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第七章 王国剣術大会編

第277話 妻会議

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 ちゅんちゅん、と小鳥の鳴く声。
 朝。
 俺は、風呂場にいた。
 たまにはアレだね。
 朝風呂ってのもイキだよね!
 と、いうわけではなく。

「あぶぶぶ」

 ぴちょんぴちょん、と天井から何かが滴っている。
 なんかイカ臭い白いやつが。

 昨日から、ずっと風呂場にいたっていうね。
 どんだけ綺麗好きなんだよ、というわけでもなく、どっちかというと汚れている。
 お湯はとっくに冷めきり、白濁に塗れ、なんならセレナが頭を突っ込んでブクブク言っていた。
 溺死!? とか思っちゃうけど、吸血鬼だから大丈夫。
 白いプリッとした尻だけを浴槽の外に出して、股間から精液をぴゅーぴゅー吹いている。

「ふふ、コウくん……ふふ、コウくん……」

 そんな浴槽に背中をもたれかけて、カンナさんはやたらツヤツヤしていた。
 下半身はガタガタと生まれたての子鹿のように痙攣しているので、怖かったが。
 顔だけ笑顔で、俺の名をブツブツと連呼するので恐怖が倍増する。
 同じく、股間から精液をぶしゃぶしゃと吐いている。

 うーん、大惨事感。

 昨夜、身重の嫁コンビ、ルーナとミレイが俺を挑発しまくった。
 ボテ腹嫁との3Pはとっても興奮したのだ。
 そのせいで、乱入してきたセレナとカンナさんを、飛んで火に入る夏の虫的に犯してしまった。
 妊娠中のルーナとミレイは先に休ませた後、心ゆくまでセックスである。
 ハッスルし過ぎだろうか。
 結果として、風呂場はひどい有様である。
 俺はザーメンを何リッター出したんだ、という気もするが、人間にそんな真似ができるわけはない。
 ドロドロになったセレナとカンナさん。
 二人にかかった精液は、バスタブ一杯分くらいある気もするが。
 んなわきゃない。
 気のせい気のせい!
 それかノリコさんのせい!
 異世界転生時に無限アンリミテッド精液ザーメン生成ワークスみたいな異能を授けてくれたんだよ、きっと。
 お陰で今日も女達を抱きまくれる。
 感謝である。

「んーーー!」

 適度なセックスに満足したので、グイーッと体を伸ばす。
 心地の良い朝である。
 ザーメンまみれのセレナとカンナさんのせいか、息子は朝から元気。
 軽く下に押してみると、バチコーンっと勢い良く反り返って、腹を打つ。
 はは、こいつめ。
 まだ犯し足りないってか!

「(びくっ)」「(びくっ)」

 セレナ(尻)とカンナさんが震えた。
 まあ二人は流石に限界だろう。
 リュディアの尻でも叩きに行くか。
 そんな事を考えながら、風呂場を後にした。
 脱衣所で鼻歌交じりに服を着て、居間に続く扉をガラリと開く。

「…………」
「…………」

 時刻は結構な早朝。
 おそらく6時前。
 だというのに、なぜか居間には金髪のエルフとふんわり髪のシスターの姿。
 ピクリとも動かずに、テーブルに向かい合って座っている。
 なぜかうつむきながら。
 そして、なぜか顔を真赤にして、目をギンギンに血走らせていた。

「……寝てないのか?」

 軽く引きながらそんな事を聞いてみると、二人はくわっと目を開く。

「寝れるわけないじゃないか! セレナと姉メイドとエッチばっかりして!! あんな声を聞きながら、寝れるわけないじゃないかーー!!!」

 手をぶんぶん振りながらまくしたてるルーナ。

「そうですよ! ひどいです!! 新妻になった早々に、夫に放置されるとは思いませんでした……」

 涙目になりながら、テーブルに突っ伏すミレイ。
 二人とも、俺とセレナとカンナさんの3Pを居間で聞いていたらしい。
 徹夜で。
 他にやることはないのだろうかと言いたい。
 というか妊娠してんだから、休めよと思うのだが。

