる。
 そこから10人になるまでのバトルロイアルをするとなると、どれぐらいかかるんだ?

 さて、肝心のシオリは…いるな。
 国王のための特別な場所で、国王の後ろで控えている。
 にしても、随分と怖い顔をしているな。
 何かあったのか?

「皆さん!お待たせしました!!ただいまより、闘技場の開幕です!!」
「「「「「ウオオオオォォ!!!」」」」」

 観客からも闘技場内からも大きな声が響く。
 あまりの声の大きさで、周りが揺れているように見える。

「まずは国王陛下、フォーティス様からのお言葉です!」

 国王が立ち上がると、俺たち選手に向かって話し始めた。
 トカゲ、というより恐竜の獣人だ。
 見た目はおっとりとしていて、シオリを無理やり隊長にさせたのか疑うほどだ。

「えー、まずは参加者たちに言いたいことがある。今回、良い戦いをした者を軍へ向かい入れようと考えている。もちろん無理やりとは言わないが、入る場合はそれ相応の“モノ”を用意する」

 よくぬけぬけと言うもんだ。
 そこにいるシオリは無理やり引き入れたくせに。

「話は以上だ。皆、最後まで頑張りたまえ」

 また大きな声が響く。
 フォーティスは席へ着くと、司会は次へと話を移した。

「ではさっそく10人までのバトルロイヤルを始めます――が!ルールを忘れないこと!ではレディー…」

 周りは一旦静まり返る。
 選手たちは少しずつ聞く態勢から戦闘態勢へと変わっていく。

「ゴー!!」

 観客の大きな声と共に戦闘が始まった。
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