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早速試したのは魔法だ。
こちらの世界についてはまったくと言って知らないため、試行錯誤の繰り返しになる。
まずは試しに風刃を使ってみた。
出来たのかは分かりづらいが、何となく風が動いたのは分かった。
対象がないため、結果が分からない状況だ。
魔法と同時に始めたのが能力について知ること。
今のところ分かるのが死なないこと。
これだったら俺の能力は“不死身”になるはず。
だが“神の血”と言われたから、“不死身”とは違うまた別の何か何だろう。
そこからは全くと言って進展はなし。
年単位で成果を得られるか得られないかというほどだ。
現実はそこまで甘くはない、本当に地獄だ。
ある程度能力について知るときには、普通の人間の寿命が尽きているときだった。
魔法でつくった鏡で自分を見ても、こっちに来た時のまま。
あの時、こっちの世界に来た時に得た能力のせいで変わることはなかったのだろう。
この時で100年近く。
封印が解かれるまで、まだ何十分の1しか経っていなかった。
この長い時間、俺は魔法と能力を上手く合わせて使えないか、ひたすら研究していた。
研究時にはある程度の能力について知っていたため、進みは昔に比べて早くなっている。
だからこそあの能力付与箱が完成したのだ。
こちらが先にできたため、使い方は万能立方体より理解している。
だからこそ、いざという時に使える技だ。
最初は能力を1つ入れた箱をつくるので精一杯だった。
だが時間は無限と言っていいほどある。
いくらでも挑戦した。
そして再度脱出を試みて門を攻撃したが、相変わらず動かない。
何がいけなかったのか調べるため、何かいい方法をないか考え直した。
その中で“探索”という魔法を見つけ、門を調べてみた。
分かったことは人の命を使われていたということだ。
姿も見ることができたため、誰の命が使われたことまで分かる。
門になったその命は禍々しく、とてにも見ていられるものではなかった。
その時から俺は、自ら門を開けることを止めた。
自分の力で開けることもできないうえ、見ていたいとも思わなくなっていたからだ。
その後、俺が始めたのはひたすら何かを試したりする試行錯誤のみ。
*
「そして能力ではなく魔法でも出来ないかと思い、つくったのが万能立方体だ」
「それほどこの箱はすごかったということですね」
「まだ持っていたのか。もう捨てても良かったんだがな」
「こんなものを捨てるなんてもったいないです!!」
と言われても、俺が使わない限りただの黒い箱だ。
使わなければただのゴミと同じになる。
「せっかくだ。これについて教えてやる」
「構造でも教えてくれるのですか?こんな貴重な情報を?」
「どうせつくれないだろうからな。6面全てを2回ずつ叩いてみろ」
そう言うと、メアリは箱をペシペシと叩いた。
俺はてっきり指でコツコツ叩くと思ったが…。
叩き終わると黒い箱は開き、中から小さな黒い箱が落ちてきた。
「ああっ!」
「落として構わない。これがこの能力付与箱の秘密というやつだ」
「もしかしてこの中に能力が?」
「そうだ。1つ1つ能力を閉じ込め、それをまとめたのをお前に渡したんだ」
だからたくさん能力を閉じ込めることはできない。
今回つくったのも9個。
もしものことを考えて、少し多めに入れておいた。
「これ、開けてみてもいいですか?」
「構わないが、見ないことを勧めるぞ」
こいつ、俺の忠告を聞く前にさっさと開けやがった。
「えっ…」
「忠告は最後までしっかりと聞いておけ。見てていいものではないぞ」
中に入っているのは赤く、歪な丸い何か。
「それは俺の“心臓”だ。少し小さくしているがな」
「な、何でこんなものが…」
「当たり前だろう。能力を封じ込めるのはそれ相応の“モノ”が必要だ」
これに気づいたのは、俺が失敗して死んだときに偶然見つけた。
極端な話、俺が小さくなって箱に入ればつくれるのではないかと思い付いた。
それを別の方法で成し遂げたのがこの方法だ。
「じゃあこれは大切に持っていた方がいいのでは?」