「あーーー! 私もコウとエッチしたい!!」
「私も……」

 両手で顔を覆ってこの世の終わりのような声を上げるルーナに、恥ずかしそうに追従するミレイ。

「朝までエッチして、ぐちょぐちょになって、何も考えられなくなりたい!!」
「わた……いや、それはちょっと」

 テーブルをバンバン叩くルーナに、追従しそこなったミレイ。
 ……そういうのを繰り返して、今のルーナになっちゃったのかなと思う。

「……そういうのは私に任せなさい」

 そんな事を言いながら、風呂場からセレナがやってくる。
 腰をぽんぽんと叩きながら。
 びちゃびちゃと精液を垂れ流して。

「あー死ぬかと思ったわ」

 そのまま、ルーナとミレイと同じテーブルに座る。
 びちゃっと。
 ついでにセレナは全裸のままだった。
 ばるんっと巨大な胸は、重力にも負けずにつんと上向いていた。
 股間がズキュウウウンとするのでやめてほしい。

「悪いな。やりすぎちゃったか」

「ふふ、大丈夫よ。私がどれだけあなたの相手をしていると思っているの? あと10日くらいは続けられるわよ」

 先程まで風呂に沈んでいた女のセリフとは思えなかった。
 さすが、いつも時間停止セックスで極限状態に陥っている女は言うことが違う。

「第一、謝らないで欲しいわ。私はもうあなたの……およ、およ、お嫁さんなのだから、何回だってエッチするわよ」

 銀髪を弄びながら真っ赤になるセレナ。
 めちゃくちゃ可愛いし、何回でもエッチするとかグッと来る事を言っているのだが。
 その銀髪がザーメンまみれな上に、全身もザーメンまみれで、可愛い事を言われてもと思ってしまう。

「……続き、する? だ、旦那様」

 とはいえ、超絶美人なセレナに上目遣いでこんな事を言われた日には。
 脊椎反射で、するー☆と答えてしまいそうなのだが。

「うう、ぐすっ、ひっく」
「はあはあ」

 目をうるうるさせるルーナと、目をギンギンにしているミレイに見られていると、さすがに遠慮してしまう。

「はあ……。お前たちは身重なのだから、ゆっくりと身体を休めていなさい。旦那様の相手は私にまかせて」

 ものすごく常識的な事を言うザーメンまみれの吸血鬼。

「やだああああ! だってそんなの! セレナだけずるいじゃないかあああ!」

「そうですよ! 結婚したのは私が一番最初なんですよ!?」

 ルーナとミレイが猛反発をした時、ふんわりと紅茶の匂いが漂ってきた。
 コポコポとお茶を注ぐ音が聞こえる。

「まあまあ。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いてくださいな」

 いつの間にやら、カンナさんがお茶の準備をしていた。
 バリッとメイド服を着こなし、黒髪をビシッとまとめ上げている。
 さっきまで風呂の壁にベチャッと張り付いていたのが嘘のようだった。

「さすが。気が利きますね」

「ふふ。できるメイドですから……そしてコウくんの奥さんです」

 お茶を淹れながら、カンナさんは妖艶な笑みを浮かべる。
 できるメイドなのに、仕えるべきセレナがザーメンまみれで、自分だけ身支度を整えている不思議。
 そのままカンナさんは、なぜか俺にもたれかかってくる。

「あむっ……んんっ」

 そして濃厚なキス。

「……奥さんなので、朝のキスです。私の口、精液臭いですか? コウくんの匂いですよ? 昨日あんなにエッチするから、お姉ちゃん、胃も子宮もコウくんの精液まみれなんです」

