31 / 60
vsメルメシア王国
26
しおりを挟む
「回復魔法が使える者!早く隊長を!!」
ソウはサルベルクを巻き込むほどの爆発をした。
一体何が原因で爆発したんだ?
いや、今は早くサルベルクを治さないと危ない。
ケガは大きいものの、まだ助かる可能性がある。
「くそっ!」
『そうはさせませんよ』
サルベルクが気になり向かおうとした途端、目の前に黒いモヤが現れ、俺を止めた。
『それ以上はルール違反ですよ』
「その声は…ヴェル……!」
『ええ、正解です』
黒いモヤはヴェルの姿へと変わっていく。
『それ以上前へ行くなら前線に立つことになり、ルール違反となります』
「お前はどうなんだ?今こうやって前線にいるじゃないか!」
『これは加護を与え、ソウの魔力で動いています。直接前線にはいません』
こいつ、前線に立たないという言葉だけでそんな抜け道をつくっていたのか。
それに加護、ゲームにはなかったものだ。
少し不利だな。
「待てよ。加護とは魔法を教えるというやつか?それとも魔法を与えるということか?」
『加護は魔法をすぐ使えるようにしてあげるため、後者です。』
「それは使っていいという事か?」
『ええ。ただし攻撃力上昇のように3人の魔力を使い、間接的に戦うことは禁止です。あくまでも兵の魔力だけで戦闘をさせてください』
魔法を教えるには時間がかかるが、魔法を与えるならすごく楽だ。
だけど、苦労をせずに渡すということは自分の努力が無駄になる。
それを兵全員に渡したのか。
「ヴェル、今のように喋っているのは違反ではないのか?」
『これはただの映像です。話すぐらいはアリにしましょう。味方に命令を出すのに必要ですし』
「ペテン師にとって話すということは戦闘に入ると思うが」
『ご安心を、それにペテン師ではございません。ルールの追加説明するためにこうして話しているだけです。元々あなたが突っ込んできたせいで話せなかったことなので』
こうなるんだったらしっかり聞いておけばよかった。
まあいい、俺も抜け道を使わせてもらうだけだ。
「わかった。そういうことなら俺たちはここから動かない」
「ちょっ!ディラさん!?」
『ご理解いただけたでしょうか?ではまた会えることを楽しみにしております』
そういうと、黒いモヤは消え去った。
「ディラさん!あなた方ではないサルベルクが――」
「デルガンさん!加護みとはちょっと違うけど、あるものを渡すからサルベルクのことを頼む!」
「えっ?は、はい。わかりました」
俺を出し抜こうとしやがったな。
そういうことなら、世界1位となった男の意地を見せてやる!
「ディラの贈り物」
「でたそれ!」
「それを使うのはズル過ぎないかしら?」
ズルいとはなんだ!
俺にとってはお気に入りなんだぞ!
「どういう事なんでしょうか……?」
「早くサルベルクのところへ!着いたら俺が指示を出すから」
「分かりました!」
デルガンさんは頷くと、サルベルクのもとへ走っていった。
俺が使ったディラの贈り物というのは、俺が初心者のためにつくった3つの魔法の詰め合わせだ。
レベルと魔法レベルをガン無視して使うため使用制限はあるものの、魔力がほとんどいらない。
俺が試しに初心者に渡したのが原因で噂が全ユーザーへと広がった。
運営が「初心者応援パックにどうですか」と商品化の話も出た。
さすがにみんなこれを使うと序盤が楽過ぎて、その分後々困るから断った。
売っていれば儲かっただろうなあ。
「着いたんだが、何をすればいいのやら」
『回復魔法が使える。それを使ってほしい』
「!? ディラさんの声が聞こえる……?」
『それはいいから、完全回復が使えるはずだから!』
「そんな伝説の魔法を使えるわけないですよ!?」
『回数制限はあるけど、とりあえず早く!』
「わ、わかりました。完全回復!」
デルガンさんが魔法を使うと、サルベルクのケガが治っていく。
よかった、間に合ったみたいだ。
「すごい……。本当に使えるなんて」
『サルベルクは少し休ませてあげてほしい。それとサルベルクの最前線を誰かにやってもらいたいんだが……』
「そ、そうですね。副隊長のシャゼル・ドーグルはいますか!」
「お呼びでしょうか」
「サルベルクの代わりに指示をしてくれ」
「分かりました」
A班の中から一人の女性が出てきた。
黒いポニーテールを後ろで揺らしている。
「A班は私について来てください!B班は引き続き支援魔法を。C班は負傷者の回復をできるように後方にて待機!」
「「「「「はっ!」」」」」
シャゼルは速やかに指示をだした。
戦闘態勢としてはこのままでいい。
