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32.追及99

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「ただいまー、帰ったぞー」
「「おかえりー!!」」
「おかえり」

 今日はそのお父さんの帰宅する日だ。
 お父さんはここ数日間、出張で他国までいっていた。

「カラリアはこれ、エイミーちゃんはこれだ」
「わーい!」
「やったー!」

 しっかりとお土産まで買ってきている。
 サラリーマンのお父さん感がすごいなあ。

「アンディにはこれだ」

 渡された袋は少し重かった。
 一体何が入っているんだろう?

「俺は疲れたからもう休むよ……」
「お疲れ様」
「「おやすみー!!」」

 お父さんはふらふらになりながら部屋へと向かった。
 こっちだと移動も大変だからなあ。
 馬車に乗っているだけでもお尻が痛くなる。

「アンディは何が入っていた?」
「二人とももう空けているし……」

 エイミーとお姉ちゃんの袋にはもう穴が空いていた。
 せめて部屋に戻ってから開けようよ。

「二人はどうだったの?」
「お姉ちゃんは髪飾り!」
「私は新しいぬいぐるみ!」

 二人とも嬉しそうに持っていた。
 髪飾りにぬいぐるみかあ。

 そう考えると僕がもらったお土産は一体何だろう?
 ぬいぐるみだとしても重すぎるし。
 とりあえず開けてみるか。

「ん?何かの本だね」

 中を見てみると1冊の本が入っていた。
 手に取って表紙を見ても何も書かれていない。

「なーんだ。本だったんだー」
「アンディってお勉強好きだよねー」

 エイミーとお姉ちゃんは興味がなくなったか、部屋へとスタスタと戻っていった。
 ちょっと、聞いておいてひどくないですか?
 あと僕は別に勉強は好きではないよ。

「とりあえず、部屋に戻って読んでみよう」

 まずは中身を知りたい。
 これで昆虫図鑑とかだったらそれはそれでおもしろいけど。
 でもそういう感じの本ではなさそうなんだよなあ。

 部屋に戻り、本をめくった。
 最初のページには目次と一緒にこの本について説明が少し書かれていた。

「『これは私がいた世界についての記録である』……。私がいた世界?」

 僕は興味がでて、少し早いペースで次のページを開いた。

「これって……!」

 驚いたことに、次のページに書かれていたのは日本について書かれていたのだ。

「携帯電話、自動車のほかに経済状況……。漫画やアニメについてまで書かれている」

 内容は普通の人が見るようなことが書かれていた。
 それと一緒に、これはどういうものなのかという説明があった。

「僕がいた時より少し内容が古いけど、間違いなく日本について書かれている」

 後ろの方には日本以外にも外国についても載っていた。
 大体僕が亡くなった時の20年ほど前の内容かな。

 僕はこれを書いた人が気になり、お父さんの元まで走っていった。

「お父さん!」
「ん?アンディか。廊下は走っちゃいけないぞ」

 忘れていた……。
 けど書いた人が気になってそれどころではなかった。

「ごめんなさい。それでいきなりなんだけど、これって誰が売っていた?」
「もう気に入ったのか。それを売っていたのは普通の人だったぞ」
「普通の人……?」

 出張前にたまたま聞いただけだけど、お父さんは他国との商談と国王からの大切な伝言を渡すために向かった。
 それなのに一般人から買ったって、どこかで道草でも食ってきたのかな?

「俺が行ったときにちょうど町に市場が開かれていたんだ。その時にみんなのお土産を買ったんだよ」

 だから一般人から買えたのか。
 それはまあさておき、どういう人物だったのかが知りたいな。

「その人はどういう感じだった?」
「どうもこうも、普通のおじさんだったぞ。俺と同い年ぐらいだったかなあ」

 書かれていた内容から考える限りだと、僕と同じ転生者かもしれない。
 会ってみてどうこうしたい、というわけではないが、同じ出身の人と久しぶりに話をしてみたい。
 もう少し聞いてみよう。

「その時に何か言っていなかった?」
「たしか…『これは俺が見た世界を書き記したものだ』とか言っていたな。試しに読んでみたら本当に見てきたように書かれていたから買ってみたんだ」

 間違いないだろう、僕と同じ転生者だ。

「もしかしてアンディも見たことがあるのか?」
「えっ?うん…まあそんな感じ」
「いいなあ、俺もその世界を見てみたいよ。俺も同じ夢を見てみたいものだ」

 夢だったと思っているんだ……。
 それはそれでいい捉え方かもしれないね。

 それに、本物を見ようと思っても見れる場所にはないからね。
 僕もできることならみんなに見せてあげたい。

「教えてくれてありがとう!」
「おう、読み終わったらお父さんにも読ませてくれよー」
「わかったー!」

 なんだかんだ、自分も読みたいのか。
 それをお土産にされた僕の立場って……。
 欲しいものがあるわけではないから別に構わないけど。

 僕は再び部屋へと戻った。
 出来るかは分からないが、これを書いた人を探してみようと思ったのだ。

 お父さんから聞いた情報からだとこの人だ!とまで特定まではできない。
 ならば他国に行って探す、なんてことは無理だろう。
 それだったらあれを使って探したほうが簡単だ。

「スキルオープン」

 僕が知っている限り、これを使ったほうが一番早いだろう。
 困ったらまずはスキル、大切なことだ。

 今回は使えそうなスキルが早く見つかった。
 追及、これを使ってみよう。
 これを99まで上げて……。

「よし!捜査ディテクティブ!」

 魔法を使い、書いた人について調べてみた。
 時間はかかるもの、少しずつ見つけ始めた。
 面白いことに、ゲームのゲージが溜まると終了みたい。

 数分が経ってあと少しというところだった。
 本は急に光りだしたのだ。

「なんだこれ!?」

 本は光ったまま浮き始め、ある高さまで上がるとパラパラとページが自動でめくり始めた。
 そして中から文字が出てくると、空中に文字が並んだ。

『ここまで来たということは恐らく俺と同じ転生者だろう。理由があって探そうとしているのだろうが、俺は会うことができない。
 会えないから情報を持っているのか、と言われれば特にこれと言って持っていない。元の世界に戻る方法なんかも知らない。
 ただ会えないのは旅をしているためだ。一緒に話したいのは山々だが、旅が楽しすぎて止まっていられないのだ。そこで奇跡的に会えたら、ぜひ話をしよう』

「旅を止められない、かあ」

 僕はこっちに来てから外に出ることがまずない。
 この世界はどうなっているのかもよく知らないのだ。
 旅かあ、僕が大きくなったらぜひ行ってみたい。
 前の世界と比べてこっちの世界はほとんどが未知。
 旅のやりがいがあるだろうね。

 そういう事ならこれ以上探し回るのはやめておこう。
 ただ気になって調べただけだから、旅を止めてまで会おうとは思わなかった。

 飛び出ていた文字は本へと戻り、光も消えて普通の本へと戻った。
 試しにもう一度やってみたところ、また光りだすことはなく、結果は不明と出てきた。

 こんなことができるってことは書いた人もスキルを貰っているのかもしれない。
 会えなかったのは残念だったなあ。

 でもこうして僕以外にも転生者はいる。
 それが分かったところでどうなるかと言われれば何も変わることはないだろう。
 だけど同じような人がいるってことを知っただけでもいいことなのかもしれないと思った。
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