合法異常者【R-18G】

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 プロジモはついでとばかりにラヴィ用の洋服や足りなくなっていた日用品を買い足して、帰る頃には持っていた袋はぎちぎちになっていた。
 あれもこれも子どもが食べるかもしれないと、菓子やら何やら詰め込みすぎたせいである。
 あの子の好みは知らないが、これだけ買えばいずれかにはヒットするであろう。
 その様子は初めての子育てに浮かれる父親そのもので、顔なじみの店員達はついに森の猟師にも嫁ができたかと笑顔でおまけを付けてくれたものだ。
 その実、彼の心を沸き立たせているのは殺人の被害者なわけであるが。現実とは得てして知らぬ方が幸せなものなのだ。



 馴染みの森に入ると、聴覚に引っかかったものがいた。
 何も考えず銃を構えたが、射線上に大岩があることに気付く。猟師は舌打ちをしながら立ち位置を変えた。
 ラヴィにはまるで侵入者の区別はつかないかのように伝えたが、本当は足音の数や重さでしっかり区別できている。無差別と思われた方が都合が良かったから、敢えて誤解させるように述べたのだった。
 プロジモが見つけた瞬間に狙うのは四つ足の大型肉食獣と、だ。
 あとの小物は狩りたい時だけ探している。
 前者は単純に山からはぐれた大型獣には危険しかないから、後者は今は亡き国とのちょっとした取引もあったが、大きな理由は「侵入者の大義名分で死体を手に入れる為」に他ならない。
 それもここ数年は自らのまいた種で妙な噂が広がり誰も足を踏み入れなくなってしまった。
 子どもを拾ったのは本当に渡りに船だったのだ。そりゃあ浮かれて菓子を買い込みもする。

 無事殺した獲物は尾を引き摺る音から恐らく巨大なトカゲモドキだろう。あの肉は味が薄いから蒲焼にでもしてやろうか、幼子というのは得てして甘辛いものを好むのだ。
 プロジモは鼻歌を口ずさみながら戦利品を探しに向かった。



 家に戻るとラヴィが扉の音に気付いて出迎えてくれた。
 育ての母が死んでからもっぱら独りきりであったプロジモにとって、扉の前で「おかえり」とニコニコしている生き物など青天の霹靂どころではなかった。言いようのないむず痒さに襲われ、頬の裏の肉を噛んで誤魔化した。

「……ただいま、おまえに土産がたらふくあるぞ」
「それは嬉しいな、早く見せておくれ」

 言い慣れぬ言葉にそわついている男にはさして目もくれず、居間の方に裸足の足音が消えてゆく。プロジモもそうだが、ラヴィも大概機嫌が良さそうだ。頬がいつもより赤らんでいた。
 ……いや忘れていた、あれは風邪を引いているのだった。
 薬局に行ったのだから風邪薬も買ってやれば良かったと少し後悔する。



「すごいね、一度で全部揃ったのか」
「あの薬局でかいからな、お偉いさん方も使ってたって話だ」
「ああ、それで……仕入れた事例があるから在庫があったというわけだね……」

 ラヴィは何だか複雑そうな顔をしているが、その理由はプロジモには想像できなかった。
 買ってきた服は「随分可愛らしいデザインだね、きみから見たぼくはこういうイメージなのかい?」と身体に当て一回転して見せたり、お菓子は塩辛いものばかり自分の手前に寄せ集めていて、その幼稚な行動に思わず笑みがこぼれた。

「うん……器具も揃っているね。室内で火は使っても?」
「使うなら井戸の近くでやってくれ、あの辺は石しかない」
「まあ、雨風が凌げるならどこでもいいよ……ああそうだ、」

 真新しい服の一着に袖を通したラヴィが両手いっぱいに謎の材料や器を抱えて部屋を出ようとしたその時、不意にこちらに振り向いた。
 そして世間話のようにさらりと告げたのだ。

「もしぼくが死んでいたら、また生き返った後にきみの精を注いでおくれ」
「…………はぁ?」

 一体何をやらかす心算なのだ、と問う間もなく、ラヴィはさっさと出ていってしまう。
 勿論死体を使用することに否は無いが、それにしたってだ。あれは自殺でもする気なのだろうか?

