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「さて!着きましたよ!!」
「ここが湯葉の町か」
「“ユダ”です!何ですか、“ユバ”って…」
紛らわしい名前だから間違えて覚えてしまった。
“美味そうな町”ぐらいの認識で覚えていたからなあ。
ちなみにだが、ユダの町は“町”らしい町だった。
中に入って歩いているが、人もそこそこいる。
だが気になるのが、日本風の家が多く見られる。
「ここは…俺の故郷に似ているな」
「偶然ではないでしょうか?ここは“14人の英雄”の一人、サザナミ・ユウタロウ様がつくられた町ですから」
「なんだとっ!?」
漣祐太郎と言えば、明水学園2年1組のクラス生徒。
俺と同じクラスで、一緒にこちらの世界へ来た友達だ。
「えっ、ちょっ…」
「その話は本当か?ユウは生きているのか?」
「お、落ち着いてください。その、人が…」
「す、すまない」
クラスメイトの話が出てきたから場所を考えずに大声を出してしまった。
おまけに肩を強く掴んでしまったから、周りからは何か揉めているようにも見える。
「それで、ユウは生きているのか?」
「ご存知なんですか?でも今まで封印されていたのでは…」
「…そいつは俺と一緒にこっちの世界に来た友人だ」
「確かにヒビの話に出てきた人達かもとは思いました。でも、私が知っている14人で、その中にヒビの名前はないですよ?」
「俺は来てすぐに封印されたからな。俺を抜いて14人というわけだ。それに、俺以外は全員洗脳されていたから、死んだと言われていたかもしれない」
あの感覚は今でも覚えている。
それほど嫌な思い出なのだから。
「サザナミ様は現在でも生きています。それに洗脳はされていません」
「そうか。あの後解けたのか…」
「何より話によると、洗脳をしたのは何千年も前ですよね?そんなに続く魔法があるとは思えませんし」
今でも生きているのは不思議だが、洗脳が解けていたならまず一安心だ。
もしもまだ洗脳されていたままだとしたら、会話すら出来ない可能性もあったからな。
「ユウに会うことは出来るか?」
「出来るも何も、私の知り合いがサザナミ様なので」
これは都合のいいことだ。
封印から解放されて早々、同じ仲間と会えるのは大きいぞ。
「じゃあ会いに行きましょうか。ついて来てください」
「分かった」
それにしても、奥へ行くにつれて日本らしさが広がっている。
これは温泉街と言ったらいいのか?
町家と言えば良いのか、細かく再現されている。
「温泉がありそうな町だな」
「温泉もご存知でしたか。ここは温泉があるため、旅行先として有名なんですよ」
「やっぱりあったのか。本当に故郷へ帰って来た気分だ」
見続けても飽きないこの感覚、本当に好きだ。
建築に興味があるというわけではないが、建物を見ているだけでも落ち着く。
「着きました。ここがサザナミ様の家です」
「けっこう大きいな」
「領主様になりますからね」
大通りの突き当りに堂々と立っている大きな家。
この町を占めていると言わんばかりに建っている。
「すみませーん!」
「まるで大銭湯だな」
のれんが垂れ下がっており、誰でも入れるようになっている。
こんな警備でも大丈夫か心配だが、中は厳しくなっているのか?