 唇を離して、どエロい事を言うカンナさん。
 奥さんなのかお姉ちゃんなのかはっきりさせて欲しいが、まさかのドッチーモ。

「あああああっ!? チューした!! 私より先にコウにチューした!!」
「ちょ――私を差し置いて何やってんのよ!?」
「…………」

 ぎゃあぎゃあとルーナとセレナが喚く中、ミレイはカンナさんにビビっていた。

「わああああああっ!! もうヤダ!!!」

 ルーナががたっと立ち上がって、金髪をかきむしる。
 そのままびたんと、床に仰向けに倒れた。

「もうやだーー!! 私にもチューしてくれないとやだ!! エッチしてくれなとやだあああああっ!!!」

 そして床で、じたばたじたばた。
 伝統芸能、駄々をこねるである。
 ザ奇行でもあるので、脳のダメージは深刻らしい。
 とはいえ、さすがに可哀想かな。
 徹夜は流石に良くない。

「……ルーナ、少し上で寝ようぜ。お昼くらいまで。俺も一緒に寝てやるから」

「ほんと!?」

「またこの子だけ甘やかして……なによ、もう」

 ムクッと身を起こす金髪のエルフと、むくれる吸血鬼。
 エッチはまずいけど、添い寝くらいいいだろう。

「起きるまでぎゅうってしてくれる?」

 小走りにやってきたルーナは、上目遣いでそんな事を言う。
 やたら可愛かったので頷く。

「やったーー! じゃあ寝よーえへへ」

 ルーナが嬉しそうに俺の腕に抱きつく。

「あ、あの! コウさん、私も、その……」

 ミレイが恥ずかしそうにもじもじしていた。

「ミレイもおいで」

「はい! うふふ」

 嬉しそうにルーナとは反対側の腕に抱きついてくるミレイ。
 ルーナとミレイ。
 俺の可愛い嫁たちだった。

「ちょ――待ちなさいよ!!!!」

 ガタッと椅子を蹴り飛ばして立ち上がるセレナ。
 ドパッと濃厚な魔力を放ちながら。
 普通にビビる。

「わ、私も一緒に寝たい」

 そのくせやたら可愛いことを言う。

「なっ!? いいじゃないか! お前は朝までコウとエッチしてたんだから!!」

「あれとこれは別でしょ! ずっと今まで、お前だけ旦那様と寝てたじゃない! 妻になったんだから私も一緒に寝たい! ずっと憧れてたのよ!!」

「……セレナさんの気持ちは私もわかります。私もずっとコウさんと寝たいなって思っていました。でも、この家のベッドはそんなに大きくないので全員は寝れないですよね」

 ぼそっとミレイがセレナの肩を持つ発言をしながら、マイベッドをディスりだした。

「まあまあ。とりあえず落ちついて話し合いましょうか。誰がコウくんと一緒に寝るのか。セレナお嬢様はともかくとして、お姉ちゃんも妻なので、コウくんと一緒に寝たいです」

「ともかくって何よ!? 私も妻よ!!」

 話をまとめたように見えて、ただカオスに持ち込んだカンナさんに促されるように、俺の妻たちはテーブルにつく。
 俺が魔法で作った四角形のダイニングテーブル。
 椅子は四脚。
 ルーナ、ミレイ、セレナ、カンナさんが座ったので、俺の席はなかった。
 ぽつんと立ち尽くしながら思った。
 え、なにこれ。

「まあここは、妻として優れた者がコウくんと一緒に寝るべきだと思うのです。その点、お姉ちゃんはメイドですから。ベッドメイクから就寝中のお世話、おちんちんのお世話まで完璧にこなします。コウくんと一緒に寝るのは私しかいないと思うのです」

 まともそうな事を言いながらも、サラッとシモネタを混ぜるカンナさん。

「わ、私だって……シスターですから、聖書を諳んじています。寝物語としてコウさんに聞かせてあげられますから、安眠できますよ!」

 カンナさんにビビりながらもがんばったミレイ。
 しかし、聖書には一ミリも興味がなかった。
 愛読書はでらべっぴんだったので。

「私はその、何かしら……はっ! この中で一番おっぱいが大きいわ!!」

 それでいいのかと突っ込みたくなるセレナ。
 しかし確かに一番大きい。

「私だって!! 私だって? ……あれ、私何もできない、ぐすっ」

 ポンコツお嬢様ルーナは、ただ泣いていた。
 いや、でも美人じゃん!