だが、サルベルクのように負傷した場合が困る。
後方で回復部隊をつくったのは正解だ。
*
「な、なぜソウさんが爆発したんだ……?」
「強力な加護を使った反動なのか?」
「い、嫌だ!あんな死に方はしたくない!!」
敵軍に動揺が見え始めた。
そもそもその加護というのはヴェルが渡していた。
爆発の原因もヴェルということだ。
……何か胸騒ぎがする。
「て、撤収!早く撤収しろおおぉ!!」
『逃げるのですか?』
逃げ始めた敵軍の兵士が次々と爆発していく。
『逃げても構いませんよ。こうなってもいいのでしたら』
「嫌だ……。なんでこんな加護を貰ってしまったんだ!」
「こんなやつ信頼するんじゃなかった!」
「なんでこんな狂人が指令総括になれたんだ!!」
「ど、どうすればいいんだ?どうしたら生き残れるんだ?」
『簡単ですよ。戦って勝てばいい、そのために加護をあげたんですから』
「それを使うと死ぬじゃないか!!」
『負けなければいいんです。そうすれば生き残れますよ』
なんて奴だ。
こんなの、脅迫して戦わせているだけじゃないか。
「ぜ、全軍突撃いい!!」
「「「「「うおおお!!!!」」」」」
先ほどとは違い、ただ生き残りたいという気持ちだけが込もった声だ。
見ているだけで胸が痛い。
『本当に笑えます。こんな簡単に動いてくれるとは』
『まずい!デルガンさん!さっきのギフトにある絶壁の防御壁を使ってくれ!!』
「えっ、どういう――」
『いいから早くしろ!!仲間が死ぬぞ!!』
「!? 絶壁の防御壁!!」
敵軍とこちらの軍の間にに大きな壁が出来上がった。
壁が出来上がった時、ヴェルの姿をした黒いモヤは指を鳴らした。
その瞬間、攻めてきた敵軍の兵士全員が爆発した。
『あははははっ!飛び散る命というのは意外と綺麗ですね!!』
「ヴェルのやつ、やりやがったな……!!」
相手の軍は全滅。
絶壁の防御壁は破壊され、大きな被害は免れたが死者が数名でた。
ソウはサルベルクを巻き込むほどの爆発をした。
一体何が原因で爆発したんだ?
いや、今は早くサルベルクを治さないと危ない。
ケガは大きいものの、まだ助かる可能性がある。
「くそっ!」
『そうはさせませんよ』
サルベルクが気になり向かおうとした途端、目の前に黒いモヤが現れ、俺を止めた。
『それ以上はルール違反ですよ』
「その声は…ヴェル……!」
『ええ、正解です』
黒いモヤはヴェルの姿へと変わっていく。
『それ以上前へ行くなら前線に立つことになり、ルール違反となります』
「お前はどうなんだ?今こうやって前線にいるじゃないか!」
『これは加護を与え、ソウの魔力で動いています。直接前線にはいません』
こいつ、前線に立たないという言葉だけでそんな抜け道をつくっていたのか。
それに加護、ゲームにはなかったものだ。
少し不利だな。
「待てよ。加護とは魔法を教えるというやつか?それとも魔法を与えるということか?」
『加護は魔法をすぐ使えるようにしてあげるため、後者です。』
「それは使っていいという事か?」
『ええ。ただし攻撃力上昇のように3人の魔力を使い、間接的に戦うことは禁止です。あくまでも兵の魔力だけで戦闘をさせてください』
魔法を教えるには時間がかかるが、魔法を与えるならすごく楽だ。
だけど、苦労をせずに渡すということは自分の努力が無駄になる。
それを兵全員に渡したのか。
「ヴェル、今のように喋っているのは違反ではないのか?」
『これはただの映像です。話すぐらいはアリにしましょう。味方に命令を出すのに必要ですし』
「ペテン師にとって話すということは戦闘に入ると思うが」
『ご安心を、それにペテン師ではございません。ルールの追加説明するためにこうして話しているだけです。元々あなたが突っ込んできたせいで話せなかったことなので』
こうなるんだったらしっかり聞いておけばよかった。
まあいい、俺も抜け道を使わせてもらうだけだ。
「わかった。そういうことなら俺たちはここから動かない」
「ちょっ!ディラさん!?」
『ご理解いただけたでしょうか?ではまた会えることを楽しみにしております』
そういうと、黒いモヤは消え去った。
「ディラさん!あなた方ではないサルベルクが――」
「デルガンさん!加護みとはちょっと違うけど、あるものを渡すからサルベルクのことを頼む!」
「えっ?は、はい。わかりました」
俺を出し抜こうとしやがったな。
そういうことなら、世界1位となった男の意地を見せてやる!
「ディラの贈り物」
「でたそれ!」
「それを使うのはズル過ぎないかしら?」
ズルいとはなんだ!
俺にとってはお気に入りなんだぞ!