そんなことを考えつつ中へ入ろうとした瞬間、後ろで何か動く音が聞こえた。
「動くな。動くならばすぐに刺す」
「動く気はない。だが、動くならもっと静かに動くことだな」
「なっ!?」
いきなり後ろから誰か来るような音が聞こえたから、すぐさま万能立方体を背後へ動かしておいた。
場所はもちろんすぐ倒せるように首と、拘束できるように手と足の計5個。
向こうは小刀と、動きやすさを重視した武器だ。
「モミジちゃん落ち着いて!大丈夫だから!その人は…」
「その人は?なんだ?」
「私の…」
「なんだ、はっきり言え」
メアリは右手で左手を撫でながらソワソワしている。
「私の…旦那様なんだから!!」
「…はぁ!?」
こうして言われると、妙に恥ずかしいというかなんというか。
モミジという子も驚いて俺の方を見る。
咄嗟に両手を後ろに隠してしまった。
「どうしたのヒビ?顔が真っ赤ですよ?」
「さ、寒いのが原因だろう!」
「そうなの?」
そんなことを考え始めてから顔が真っ赤になるのが自分でもわかるほど熱い。
「ふむ、メアリの旦那様とは申し訳ありません」
「わ、分かればいい」
素直に武器を下したから俺も万能立方体を退かすと、俺たちの前へと現れた。
さっきまで後ろにいたから見えなかったが、女の子だったのか。
いや、さっきモミジ“ちゃん”と言っていたからそりゃあそうか。
「初めまして。私はサザナミ様の護衛兼お世話係のモミジと言います」
「俺は響風光輝、ヒビでいい。それにしてもその耳は」
「はい、狐の耳です」
実際に見るのは初めてだな。
服は和服でこの狐耳。
うん、けっこう似合っている。
「それでどのような用件で?」
「ユウに会えないか?」
「ユウ、と言うとサザナミ様でしょうか?」
「ああ、出来れば早めに会いたいのだが」
「かしこまりました。それではこちらへどうぞ。ご案内いたします」
中へ入るとそこは日本の旅館そのものだった。
建物の内部は全て木でできており、途中には中庭。
床や天井まで全て木で再現されている。
「ユウは何故この家、この町をつくったんだ?」
「14人の英雄が帰って来た際に、ゆっくりできる場所をつくりたいという理由でつくられました」
「なるほどな。だから温泉か」
温泉があればゆっくりできるし、疲れもとれる。
おまけにこの旅館のつくりだと、まるで旅行にきた気分になるから素晴らしい。
日本人らしいところと言えば日本人らしいところだ。
「ここが湯葉の町か」
「“ユダ”です!何ですか、“ユバ”って…」
紛らわしい名前だから間違えて覚えてしまった。
“美味そうな町”ぐらいの認識で覚えていたからなあ。
ちなみにだが、ユダの町は“町”らしい町だった。
中に入って歩いているが、人もそこそこいる。
だが気になるのが、日本風の家が多く見られる。
「ここは…俺の故郷に似ているな」
「偶然ではないでしょうか?ここは“14人の英雄”の一人、サザナミ・ユウタロウ様がつくられた町ですから」
「なんだとっ!?」
漣祐太郎と言えば、明水学園2年1組のクラス生徒。
俺と同じクラスで、一緒にこちらの世界へ来た友達だ。
「えっ、ちょっ…」
「その話は本当か?ユウは生きているのか?」
「お、落ち着いてください。その、人が…」
「す、すまない」
クラスメイトの話が出てきたから場所を考えずに大声を出してしまった。
おまけに肩を強く掴んでしまったから、周りからは何か揉めているようにも見える。
「それで、ユウは生きているのか?」
「ご存知なんですか?でも今まで封印されていたのでは…」
「…そいつは俺と一緒にこっちの世界に来た友人だ」
「確かにヒビの話に出てきた人達かもとは思いました。でも、私が知っている14人で、その中にヒビの名前はないですよ?」
「俺は来てすぐに封印されたからな。俺を抜いて14人というわけだ。それに、俺以外は全員洗脳されていたから、死んだと言われていたかもしれない」
あの感覚は今でも覚えている。
それほど嫌な思い出なのだから。
「サザナミ様は現在でも生きています。それに洗脳はされていません」
「そうか。あの後解けたのか…」
「何より話によると、洗脳をしたのは何千年も前ですよね?そんなに続く魔法があるとは思えませんし」
今でも生きているのは不思議だが、洗脳が解けていたならまず一安心だ。
もしもまだ洗脳されていたままだとしたら、会話すら出来ない可能性もあったからな。
「ユウに会うことは出来るか?」
「出来るも何も、私の知り合いがサザナミ様なので」
これは都合のいいことだ。
封印から解放されて早々、同じ仲間と会えるのは大きいぞ。
「じゃあ会いに行きましょうか。ついて来てください」
「分かった」
それにしても、奥へ行くにつれて日本らしさが広がっている。
これは温泉街と言ったらいいのか?
