モンスターのスキルを奪って進化する〜神になるつもりはなかったのに〜(修正中)

お寿司食べたい

文字の大きさ
上 下
3 / 41
第1章:知らないことだらけのこの世界

第2話:シズナを愛でる信者(?)

しおりを挟む
 
 
 その後のお義母様は不満タラタラの表情のまま、晩餐の準備に取り掛かる。

 帯刀家には2人の家政婦さんがいるので、準備と言ってもテーブルコーディネートの指示程度だから私の出番は特に無いようだ。

「初めまして、長男の榮太郎です。あはは、可愛い義妹が出来て嬉しいなあ」
「こちらこそ初めまして。松村零と申します」

 噂の榮太郎さんも帰宅し、ようやくこれで一家勢揃いである。

 どうでもいいが、榮太郎さん美しすぎ。

 少女漫画で例えると2大ヒーローの髪が白い方という感じだ。…そうなると課長が髪が黒い方。イメージ的には榮太郎さんが天使で課長が悪魔。モテモテ博愛主義が榮太郎さんで、ツンデレ一匹狼が課長…はい、もう例えません。

 いや、でも余りにもヒマなもので。

 リビングのソファに座らされたものの、テレビが無いんですけど、この家。お義父様と課長は何やら仕事の話を始めたし、榮太郎さんは茉莉子さんと戯れている。

 客人をもてなすというサービス精神が欠けておるぞ、この家は。しかしこれもお給金に含まれていると思えば、オールオッケイな私である。

 ガンゴーン!

 この重厚な鐘の音は、どうやらインターホンの音らしいが、誰も応対する気配が無い。

「…あの、来客のようですが、どうしますか?」

 おずおずと課長に問うと、彼は当然であるかのように答えた。

「ああ、きっと弁護士だろう。応対を頼む」
「べ、弁護士…ですか?」

「先程、零がケーキを食べている間に母が『婚前契約書を作れ』と騒いでな。仕方なく呼ぶことにしたんだ」
「へえ、日曜なのに来てくれるんですね」

「ウチのお抱え弁護士だから」
「はあ…なるほど」

 キョロキョロと周囲を見渡すと、家政婦さん2人はお義母様に無理難題を言われてんやわんやになっており。榮太郎さん夫婦は自室に行き、姿が見えない。

 ではお義父様か課長が出迎えれば良いのだろうが、大御所感を漂わせているこの2人はそんな応対は自分がすべきで無いと思っているらしい。

 だからって客人に任せるか??
 その弁護士じゃなかったらどうすんのよ

 …そんな言葉をグッと呑み込む。

 何から何まで規格外の家なので、一般常識で推し量ってはならぬのだ。ここは私が譲歩するしかなかろう。

 ガンゴーン!

 再び玄関チャイムの音が鳴り響き、私は慌ててモニターを覗く。

 べ、弁護士??

 そこに映っていたのは、恐ろしいほど美しい女性のドアップだった。

「あ、公子さんだわ。いいわよ、私が応対する」
「えっ?!茉莉子さんのお知り合いですか??」

 いつの間にか戻って来ていたコツメカワウソが嬉しそうに答える。

「ほら、さっき話に出てたでしょう?政親さんの従姉妹で弁護士の公子さんよ。うふふ、と言っても単なる従姉妹じゃなくて、政親さんの元カノでもあるのよねえ」
「も、元カノ…?」

 ガ───ン!!
 普通にショックを受けた自分に驚く。

 ん??よく考えてみたら私、
 本物の婚約者じゃないんだった。

 なのに何を動揺しているんだ?!
 目を覚ませ、シッカリするんだ!!

「じゃあお迎えに行ってきまーす」
「え、はいっ、お願いします」

 水すましの如くスイスイとリビングを出て玄関に向かう茉莉子さんの背中を眺めていると、仕事の話がひと段落したのか課長が隣に座った。

「(コソコソ)早く教えてくださいよッ。いま来た弁護士さんって従姉妹で、しかも元カノだっていうじゃあないですか!」
「…いや、その件ならコソコソ話さなくていい。ここにいる全員が知っているからな」

「(コソコソ)そ、そうはいきませんよ!それに当の本人がここに来るんだし」
「だから通常のトーンで話して構わないんだ。…既に終わっていることだから」

 一瞬、心臓が凍りそうな気がした。

 そうか、そうなんだ。この人にとって恋愛なんて邪魔なだけで、別れてしまえばそれでもう処理済トレイ行きだ。1年間の契約結婚が終われば、きっと私も同じ扱いを受けるのだろう。

 少しずつ2人の距離が近くなったと思ったけど、それは私の勝手な思い込みで。この人の中で私の存在は相も変わらず『金で雇った便利な女』のままなのだ。

 うあああっ。こんなことをウジウジ考え出したということは、残念だが好きになり始めているのかもしれない

 このクソが付くほど冷たい男に。

「ほら、前にも話したと思うけど、どの女も俺と付き合うとおかしくなるんだ。

 知性的で成熟していて『今は恋愛なんかより仕事に集中したいの』とかなんとかクールに語ってた女が、『政親さんお願い、1分でいいから会って』と泣いて懇願するようになってしまうのな。

 公子とは就職と同時に数カ月だけ付き合った。幼い頃からその性格はよく分かってたはずが、いざ付き合ってみるとヤッパリ豹変してさ。なんか勝手に思い詰めて、ときめきまくって、俺に会いに来るんだよ。

 あれは怖かったなあ。

 で、このままじゃお互いの為にも良くないと、両者合意の上で別れたってワケ」

しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

Retry 異世界生活記

ダース
ファンタジー
突然異世界に転生してしまった男の物語。 とある鉄工所で働いていた佐藤宗則。 しかし、弱小企業であった会社は年々業績が悪化。 ある日宗則が出社したら、会社をたたむと社長が宣言。 途方に暮れた宗則は手持ちのお金でビールと少しのつまみを買い家に帰るが、何者かに殺されてしまう。 ・・・その後目覚めるとなんと異世界!? 新たな生を受けたその先にはどんなことが!? ほのぼの異世界ファンタジーを目指します。 ぬるぬる進めます。 だんだんと成長するような感じです。 モフモフお付き合いおねがいします。 主人公は普通からスタートするのでゆっくり進行です。 大きな内容修正や投稿ペースの変動などがある場合は近況ボードに投稿しています。 よろしくお願いします。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...