「別に今更心臓を取ることに躊躇はない。それに別の心臓がもうあるからその心臓は必要ない。必要になったらまた新しいのをつくればいい」
「…無理はしないでくださいね」
「一応だが、命を使わずに能力を付与する方法ならある」
「本当ですか!?」
「ただし、1つの能力だけだ」
どれぐらい付けるかの個数制限はないが、能力を1つだけ入れる箱は誰でも簡単にできる。
個数制限の方は、その人次第になるが。
箱でいれるという考え方以外にも、ユミルがやっていた魔法に付与する方法もある。
考え方次第でやり方も変わっていくということだ。
「そういえばお前の能力はなんだ?」
「回復です。普通の回復魔法とは違い、効果は絶大ですよ」
「…そうか」
「なんですか。その“俺には必要ない能力”みたいな目は」
まったくその通りだ。
案内だけではなく、何か出来ないかと思ったが案内だけみたい。
「つくると言っても、能力を具現化する感じだ。例えばお前の回復という能力。これは回復薬をイメージすればつくりやすいだろう」
「四角くしなくていいのですか?」
「俺の場合、イメージしたのがこの形だったからだ。別に何でもいい」
俺は試しに回復の能力を付与したものを具現化した。
俺がイメージしたのは鉛筆のような棒状のものだ。
「これがヒビさんの回復のイメージですか…」
「ああ。これのほうが便利だからな。試してみよう」
回復を試すために、俺は地面に腕を強くぶつけ骨を折った。
こんなことばかりしていたため、痛覚に疎くなってしまった。
でもこういう時には便利なんだよな。
メアリはドン引きしているが。
次に、先ほどつくった回復の効果を持った棒を折った。
実験は成功で、折れた腕は元通りに戻る。
「凄いです…。まさかそういう風に使うとは」
「ポーションみたいに飲んだり、回復魔法みたいに触れた場所を治したりするのもいいと思ったが、こうしてどこでも回復できるようにしたほうが一番楽だろう」
「腕が両方折れたら難しいですがね」
そうなったら足を使って折ればいい。
それでも無理なら口で折るのもありだ。
元々俺には必要ないことだから、そこまでする気はないがな。
こちらの世界についてはまったくと言って知らないため、試行錯誤の繰り返しになる。
まずは試しに風刃を使ってみた。
出来たのかは分かりづらいが、何となく風が動いたのは分かった。
対象がないため、結果が分からない状況だ。
魔法と同時に始めたのが能力について知ること。
今のところ分かるのが死なないこと。
これだったら俺の能力は“不死身”になるはず。
だが“神の血”と言われたから、“不死身”とは違うまた別の何か何だろう。
そこからは全くと言って進展はなし。
年単位で成果を得られるか得られないかというほどだ。
現実はそこまで甘くはない、本当に地獄だ。
ある程度能力について知るときには、普通の人間の寿命が尽きているときだった。
魔法でつくった鏡で自分を見ても、こっちに来た時のまま。
あの時、こっちの世界に来た時に得た能力のせいで変わることはなかったのだろう。
この時で100年近く。
封印が解かれるまで、まだ何十分の1しか経っていなかった。
この長い時間、俺は魔法と能力を上手く合わせて使えないか、ひたすら研究していた。
研究時にはある程度の能力について知っていたため、進みは昔に比べて早くなっている。
だからこそあの能力付与箱が完成したのだ。
こちらが先にできたため、使い方は万能立方体より理解している。
だからこそ、いざという時に使える技だ。
最初は能力を1つ入れた箱をつくるので精一杯だった。
だが時間は無限と言っていいほどある。
いくらでも挑戦した。
そして再度脱出を試みて門を攻撃したが、相変わらず動かない。
何がいけなかったのか調べるため、何かいい方法をないか考え直した。
その中で“探索”という魔法を見つけ、門を調べてみた。
分かったことは人の命を使われていたということだ。
姿も見ることができたため、誰の命が使われたことまで分かる。
門になったその命は禍々しく、とてにも見ていられるものではなかった。
その時から俺は、自ら門を開けることを止めた。
自分の力で開けることもできないうえ、見ていたいとも思わなくなっていたからだ。