「どういう事なんでしょうか……?」
「早くサルベルクのところへ!着いたら俺が指示を出すから」
「分かりました!」
デルガンさんは頷くと、サルベルクのもとへ走っていった。
俺が使ったディラの贈り物というのは、俺が初心者のためにつくった3つの魔法の詰め合わせだ。
レベルと魔法レベルをガン無視して使うため使用制限はあるものの、魔力がほとんどいらない。
俺が試しに初心者に渡したのが原因で噂が全ユーザーへと広がった。
運営が「初心者応援パックにどうですか」と商品化の話も出た。
さすがにみんなこれを使うと序盤が楽過ぎて、その分後々困るから断った。
売っていれば儲かっただろうなあ。
「着いたんだが、何をすればいいのやら」
『回復魔法が使える。それを使ってほしい』
「!? ディラさんの声が聞こえる……?」
『それはいいから、完全回復が使えるはずだから!』
「そんな伝説の魔法を使えるわけないですよ!?」
『回数制限はあるけど、とりあえず早く!』
「わ、わかりました。完全回復!」
デルガンさんが魔法を使うと、サルベルクのケガが治っていく。
よかった、間に合ったみたいだ。
「すごい……。本当に使えるなんて」
『サルベルクは少し休ませてあげてほしい。それとサルベルクの最前線を誰かにやってもらいたいんだが……』
「そ、そうですね。副隊長のシャゼル・ドーグルはいますか!」
「お呼びでしょうか」
「サルベルクの代わりに指示をしてくれ」
「分かりました」
A班の中から一人の女性が出てきた。
黒いポニーテールを後ろで揺らしている。
「A班は私について来てください!B班は引き続き支援魔法を。C班は負傷者の回復をできるように後方にて待機!」
「「「「「はっ!」」」」」
シャゼルは速やかに指示をだした。
戦闘態勢としてはこのままでいい。
だが、サルベルクのように負傷した場合が困る。
後方で回復部隊をつくったのは正解だ。
*
「な、なぜソウさんが爆発したんだ……?」
「強力な加護を使った反動なのか?」
「い、嫌だ!あんな死に方はしたくない!!」
敵軍に動揺が見え始めた。
そもそもその加護というのはヴェルが渡していた。
爆発の原因もヴェルということだ。
……何か胸騒ぎがする。
「て、撤収!早く撤収しろおおぉ!!」
『逃げるのですか?』
逃げ始めた敵軍の兵士が次々と爆発していく。
『逃げても構いませんよ。こうなってもいいのでしたら』
「嫌だ……。なんでこんな加護を貰ってしまったんだ!」
「こんなやつ信頼するんじゃなかった!」
「なんでこんな狂人が指令総括になれたんだ!!」
「ど、どうすればいいんだ?どうしたら生き残れるんだ?」
『簡単ですよ。戦って勝てばいい、そのために加護をあげたんですから』
「それを使うと死ぬじゃないか!!」
『負けなければいいんです。そうすれば生き残れますよ』
なんて奴だ。
こんなの、脅迫して戦わせているだけじゃないか。
「ぜ、全軍突撃いい!!」
「「「「「うおおお!!!!」」」」」
先ほどとは違い、ただ生き残りたいという気持ちだけが込もった声だ。
見ているだけで胸が痛い。
『本当に笑えます。こんな簡単に動いてくれるとは』
『まずい!デルガンさん!さっきのギフトにある絶壁の防御壁を使ってくれ!!』
「えっ、どういう――」
『いいから早くしろ!!仲間が死ぬぞ!!』
「!? 絶壁の防御壁!!」
敵軍とこちらの軍の間にに大きな壁が出来上がった。
壁が出来上がった時、ヴェルの姿をした黒いモヤは指を鳴らした。
その瞬間、攻めてきた敵軍の兵士全員が爆発した。
『あははははっ!飛び散る命というのは意外と綺麗ですね!!』
「ヴェルのやつ、やりやがったな……!!」
相手の軍は全滅。
絶壁の防御壁は破壊され、大きな被害は免れたが死者が数名でた。
0
お気に入りに追加
2,002
あなたにおすすめの小説
森の王は何を思う?
ソヨナ
ファンタジー
初投稿です!
この作品は、群れから捨てられたアルビノのウルフが世界にどう影響していくかを記す物語です。
対立する人間たちなど様々な種族と出会い、別れ、ウルフは何を思うのか。
そんなウルフを見逃さないでください!
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
騙されて異世界へ
だんご
ファンタジー
日帰りツアーに参加したのだが、気付けばツアー客がいない。
焦りながら、来た道を戻り始めるが、どんどん森が深くなり……
出会った蛾?に騙されて、いつの間にか異世界まで連れられ、放り出され……
またしても、どこかの森に迷い込んでしまった。
どうすれば帰れるのか試行錯誤をするが、どんどん深みにハマり……生きて帰れるのだろうか?
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる