Day Walker

みさ☆バニー

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Day Walker 91

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昼休み。
「ね、隆、僕ね、昨夜見ちゃった。」
「何を?」
昼休みは、大事な時間。あんまり人が来ない、ゆっくり出来る場所で隆と過ごす。
「パパと凛のエッチ。」
「え?あの2人出来てるの?」
「出来てるって言うか、夫婦だよ。まぁ、男同士だから、結婚はしてないけど。」
「テンのママは、離婚したの?」
「ううん、僕は凛から産まれたの。」
「はい?凛さん、男でしょ?産めないだろ?」
「僕もね、そう思ったんだけど、超音波の写真とか、お腹が大きい凛の写真、それから、産まれた瞬間の写真見せて貰ったんだ。そしたら、やっぱ、凛から産まれてる。」
「訳わかんない。まるで、人間じゃないみたいじゃん。」
あ、しまった。ディウォーカーの事は話しちゃダメだったんだ。
「ま。まぁ、それは置いといてさ、凄く綺麗だったんだよ。僕もそのやってる時、どう?」
「ん~、俺もそんな余裕ないから見てないけど、綺麗だと思う。」
「ほんと?良かった。醜かったら恥ずかしいもん。」
「んな事、気にするなよ。俺の中で一番はテンだよ。」
嬉しいな。


「テン、学校から終わったら直ぐに帰って来なさい。寄り道しないで。」
「え?なんで?」
「ちょっとね、臭うんだよ。テンはまだ、気がついてないか。」
「どう言う事?パパ。」
「まだ、情報が無いから何ともいえないけどね、危ないから、学校終わったら、すぐに帰ってくるんだ。良いね?」
「・・・はい。」

なんだろう。危ないって、何?

「・・・こんな感じの夢。乗り移る?そんな感じかな。」
裕太が、予知夢の報告。誰に何が乗り移るんだろう。
「強く感じるのは、テンが泣いてる。叫んだりね。でも、どうしようもなくて、手を出せないって空気。」
テン絡みか。
「バチカンに連絡は?」
「うん、したよ。エクソシストが来る。」
「テン、守んなきゃね。」
「そうだな。今度は、天馬か。純血だから能力も高い。狙われるのか。」
「怖いな。外に出したく無い。」
「凛、大丈夫。凛の時みたいなミスはもう、しない。」
「うん、分かってる。」

ガタガタッと物凄い音。
慌てて、テンの部屋へ。

隆君が、テンの首を絞めてる。
「何してる!」
“この子は、生け贄に見合う最高の子羊だ。我々が貰い受ける。”
隆君の声じゃ無い。
低い、そう、闇の住人の声。体が宙に浮き、テンを掴んでる。
足をバタつかせて、苦しがってる。
「蓮!テンを頼む!」
急いで、リビングに置いてあった、聖水を取って隆君にかける。
苦しみながら、テンを離してのたうち回る。
「ゴホッゴホッ!く、苦しかったっ、何で?何で、隆が?」
「大丈夫か?分からない、分からないが、テンに一番近くて、乗り移りやすい身体を狙ったんだろう。」
「隆君!隆!しっかりして!」
暫く苦しんだ後、やっと我に返った。
「お、俺、テンに、テンに・・・!」
「大丈夫、隆君がしたんじゃない。何者かが、隆君の身体を使ったんだ。」

隆君を家に帰して、ディウォーカー集合。
「今までとは違うタイプね。身体を持たずに、乗り移るなら、悪霊かしら?」
「戦いようがないな。」
「頻繁に隆君が乗り移られたら、隆君の精神が危険だ。」
「テン、少し落ち着くまで、隆君には近づかないで?」
「やだよ!何で好きなのに、会えないの?近くに住んでるのに!」
「天馬、落ち着いて。このまま、何度も乗り移られたら、多分、隆君自体が闇の住人になり兼ねない。その時は最悪の結末しかないんだ。」
「最悪って何?」
「闇の住人になって、心を失ったら、私達が彼を倒さなきゃいけなくなるんだ。天馬。」
「倒す?殺すって事?ヤダよ!嫌だ!隆は普通の人間だよ?殺したらダメ!」
「今は、そうだ。だか、天馬に一番近いんだ。彼が今、狙われてる。近寄ったら、悪霊らしき輩が隆君を奪い去る。」

テンが俺の腕の中で泣いてる。
「僕が、僕が普通の人間だったら、こんな事にならなかったのに!隆は関係ないのに!」
「あぁ、そうだね。そうだ。」
こんな、こんな事が予想出来てたら、産まなかったかも知れない。辛い。辛すぎる。