その後、俺が始めたのはひたすら何かを試したりする試行錯誤のみ。
*
「そして能力ではなく魔法でも出来ないかと思い、つくったのが万能立方体だ」
「それほどこの箱はすごかったということですね」
「まだ持っていたのか。もう捨てても良かったんだがな」
「こんなものを捨てるなんてもったいないです!!」
と言われても、俺が使わない限りただの黒い箱だ。
使わなければただのゴミと同じになる。
「せっかくだ。これについて教えてやる」
「構造でも教えてくれるのですか?こんな貴重な情報を?」
「どうせつくれないだろうからな。6面全てを2回ずつ叩いてみろ」
そう言うと、メアリは箱をペシペシと叩いた。
俺はてっきり指でコツコツ叩くと思ったが…。
叩き終わると黒い箱は開き、中から小さな黒い箱が落ちてきた。
「ああっ!」
「落として構わない。これがこの能力付与箱の秘密というやつだ」
「もしかしてこの中に能力が?」
「そうだ。1つ1つ能力を閉じ込め、それをまとめたのをお前に渡したんだ」
だからたくさん能力を閉じ込めることはできない。
今回つくったのも9個。
もしものことを考えて、少し多めに入れておいた。
「これ、開けてみてもいいですか?」
「構わないが、見ないことを勧めるぞ」
こいつ、俺の忠告を聞く前にさっさと開けやがった。
「えっ…」
「忠告は最後までしっかりと聞いておけ。見てていいものではないぞ」
中に入っているのは赤く、歪な丸い何か。
「それは俺の“心臓”だ。少し小さくしているがな」
「な、何でこんなものが…」
「当たり前だろう。能力を封じ込めるのはそれ相応の“モノ”が必要だ」
これに気づいたのは、俺が失敗して死んだときに偶然見つけた。
極端な話、俺が小さくなって箱に入ればつくれるのではないかと思い付いた。
それを別の方法で成し遂げたのがこの方法だ。
「じゃあこれは大切に持っていた方がいいのでは?」
「別に今更心臓を取ることに躊躇はない。それに別の心臓がもうあるからその心臓は必要ない。必要になったらまた新しいのをつくればいい」
「…無理はしないでくださいね」
「一応だが、命を使わずに能力を付与する方法ならある」
「本当ですか!?」
「ただし、1つの能力だけだ」
どれぐらい付けるかの個数制限はないが、能力を1つだけ入れる箱は誰でも簡単にできる。
個数制限の方は、その人次第になるが。
箱でいれるという考え方以外にも、ユミルがやっていた魔法に付与する方法もある。
考え方次第でやり方も変わっていくということだ。
「そういえばお前の能力はなんだ?」
「回復です。普通の回復魔法とは違い、効果は絶大ですよ」
「…そうか」
「なんですか。その“俺には必要ない能力”みたいな目は」
まったくその通りだ。
案内だけではなく、何か出来ないかと思ったが案内だけみたい。
「つくると言っても、能力を具現化する感じだ。例えばお前の回復という能力。これは回復薬をイメージすればつくりやすいだろう」
「四角くしなくていいのですか?」
「俺の場合、イメージしたのがこの形だったからだ。別に何でもいい」
俺は試しに回復の能力を付与したものを具現化した。
俺がイメージしたのは鉛筆のような棒状のものだ。
「これがヒビさんの回復のイメージですか…」
「ああ。これのほうが便利だからな。試してみよう」
回復を試すために、俺は地面に腕を強くぶつけ骨を折った。
こんなことばかりしていたため、痛覚に疎くなってしまった。
でもこういう時には便利なんだよな。
メアリはドン引きしているが。
次に、先ほどつくった回復の効果を持った棒を折った。
実験は成功で、折れた腕は元通りに戻る。
「凄いです…。まさかそういう風に使うとは」
「ポーションみたいに飲んだり、回復魔法みたいに触れた場所を治したりするのもいいと思ったが、こうしてどこでも回復できるようにしたほうが一番楽だろう」
「腕が両方折れたら難しいですがね」
そうなったら足を使って折ればいい。
それでも無理なら口で折るのもありだ。
元々俺には必要ないことだから、そこまでする気はないがな。
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