異世界最強のレベル1

銀狐

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氷山の討伐

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「ヴェルと言ったか!?」
「そんなことは別にいい。さあいくぞ、獄炎の山」

 手を打つと、俺の下から炎が現れた。
 そしてそのまま俺を包み込んだ。

「おい、いきなり魔法を使うなよ」
「むっ?まさか無傷だとは……」
「そんなことはいい。ヴェルは一体どこにいるんだ?」
「…ヴェルは遠くの国にいる」

 遠くの国……。
 まさかまた生贄にしたのか!?

「あの野郎……」
「次に行くぞ。退屈させるなよ」

 そう言うと俺の前へと移動してきた。
 図体が大きい割に相当早い。

「壱腕」

 一本の腕が俺の腹へモロに入った。
 速いうえに重い一発。
 普通の人なら腹に風穴が空いていてもおかしくない。

「弐腕、参腕」

 回数を重ねるたびに殴る腕が増えていく。
 加えて一発一発全部重い。

「肆腕、伍腕…陸腕!」

 最後まで重いパンチだった。
 勢いがありすぎて後ろの木々が吹っ飛んでいる。

 だが俺は一歩も動かなかった。

「終わりか?」
「…話以上の化物だ」

 どう話したかは分からないが、これぐらいの戦闘はよくやっていた。
 俺たちが戦うなら余裕の相手だ。

「それで、てめえは誰だ?」
「言ったであろう。シュラと」
「そうじゃない、何者なんだ?」
「なら改めて名乗らせてもらおう」

 そう言うと阿修羅とまったく同じポーズをとった。

「俺は地獄のシュラ。閻魔をも押しのける地獄最強の男だ!」

 閻魔って閻魔大王のことか?
 それより強いって……。

 ゲームにも一応閻魔大王はいた。
 いたものの、名前しか出ていない。
 未実装だったのか物語上必要だったのかはわからない。

 でも今の攻撃を受けた限り、シュラこいつはあまり強そうに感じない。
 まあ他の人から見たら相当強いけど。

「なるほど。じゃあ次はこっちから行くぞ」
「うむ、来いっ!」
「ヴェルの仲間なら容赦はしない。覚悟しろ」

 俺は斬龍頭を取り出した。
 これで耐えられないならそこまでってところだが。
 …耐えそうだな。

「無斬」

 力と速さを最大限に使い、ひたすら斬る単純な技。
 最終的に直径1センチぐらいになるまで切り刻んだ。

「ふむ、なるほど」
「やっぱり耐えるか」

 切れ目があるものの、割れない。
 やっぱり耐えたか。

 そう思った瞬間だった。
 バラバラとシュラは崩れていった。

「切れていた……?」

 いや、切れていたらすぐに崩れ落ちるはず。
 もしかしてわざとそう見せるために崩れたのか?
 よくわからないやつだ。

「お疲れ、ディラ」
「お疲れさまー」
「いや、まだ終わっては――」

 一瞬目を離した瞬間、シュラの破片が消えていた。
 それも跡形もなく。

「一体どういう事なんだ?」
「どうしたの?」
「…考え過ぎか。何でもないよ」
「そう、それじゃあ帰りましょうか」

 気になるが、いつまでもここにいるわけにはいかない。
 ヴェル達の居場所を聞けなかったのは痛いな。
 仕方ない、ガルガン王国に帰ろう。

「あっ、そういえば討伐の証拠がない……」

 踏みつぶされてそのまま吹き飛んでしまったんだ。
 どうしようかなあ。
 調査隊とかいて調べてくれたりしないかな?

「それなら目玉があったから持ってきたよー!」

 そういうとメルは大きな目玉を持ってきた。
 うわっ、グロい……。

「まあ、あるだけましか」
「じゃあ帰りましょう」

 こうして別の事件が起きたものの、初めての依頼は無事に終わった。


*


「おっ、帰ってきた」

 エマは地面を見ていた。
 その地面から破片がたくさん出てきてシュラへとなった。

「おい、話と違うではないか」
「でも楽しかったでしょう?」
「…俺でなかったらあそこで終わっていたぞ」
「だから君に嘘をついたんですよ」

 地獄のシュラはシュラ専用の魔法がある。
 それは死なないことだ。

 どれだけ切り刻んでも、どれだけ燃やし尽くしても、どれだけ高圧力の電流を流しても死なない。
 いや、死なないものの少し違う。

「死なないわけではない。毎回毎回俺が地獄に行くんだぞ」
「まあ実験も兼ねてですよ」
「実験だと?」
「ええ。地獄から戻ってくる場合、また生贄が必要なのか、という実験です」
「…ふんっ」

 実験は見事に成功。
 生贄なしにまた戻って来れたのだ。

「それにしても面白い奴だ」
「シュラもそう思いますか?」
「ああ。こっちは楽しそうだな」
「ええ、やっと見つけた楽しみなんです。もっと楽しみましょう」
「そうだな。こっちにいる間はそうさせてもらおう」
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