 そんなこんなで突然始まった妻会議。
 されど会議は踊る。
 喧々諤々と、時間だけが過ぎていった。


「お腹がすきましたにゃー!」
「ぺこぺこだよー」

 にゃん子とピョン吉が起きてきても、妻会議は終わらなかった。

「わああああっ!! とにかく私はコウと一緒に寝たいんだもんっ!」
「だからそれはみんな同じだって言ってるでしょ! どんだけ自分のことしか考えてないのよ、このバカ娘!」
「まあまあセレナさん。ルーナさんを納得させるなら、その辺のアリンコを納得させるくらいの覚悟でいかないと」
「……なにげに酷いですよね。ミレイちゃんは。まあでもそろそろ面倒くさくなってきたので、眠霧スリープミストを発動しちゃいましょうか」

 会議は踊りまくって、ブレイクダンスしちゃうレベルだった。
 カンナさんが実力行使に出ようとしていて、ビビる。
 そんな時だった。

「……相変わらず、ボロっちい掘っ立て小屋じゃのう」

「閣下?」

 玄関(セレナによって昨夜破壊済)から、女の声が聞こえる。
 やってきたのは、ゴージャスな金髪をなびかせた爆乳美女と、メガネをきらりと光らせたキャリアウーマン風の美女。

「……この狭い家に何人おるんじゃ。うちの牢屋のほうがまだマシじゃ」

「失礼とは思ったんですが、ドアが壊れていましたので……ノックもせずにすみません。エルフ移住者の住宅予定地の割当が終わりましたので、エスメラルダ様にご足労願って、閣下にご報告と認識合わせに参りました」

 しげしげとマイホームを見渡したエスメラルダさんは、なぜか口元を袖で覆っている。
 そして、エレインはなんでそんな話を俺に言いに来るのか、本気でわからない。
 俺に報告してどうすんの??

「残念なことに、閣下は領主ですから」

 ソウダッタ!

「……なんか妙な匂いがすると思ったら、セレナ。お主、なんて格好をしておるんじゃ。ゴブリンだってもう少しマシじゃぞ」

「えええ!? ゴブリン!?」

 ザーメンまみれだったのが乾いてきてバリバリになったセレナは、お祖母様に心を抉られていた。

「お祖母様ー!! 聞いて! みんなが酷いんだー!」

「おお、ルーナ。どうしたんじゃ?」

「えっとねー私とコウはいちゃいちゃって愛し合ってるのにね、みんながダメーってね、コラーってね」

「……言うとる意味がぜんぜんわからん」

「えええ!?」

 ルーナの説明は絶望的に下手だった。

「……ここにいる4人全員がコウさんの奥さんになったんですけど、ベッドが狭くて、コウさんと一緒に眠れないって相談していたんです」

 ミレイが通訳してくれたが、状況は至極明快だった。

「全員!? カンナさんもですか!? 私は!?」

「なるほどのう」

 なぜか自己主張するエレインと、納得したエスメラルダさん。

「……こんなボロ家しかないのに、妻を4人も娶る婿殿は人生設計が破綻しとる、としか言えん」

 ぐはっ!!!
 お祖母様は俺の心も抉る。
 異世界に来て人生設計とか!?
 そんなん生まれて一度も考えたことない!!

「まあそんなバカボンボンでも、うちの婿殿じゃからなあ」

「……あと我がラグニード王国の伯爵様です」

 バカボンボンってどんな悪口!?
 それでいいのだとか言えばいいんだろうか。

「よし妾が城でもやろうかのう」

 お駄賃でもくれるみたいなノリで。
 お祖母様は、妙なスケールの話をぶっこんできた。
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