「我々って、言ったのよね。うーん、そしたらどこかに実体があって、念だけを送ったのかも。」
「成る程。たしかにそうかも知れないな。」
「悪霊だけだったら、臭わないと思うわ。」
「そうだな、日に日に臭いが強くなってる。」
「まるで、天馬が育つのを待っていたかのようだな。」
やめてくれ。俺達から愛しい我が子を奪わせない。

玄関のドアを激しく叩く音。
「や、やめなさい!隆!」
「やめるんだ!隆!」
ドアを開けると、隆君が両親に抑えられ、暴れている。
また、乗り移られたか。ヤバイな。
「す、すいません!急に暴れ出したり、抑えきれなくて!」
「いや、大丈夫です。中に入ってください。」
中には、ディウォーカー全員と天馬、そして3名のエクソシスト。
隆君を囲って、俺たちが、立った。中心に隆君と両親。
「あ、あの、これは?」
「お祓いみたいなものです。大丈夫。」
「隆!隆!」
テンが呼び掛けるが、返事をしない。
もう、隆君に自我が無い。完全に正気を失い、乗り移られてる。

ラテン語で、エクソシスト達が祈り出す。健太は、実体が無いか、サーチしてる。
隆君が苦しみ出す。
“我々に子羊を引き渡せ。さもなくば、この身体を引き裂く”

見えない力で、隆君の体が四方から引っ張られてる。ヤバイ、奴等は本気だ。
「僕、僕が、行けば隆は助かる?僕、行く、行くから、隆を殺さないで!」
「ダメだ!テン、行かせられない!」
「どうして?隆、ころされちゃうよ!やだよ、僕が行く!」
俺の腕から離れて、隆君に近づく。
「隆、隆、今、助けるからね。隆、大好き。」
宙に浮き、苦しそうに呻く隆君に、口付け。天馬、本気なんだね。
「隆、今までありがとね。また、遊べたらいいね。」
隆君の身体を優しく抱きしめたかと思うと、テンの身体が消えた。
「俺がサーチします。」


「近い。近いです。天馬君も力を使って暴れてます。」
「わかった、華!飛ぶよ!」
「うん、行くよ!」

そこは、郊外の使われていない潰れた工場跡地。激しい物音がする。テンが1人戦ってる。テンだって、死ぬつもりはない筈。隆君の元に帰りたい。

「テン!」
天馬が、フルパワーで、戦うのは初めて見た。身体は、光を放ち、ありとあらゆる物が飛び交う。手からは、眩しいイナズマの様なものも出てる。
あまりのパワーで、闇の者達も押され気味だ。
「僕らに、二度と近寄るな!」
小さな身体から、溢れる力。約13年間近く抑え込んでいた物を闇の者達にぶつけている。

「これ、私達、手出ししなくても、良くない?」
「ダメだ。力のコントロールが出来てない。終わってる事に、気がついてない。」

テンの周りには強い風も吹いて嵐の様だ。物も飛び交う中、何とかテンに近づく。

「テン、もういいよ、大丈夫。彼奴らは、テンがやっつけた。もう大丈夫。」
優しく抱きしめる。テンの眼からは、涙が溢れてる。
「り、凛。お、終わったの?僕、勝ったの?」
「あぁ、そうだ。終わったよ。テンが勝った。」
「うん、うん、分かった。怖かったよ凛。」
「そうだね。でも勝ったんだ。隆君も助かる。」
「でも、ディウォーカーってバレたよ。もう、別れなきゃ。」
涙声で、呟く。
そうかも知れないね。人間じゃ無いと分かってしまったら、怖くて近寄らないかも知れない。
「帰ろ?皆んな待ってる。」

自宅には先に蓮達が帰っていた。
床には気を失ってる隆君。
「あなた方に関わったせいで、息子までこんな目にあったんだ!もう、交際もさせない。うちの子に近寄らせないでくれ! 」
隆君の父親がそう叫ぶと、隆君を抱えて、帰っていった。
「隆・・・。バイバイ。」
部屋の奥から、小さな声で、愛しい彼を見送ってる。涙が止まらない。