 胡乱な顔を隠さないプロジモのことなど何処吹く風で、子どもは三日三晩買い与えられた物品で遊んでいた。
 透明な器に細いチューブを取り付けて、何かを炙ったり水にしたり、すり潰したり。
 ままごとと言うには物々しいそれはプロジモには全く分からない代物だ。飯に呼ぶまで、もう寝ろと叱るまでラヴィは遊びに夢中だった。
 余談だが、蒲焼は大喜びして食べていた。ふっくらした食感の肉にタレが絡んで美味しい、酒が欲しいなどと満足気であった。
 感想がおっさん臭い……と呆れたのはここだけの話である。

 さて、ラヴィの言伝は四日後の日中に行使する機会が訪れた。
 山菜を摘んで備品の手入れを済ませたプロジモが昼飯にしようと家の戸を開けると、あの甘美な香りがそこら中に充満していたのである。
 慌てて荷物を置き匂いの元を探すと、それは廊下でうつ伏せに倒れていた。
 恐る恐る抱えてみると、既に冷たい。ひっくり返して見れば顎から鳩尾にかけて醜い色の斑点が浮き上がっていた。
 毒でも口にしてしまったのだろうか? 死因を考察しようとした脳味噌はしかし、死人特有のゴムのような肌触りの皮膚で一気に霧散した。
 もう駄目だ。プロジモは観念した。身体の隅々まで香りが巡っていくのを感じる。彼の愚息は何もしていないのに既に先端から汁を零し始めていた。
 子どもを見下ろす。今朝までのはしゃいでいた姿や、プロジモの帰りを出迎える可愛らしい旋毛、美味しいものを食べた時の嬉しそうな笑顔が脳裏を過ぎる。ああ、可哀想に。もう何も出来ない。彼はもう、死んでいることしか出来ない。
 ぐらりと頭が揺れる。動くラヴィと長時間接したからこその喪失感や虚無感がプロジモを極度に興奮させていた。
 弛緩している穴にペニスを宛てがい、好物を咀嚼するようにゆっくりと腰を進める。中はまだ少し体温が残っている。死んでからそう時間が経っていないのだろう。

「はっ……はー……柔らかい……おまえ最高、最っ高だよ……」

 完全に快楽に蕩けた瞳に遺体を映しながら、物言わぬ骸を褒め称える。
 中は泥濘んでいて、男の亀頭を優しく包み込んでくれるが、一定の深度まで行くと急に強ばったような硬い襞がプロジモの侵入を拒み、無理矢理押し入れると先端のくびれをぞりぞりと撫でてくる。陰茎の裏筋から電流の如く伝ってくる快感に、舌を出したまま仰け反り大量に射精してしまった。
 出し切るまで腰をゆすり、俺は早漏じゃない、こいつの具合が悦いせいだ、と誰にともつかぬ言い訳を繰り返しながら、張り詰めたままの性器を再び絶頂まで導き始める。
 プロジモは元来あまり自慰などしてこなかった男であるが、そんな過去など忘れてしまったのか、猿もかくやといった熱心さで小さな孔を穿ち続けていた。
 更に二度ほど出して、腰を叩きつける乾いた音よりぐちゃ、ぬちゃ、と粘液を掻き混ぜる音の方が大きくなり、ラヴィの身体に散っていた斑点が薄くなりだしているのを視界に捉えた頃、つい先日味わった極上の痙攣がプロジモのペニスに襲いかかった。
 生き返る。
 上がり過ぎて過呼吸のようになっている自らにも頓着せず、ごりごりと子どもの体内をいじめながら、何一つ見逃すまいとその肢体を凝視する。
 ラヴィが大きく息を吸うのと同時に、肉襞が大きくうねる。ぎゅうぎゅうと食い絞められ、何度目かの射精感が急激に這い上がる。

「…………っは、はぇっ……、プロ、ジ、……あっ、あ゙っ!?」
「っあ゙ー、イっ、イく、イくイくイく、イ゙ッ……!」

 すっかり精液の寝床と化した腹の中に思い切り性器を叩き込み、びゅるびゅると遠慮なく出した。子どもの臍の上あたりが、プロジモが精を吐き出す度に波打っている。ここに出ているのだ、今。
 見つめているとまた膨らんでしまいそうだったので、焦りながら陰茎を抜き去る。
 くぽん、と鳴る軽い音に反して中から溢れてくる精子の量はえげつなかった。こんなに出すほど夢中になっていたのだ、この小さな身体に。
 股をひくひくと震わせながら床に白い水溜まりを作るラヴィを恍惚の視線で眺めながら、プロジモは唐突に気付いたのだ。

「…………呪法石買ったの忘れてた……」

 明日着けさせよう、と先程までの惨状とは裏腹にのんびりと考えつつ、かひゅ、かひゅ、と苦しそうにしている子どもを洗うため、肩に担いだプロジモであった。




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