異世界最強のレベル1

銀狐

文字の大きさ
上 下
28 / 60
vsメルメシア王国

23

しおりを挟む
「ねえねえ我朗がろうくん、放課後少し残ってくれない?」
「少しなら大丈夫だよ」

 懐かしい、学校の教室だ。

 高校一年生の夏、俺はクラスの人に声をかけられた。
 表情や言い方からして告白だと思う。

放課後、言われた通り俺は教室に残った。

「一度しか言わないから聞き逃さないでね」
「わかった」
「すぅ…はぁ……。我朗くん、あなたのことが好きです。付き合ってください!」

 この時、俺は人生で初めて告白された。
 だけど俺は付き合う気はなかった。

 当時はTWFが発売直後、俺は家にいる間はずっとログインをしていた。
 だから他の時間が取れない、時間を使いたくなかった。

 俺の過ちはこれを全て素直に言ってしまったことだ。

 告白してくれた女の子はその場で泣き始めてしまった。
 俺は声をかけることすらできなかった。

 翌日にはこの話がクラス中、いや学校中に広がっていた。
 「ゲームしか見ない最低な男」という最悪な言い方で。

 告白してきた女の子は学校で少し人気だったせいで、俺は徐々に居場所がなくなった。
 友達も他のみんなと同じようなことをし、俺から離れていった。
 居場所がなくなった俺は学校を辞め、別の通信制の学校へ入ることにした。

 そんなことがあっても、俺はTWFをやめることはなかった。
 むしろ空いた時間にバイトをし、課金までしていた。
 その時から、俺の人生はTWFに飲み込まれていたんだ。

 ……なんでこの夢を見るんだか。
 時々見るけど、俺にとって嫌いな出来事だ。

 勝手に告白してきて、俺が振ったら学校を辞めるのは俺でしたなんてひどい話だ。
 だけど、そんなことがあったおかげでファラとメルと出会ったんだ。
 あの時にTWFをやめていたら出会わなかった。
 そして、新しい世界こんなところにも来れなかった。

 嫌な出来事があっても、今につながっているもんだな。

「……寝ていたのか」

 目が覚めた。
 ベッドに入ったのは覚えている。
 ふかふかすぎていつのまにか寝ていたみたいだ。
 ちょうど雲が晴れ、月の光が部屋へと入ってきた。

 待って、誰かいるみたいなんだけど。
 この城って幽霊出るの?
 可愛い幽霊か、ファラかメルだったらうれしいんだけどなあ。

「すまない、許してくれ!!」
「おっさんじゃねぇかよ!ってあぶねぇ!!」

 よく見てみると国王だ。
 寝込み襲ってくれるならこんなおっさんじゃなくて可愛い女の子がよかったよ。

「って思っている場合じゃないな。そのナイフはなんだ?殺す気満々じゃねぇか」
「すまない、許してくれ。ヴェルが私の敵になるなんておかしいことなんだ」
「だから、本人がそう言っていたんだって」
「そんなはずはない!ヴェルは私たちのために命を張って戦っていたんだ!!」

 あまりにも過信しすぎている。
 疲労のせいで頭のネジでも飛んだか? 

「洗脳の魔法を使った跡もないし……。なるほど、そういうことか。これがあいつのやり方か」

 国王の異変の原因は魔法ではなく、別の方法だ。
 あいつのやり方は、無意識のうちにできてしまっている洗脳だ。

 例えばだが、あるところに信頼している友人と初めて会う人、それと自分がいるとする。
 友人は嘘をいい、初めて会う人は本当のことを言っている。
 明らかにおかしい嘘なら別だが、本当のことのように聞こえる嘘なら初めて会う人ではなく友人のほうを信じるだろう。

 ヴェルはガルガン王国のために、危ない前線に立つという行動まで示したんだ。
 今日初めて会った俺たちが嘘をついていると勝手に頭が思ってしまっているんだろう。

 俺だって仲間のために戦っていたやつがいきなり裏切って、新しく来たやつに「裏切ってましたよ」なんて言われても、実際に見るまでは信用できない。

「だからと言っていきなり殺すのはやりすぎだよな」
「ヴェルよ。戻ってきてくれ……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...