「ね、僕、疲れちゃった。部屋で休んでいい?」
「うん、良いよ。休みなさい。」

それから、天馬は、学校に行くのをやめた。勉強は、ネット。通信制高校に行くよって言ってる。
テンの心の傷は、予想以上だった。

もう、数ヶ月、テンの笑顔みてない。テレビを観てても笑わないし、話しかけても、最小限の会話だけ。自室にこもったまま、外出もしない。

時折、外から子供の声がすると窓際まで近づく。
隆君が観れた時は顔が少し緩む。まだ、好きだよね。
天馬を恵まれた時は喜びしか無かったけど、たった13歳で、こんな辛い状況になるとは思わなかった。
「たまには、モール行かない?気分転換。」
「ううん。行かない。ありがとう、でも、僕はお家から出ない方が、良いんだよ。だから、大丈夫。僕、家にいるよ。」
そういうと、窓際から自室に戻る。

覗くと、あぁ、隆君。友達と遊びながら帰ってきたのか。

学校に行かなくなって、学校や福祉課から、自宅に訪問に来る。
「天馬くん。身体の調子も良さそうだし、週に1回くらい、学校に行こうか?」
「ううん。行かない。ごめんなさい。僕は外に出たらダメなんだ。だから、学校にはもう行きません。」
「どうして、出たらダメなのかな?」
「それは言えないけど、人を怖がらせちゃうから。だから、出ちゃダメなんだ。家でも勉強してるから、もう大丈夫です。」
テンの心は、すっかり扉を閉じた。俺や蓮にも。

「なぁ、隆君は、もうテンの事、どうでも良いのかな?」
「分からないよ。でも、あの後、一切連絡もないから、もう終わってるかもな。」

季節も変わり、もうすぐクリスマスだ。
「テン、入るよ?」
「はい、何?」
「クリスマス、何か欲しいものある?」
「・・・普通の人間になれる魔法。」

「そっか、そんな事いったか。」
「産んで良かったのかな?俺、自信無くなってきたよ。」
「凛、大丈夫。いずれ、外には出るよ。それまで見守ろう?」
蓮の肩に顔を埋めて、声を殺して泣いた。

クリスマスの朝。
郵便受けに、消印無しの手紙。テン宛だ。
「テン、入るよ、お手紙来てた。」
「手紙?誰から?」
「分かんない。書いてない。」
「ふーん。」
手紙を渡して扉を閉めた。

「よし、ご馳走出来た。テン、喜ぶかな?」
「あぁ、喜ぶよ。呼んでくる。」

ん?遅いな。なんで?

「良かったな、うん、良かった。」
蓮の腕の中で、テンが泣いてる。手紙握りしめて。
「どうしたの?」
「隆君からの手紙だ。時間かけて、両親を説得したって。襲ったのは自分で、それを助けたのが天馬だって。」
「り、凛、僕、学校行く。冬休み、終わったら、学校行く。」
「うん。そうだね。隆君、迎えにくるよ。」

勇気を出して、隆君家に来た。うん、親だもん。また、付き合うならちゃんと、挨拶した方が良い。

「すいません、天馬の・・・」
「はい、あ、はい、はい、中へどうぞ。」
き、緊張するな。
「すいません、散らかってて。」
「いえ、あの、隆君と天馬の件なんですが。」
「コラッ!お客さん来てんだ、静かにしろ!」
に、賑やか。兄弟多いんだな
「すいません、あの時、突き放すような事を言ってしまって。」
「いえ、我が子を守るんです。当然の言葉ですよ。」
「隆が、とても冷静に、穏やかに私達に説明をするんです。元来、大人っぽい所はありましたが、あんなに、そう、あんなに天馬君への気持ちを伝えて来た事が無くて驚きました。」
「そうでしたか。」
「私達から、断絶させたので、伺いにくくて。そしたら、隆が手紙書くと言うので。私達も、もう任せようかと。」
「ありがとうございます。天馬も冬休み開けたら学校に行きたいと言い出して。隆君のお陰です。」
「勝手だとは思いますが、また宜しくお願いします。」
「こちらこそ。」

な、何とか挨拶終わった。はぁ、いいよね。これで。

あ、誰か来てる。
「ただ今~、誰かきてんの?」
「天馬の愛しい人が、来てるよ。」
「そっか、あっちのご両親も本人達に任せるって。」
「そうか。良かったな。まぁ、出てくるまで後3時間かな?」
「ゲスいなぁ。そっとしとこ?」
「まぁね。ケーキでも焼きますか。」
「ほんと?嬉しいなぁ。」
「やっと、凛も笑ったな。久々だ。」

うちの家庭にもやっと笑顔が戻った。
楽しい正月になるね。天馬。
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