町家と言えば良いのか、細かく再現されている。
「温泉がありそうな町だな」
「温泉もご存知でしたか。ここは温泉があるため、旅行先として有名なんですよ」
「やっぱりあったのか。本当に故郷へ帰って来た気分だ」
見続けても飽きないこの感覚、本当に好きだ。
建築に興味があるというわけではないが、建物を見ているだけでも落ち着く。
「着きました。ここがサザナミ様の家です」
「けっこう大きいな」
「領主様になりますからね」
大通りの突き当りに堂々と立っている大きな家。
この町を占めていると言わんばかりに建っている。
「すみませーん!」
「まるで大銭湯だな」
のれんが垂れ下がっており、誰でも入れるようになっている。
こんな警備でも大丈夫か心配だが、中は厳しくなっているのか?
そんなことを考えつつ中へ入ろうとした瞬間、後ろで何か動く音が聞こえた。
「動くな。動くならばすぐに刺す」
「動く気はない。だが、動くならもっと静かに動くことだな」
「なっ!?」
いきなり後ろから誰か来るような音が聞こえたから、すぐさま万能立方体を背後へ動かしておいた。
場所はもちろんすぐ倒せるように首と、拘束できるように手と足の計5個。
向こうは小刀と、動きやすさを重視した武器だ。
「モミジちゃん落ち着いて!大丈夫だから!その人は…」
「その人は?なんだ?」
「私の…」
「なんだ、はっきり言え」
メアリは右手で左手を撫でながらソワソワしている。
「私の…旦那様なんだから!!」
「…はぁ!?」
こうして言われると、妙に恥ずかしいというかなんというか。
モミジという子も驚いて俺の方を見る。
咄嗟に両手を後ろに隠してしまった。
「どうしたのヒビ?顔が真っ赤ですよ?」
「さ、寒いのが原因だろう!」
「そうなの?」
そんなことを考え始めてから顔が真っ赤になるのが自分でもわかるほど熱い。
「ふむ、メアリの旦那様とは申し訳ありません」
「わ、分かればいい」
素直に武器を下したから俺も万能立方体を退かすと、俺たちの前へと現れた。
さっきまで後ろにいたから見えなかったが、女の子だったのか。
いや、さっきモミジ“ちゃん”と言っていたからそりゃあそうか。
「初めまして。私はサザナミ様の護衛兼お世話係のモミジと言います」
「俺は響風光輝、ヒビでいい。それにしてもその耳は」
「はい、狐の耳です」
実際に見るのは初めてだな。
服は和服でこの狐耳。
うん、けっこう似合っている。
「それでどのような用件で?」
「ユウに会えないか?」
「ユウ、と言うとサザナミ様でしょうか?」
「ああ、出来れば早めに会いたいのだが」
「かしこまりました。それではこちらへどうぞ。ご案内いたします」
中へ入るとそこは日本の旅館そのものだった。
建物の内部は全て木でできており、途中には中庭。
床や天井まで全て木で再現されている。
「ユウは何故この家、この町をつくったんだ?」
「14人の英雄が帰って来た際に、ゆっくりできる場所をつくりたいという理由でつくられました」
「なるほどな。だから温泉か」
温泉があればゆっくりできるし、疲れもとれる。
おまけにこの旅館のつくりだと、まるで旅行にきた気分になるから素晴らしい。
日本人らしいところと言えば日本人らしいところだ。
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