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俺たちは中へと戻ると、今度はバルとガルが飛びついてきた。
「闘技場で優勝できるって本当ですか!?」
「おそらく、だがな」
勝てる可能性は高いが、新しい攻撃手段も考えておきたい。
念のために覚えるだけだが、移動中にでも何か使えそうな魔法を考えておこう。
いつまでもワンパターンでは、いざという時に対処できなくなってしまうからな。
「ねえねえ!いつ先生を助けてくれるの?」
「闘技場が開催されるときだが、いつ開催するんだ?」
「2日後です。ここから歩いて2日かかりますので、すぐに出発しないと…」
歩いて行くとなると、ギリギリに到着ということになる。
それならいっそ、1日に絞って移動したほうが楽かもしれない。
万能立方体を使えば、歩いて2日の距離なんて1日だけで楽々に着く。
「いや、大丈夫だ。今日はこの町で泊る」
「大丈夫と言うならこれ以上言いませんが、それでしたらここに泊ってはどうでしょう?」
「せっかくだし、アンリさんのお言葉に甘えましょう」
「そうだな。そうするか」
「明日の朝に出発しようと考えている。みんなも行くか?」
「子供たちがいるので残念ですが…。まだバルとガルなら」
「すみません。グロウを離れるわけには行かないんです」
「一緒に行きたいのは山々ですが」
「いや構わない。今はお前たちが守っているんだろう?ならここを守っていてくれ」
アンリが強いのかは知らないが、2人がここを守っているんだ。
それならここを守っていてもらい、俺がシオリを連れてくればいい。
話は終わり、昼間は子供たちの相手をして、アンリはその間に食事を。
子供の世話は初めてで出来ないと思っていたが、メアリが上手くカバーしてくれた。
1日だけだが、ここで寝泊まりしていくわけだからお金を渡した。
シオリを連れ戻すからいいと言われたが、まだ連れ戻したわけではないからしっかりと渡しておく。
どう考えても5人の子供だけで暮らしていくのは辛いだろうから、少し多めで受け取ってもらった。
食後、1時間ぐらい経つとみんなはもう寝始めていて俺も寝ようかと思ったとき、メアリがいないことに気付いた。
さっきまで一緒にいたと思ったんだが、いつのまにか姿を消していたようだ。
「こんなところにいたのか」
「あっ、ばれちゃいましたか」
メアリはみんなに隠れて外で魔法の練習をしていたのだ。
俺とメアリは別の部屋を用意してもらったため、いなければどこか別のところにいるのはすぐに分かる。
遅かれ早かれ、見つけるために探し回っただろう。
「無理しなくていいぞ。少しずつ進めばいいんだから」
「でも、やっぱり私は魔法が苦手ですから…」
「…はぁ」
俺がため息をつくと、メアリは少しムッとした顔でこちらを向いた。
「嫌なら先に寝ていてください」
「そういうことではない。そういう時は俺を頼ってくれ」
「ですから、迷惑をかけたくなかったので――」
「光精霊の数を増やすとき、メアリは1つ1つ目で追っている。見てから動かすのではなく、自分の思い通りに動かすんだ」
「…そんなことが出来たら苦労しませんよ」
「試しに目をつぶってやってみろ」
言われた通りにやってみると、1発で思い通りに動かせていた。
次に目を開けて、さっきの通りにやらせてみる。
1、 2個うまく動きはしなかったが、先ほどに比べれば上達はしている。
「なんで…こんな簡単に…」
俺はただ、メアリの練習を横から見ていただけではない。
悪いところがあれば教えもするが、かといって何から何かまで全部言うわけではない。
自分で気づいてほしいところは言わないし、なかなか気づかなかったらそれっぽいヒントを渡す。
今回はこのままだと寝なさそうだから言ってしまったが。
俺が教えていると、メアリはいつの間にかムッとした顔が緩んでいた。
「…ふふっ」
「なんだ?」
「いえ。言い方が厳しくても、しっかりと私を見ていてくれたんですね」
その瞬間、俺はまた段々と熱くなっていく感じがした。
「ありがとうございます。うれしいですよ」
「なら今度からはしっかりと頼れ。俺も分からないことはメアリに聞くだろうし」
「はい!それじゃあ、もうちょっと練習に付き合ってくれますか?」
「もちろんだ」
そのあとも練習を続けていた。
俺は魔力をほぼ使っていないうえに、寝なくても大丈夫だから眠いという感覚がほぼない。
だが、メアリは俺とは違う。
疲れれば眠くなるし、すでに今、頭がカクンカクンと揺れている。
「おい、メアリ?」
「すぅ…すぅ…」
「ったく。眠いならしっかり寝るように言っておかないとな」
その時、左手の薬指にある指輪に目が行った。
いつも大切そうに付けていて、寝るときも外そうとはしない。
さっきメアリがいなくて探し回っていた時、不安な気持ちでいっぱいになっていた。
最初は何とも思わなかったのに、こんな短時間で俺の気持ちが変わっていっている。
本当に俺は、メアリのことが好きなんだな。
「ずっと封印されて長く生きていても、俺はまだ子供なんだな。メアリのことを考えると、他が何も見えなくなりそうだ」
ここだと体が冷えてしまうため、俺はメアリを持ち上げて部屋へと連れて行った。
風邪をひかないように掛けるものもしっかりと。
翌日。
俺もいつのまにか寝てしまっていたようだ。
どうやら、また寝ないと駄目な体に戻ってしまったようだな。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
「礼はいい。だが、無理だけはしないこと」
「はい!」
朝から元気な返事をするメアリ。
その顔は嬉しそうにほほ笑んでいる。
叱られて喜んでいるわけではなく、心配されているから嬉しいんだろう。
