異世界最強のレベル1

銀狐

文字の大きさ
上 下
47 / 60
奇跡の花

42

しおりを挟む
「ちなみにだけど、その場所は雪山ほど過酷ではないわ」
「なんだ、あれ以下なのか」
「あれ以下って……。あれよりひどいのがあったらあなたたち以外だと無理だよ……」

 いや、その暴風雪の中で歩いていた人たちがいたけど。
 これは調査隊がクラハドールさんたちに気づいたときが面白そうだな。

「まあそれは置いて、依頼はこれだけ?」
「これだけって?」
「いや、複数あったら一緒にやっちゃおうかなあって」

 やるなら複数やったほうが効率はいい。
 ゲームでも複数受けるのは当たり前だった。

「残念だけど、原則は1つずつでお願い」
「なんでだ?」
「仕事がなくなる、が原因だよ」
「…あぁ!そういう事か」

 ゲームでは同じ依頼を何回も受けられる。
 だがこっちでは違う。

 例えば迷惑しているモンスターを討伐する依頼があるとしよう。
 そのモンスターを倒し、報酬をもらう。
 じゃあまたもう1回受けられるかと言えば受けられない。

 理由は簡単、その元凶のモンスターがもういないからだ。
 また被害が出れば依頼は出てくるだろうが、連続してそうなることはない。

 そうなると依頼の数もたくさんと言うわけではなくなる。
 冒険者が多ければ多いほどに。
 だから失業者を出さないように1つずつにしているんだろう。

「そういう事なら仕方ない、これだけを受けるよ」
「じゃあよろしくね。生存を確認出来たら――」
「分かってる。すぐに報告するよ」

 俺たちは依頼書を手に持ち、冒険所から出た。

「さて!じゃあさっそく家に向かう、その前に!」
「そうね、アクセサリーショップに行きましょう」
「アクセサリーショップ?」

 なんでそんなところに?
 さっきの話だと家に行く流れだったはずだが。

「ほら行くよディラ!」
「分かった、分かったから引っ張るなよメル!」

 別に欲しいものがあるなら構わないけど。
 でもそんなに急がなくてもいいんじゃない?

 俺たちは町にあるアクセサリーショップへたどり着いた。
 店の外装から分かるが、ここけっこう高そうだぞ。

「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ」

 店のドアを開けると、中にはスーツを着ている人がいた。
 特徴的な角があるけど、羊の獣人かな? 

「ねえねえディラ!これなんてどう?」
「へぇ、リングか……」

 ファラは珍しくテンションが高い。
 こういうアクセサリー系が好きなのかな?

 選んでいたのはきれいなシルバーリングだ。
 どういう効果があるんだろう?

「効果…なし……」

 マジかよ、何のためのリングだよ。

 うーん、でも欲しそうにしているしなあ。
 買ってあげてもいいか。
 初めての依頼達成記念も兼ねて。

「メルはどれがいいの?」
「ちょっとまって、真剣に考えているから」

 真剣に見ているリングを隣から覗いてみた。

 なにこれ、全部同じように見えるんだけど。
 でも真剣に見ているんだし、メルには全然違うように見えるんだろう。

「よし!これに決めた!」

 手に取ったのはファラと似たようなシルバーリングだった。
 どうしよう、同じものにしか見えない。

「それじゃあ買うか。すみませーん!」

 店員さんを呼び、2つのリングを頼んだ。
 わざわざ手袋をして綺麗な布の上に乗っけている。

 そういえば値段が載っていない。
 これって時価とかそういうやつだったり?

「合計金貨8,000枚になります」
「……わお」

 普段だったら絶対言わない言葉が口に出てしまったよ!
 依頼の報酬の8倍じゃないか!
 下手したらそれなりの家一軒を買えるぞ!

 まあ買っても財産に影響があまりないから買いますけど。

「では数えますので座ってお待ちください」

 俺たちは奥にある待合室で待つことに。

「あのリング何に使うの?」
「「結婚指輪」」
「えーっと……」
「動揺するのも分かるわ。でも必要なものなの」
「ディラが嫌だったらやめるけど……」

 二人は悲しそうな顔をした。

「嫌どころか、むしろうれしいけど……」
「「ほんとうに!?」」
「う、うん」

 一気に明るくなった。
 えっ、まさかだけど――

「お待たせしました。お金の方はしっかりございました。ではこちらの結婚指輪をどうぞ」
「「ありがとう」」

 二人はリングを手に取り、左手の薬指にはめた。
 大きさはぴったりだ。

「ご結婚おめでとうございます」
「えーっと、ありがとうございます……?」

 式どころか告白もしていないんですが!?

「これからもよろしくね、ディラ」
「僕も一緒によろしくね!」
「お、おう」

 俺たちは結婚した、みたい?
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

森の王は何を思う?

ソヨナ
ファンタジー
初投稿です! この作品は、群れから捨てられたアルビノのウルフが世界にどう影響していくかを記す物語です。 対立する人間たちなど様々な種族と出会い、別れ、ウルフは何を思うのか。 そんなウルフを見逃さないでください!

男装少女、呪いの刀を片手に異世界を旅します~周囲を魅了していることには、まったく気がつきません~

色彩和
ファンタジー
樹神葵羽は、高校三年生。普段から男性のような話し方をし、制服以外は男装している少女であった。 ある日、友人を助けたことにより、命を落としてしまった。 しかし、そんな彼女が次に目を開ければ、そこは自分の知らない世界、異世界であった。呪いの刀に気に入られてしまった彼女は、それを片手に異世界を旅する。呪いの刀を封印しようと考える彼女は、様々な場所を巡り、仲間たちと出会っていくのだった――。 男装少女の異世界転生ファンタジー、どうぞお楽しみください。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

Journey ~ 旅立ちは突然に・・・ ~

TESH
ファンタジー
魔法少女の冒険と成長を描く

騙されて異世界へ

だんご
ファンタジー
日帰りツアーに参加したのだが、気付けばツアー客がいない。 焦りながら、来た道を戻り始めるが、どんどん森が深くなり…… 出会った蛾?に騙されて、いつの間にか異世界まで連れられ、放り出され…… またしても、どこかの森に迷い込んでしまった。 どうすれば帰れるのか試行錯誤をするが、どんどん深みにハマり……生きて帰れるのだろうか?

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...