「闘技場で優勝できるって本当ですか!?」
「おそらく、だがな」
勝てる可能性は高いが、新しい攻撃手段も考えておきたい。
念のために覚えるだけだが、移動中にでも何か使えそうな魔法を考えておこう。
いつまでもワンパターンでは、いざという時に対処できなくなってしまうからな。
「ねえねえ!いつ先生を助けてくれるの?」
「闘技場が開催されるときだが、いつ開催するんだ?」
「2日後です。ここから歩いて2日かかりますので、すぐに出発しないと…」
歩いて行くとなると、ギリギリに到着ということになる。
それならいっそ、1日に絞って移動したほうが楽かもしれない。
万能立方体を使えば、歩いて2日の距離なんて1日だけで楽々に着く。
「いや、大丈夫だ。今日はこの町で泊る」
「大丈夫と言うならこれ以上言いませんが、それでしたらここに泊ってはどうでしょう?」
「せっかくだし、アンリさんのお言葉に甘えましょう」
「そうだな。そうするか」
「明日の朝に出発しようと考えている。みんなも行くか?」
「子供たちがいるので残念ですが…。まだバルとガルなら」
「すみません。グロウを離れるわけには行かないんです」
「一緒に行きたいのは山々ですが」
「いや構わない。今はお前たちが守っているんだろう?ならここを守っていてくれ」
アンリが強いのかは知らないが、2人がここを守っているんだ。
それならここを守っていてもらい、俺がシオリを連れてくればいい。
話は終わり、昼間は子供たちの相手をして、アンリはその間に食事を。
子供の世話は初めてで出来ないと思っていたが、メアリが上手くカバーしてくれた。
1日だけだが、ここで寝泊まりしていくわけだからお金を渡した。
シオリを連れ戻すからいいと言われたが、まだ連れ戻したわけではないからしっかりと渡しておく。
どう考えても5人の子供だけで暮らしていくのは辛いだろうから、少し多めで受け取ってもらった。
食後、1時間ぐらい経つとみんなはもう寝始めていて俺も寝ようかと思ったとき、メアリがいないことに気付いた。
さっきまで一緒にいたと思ったんだが、いつのまにか姿を消していたようだ。
「こんなところにいたのか」
「あっ、ばれちゃいましたか」
メアリはみんなに隠れて外で魔法の練習をしていたのだ。
俺とメアリは別の部屋を用意してもらったため、いなければどこか別のところにいるのはすぐに分かる。
遅かれ早かれ、見つけるために探し回っただろう。
「無理しなくていいぞ。少しずつ進めばいいんだから」
「でも、やっぱり私は魔法が苦手ですから…」
「…はぁ」
俺がため息をつくと、メアリは少しムッとした顔でこちらを向いた。
「嫌なら先に寝ていてください」
「そういうことではない。そういう時は俺を頼ってくれ」
「ですから、迷惑をかけたくなかったので――」
「光精霊の数を増やすとき、メアリは1つ1つ目で追っている。見てから動かすのではなく、自分の思い通りに動かすんだ」
「…そんなことが出来たら苦労しませんよ」
「試しに目をつぶってやってみろ」
言われた通りにやってみると、1発で思い通りに動かせていた。
次に目を開けて、さっきの通りにやらせてみる。
1、 2個うまく動きはしなかったが、先ほどに比べれば上達はしている。
「なんで…こんな簡単に…」
俺はただ、メアリの練習を横から見ていただけではない。
悪いところがあれば教えもするが、かといって何から何かまで全部言うわけではない。
自分で気づいてほしいところは言わないし、なかなか気づかなかったらそれっぽいヒントを渡す。
今回はこのままだと寝なさそうだから言ってしまったが。
俺が教えていると、メアリはいつの間にかムッとした顔が緩んでいた。
「…ふふっ」
「なんだ?」
「いえ。言い方が厳しくても、しっかりと私を見ていてくれたんですね」
その瞬間、俺はまた段々と熱くなっていく感じがした。
「ありがとうございます。うれしいですよ」
「なら今度からはしっかりと頼れ。俺も分からないことはメアリに聞くだろうし」
「はい!それじゃあ、もうちょっと練習に付き合ってくれますか?」
「もちろんだ」
そのあとも練習を続けていた。
俺は魔力をほぼ使っていないうえに、寝なくても大丈夫だから眠いという感覚がほぼない。
だが、メアリは俺とは違う。
疲れれば眠くなるし、すでに今、頭がカクンカクンと揺れている。
「おい、メアリ?」
「すぅ…すぅ…」
「ったく。眠いならしっかり寝るように言っておかないとな」
その時、左手の薬指にある指輪に目が行った。
いつも大切そうに付けていて、寝るときも外そうとはしない。
さっきメアリがいなくて探し回っていた時、不安な気持ちでいっぱいになっていた。
最初は何とも思わなかったのに、こんな短時間で俺の気持ちが変わっていっている。
本当に俺は、メアリのことが好きなんだな。
「ずっと封印されて長く生きていても、俺はまだ子供なんだな。メアリのことを考えると、他が何も見えなくなりそうだ」
ここだと体が冷えてしまうため、俺はメアリを持ち上げて部屋へと連れて行った。
風邪をひかないように掛けるものもしっかりと。
翌日。
俺もいつのまにか寝てしまっていたようだ。
どうやら、また寝ないと駄目な体に戻ってしまったようだな。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
「礼はいい。だが、無理だけはしないこと」
「はい!」
朝から元気な返事をするメアリ。
その顔は嬉しそうにほほ笑んでいる。
叱られて喜んでいるわけではなく、心配されているから嬉しいんだろう。
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