ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第六章 エルフ王国編

第245話 魔族

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 陽は高くなり、時刻はたぶん昼くらい。
 俺たちの城攻めは――。

「え、えーいっ!!」

 ――ひゅるるる、ズガンッ!

「おお! なんか真ん中の塔っぽいとこに当たった。あと掛け声もかわいかった。フェルちゃん75点!」

「やったー! これで我が2位だ!!」

 ――なんかよくわからない競技に発展していた。
 岩でどれだけ効果的に砦を破壊できるかを競うゲーム。
 投げた岩が描く放物線の美しさや、着弾地点、投げる際のかわいらしさ(芸術点)を点数化した奥深い競技である。
 現在のポイントは以下の通り。
 3位フィリス 523点。
 2位フェルちゃん 605点。
 1位俺 2億5千万点。
 ちなみに審査員は俺である。

「ぐぬぬぬ! この私がビリなんて許せません!! 見ててくださいよっ!?」

 ふんすと鼻息荒いフィリスの番が回ってきた。
 フィリスは重苦しい全身鎧をがしょがしょ言わせながら、あたりで最も巨大な大岩の元に向かう。
 あれ大岩っていうか、もう小山なんじゃないかっていうレベルだ。
 まさか、あいつ……。

「ふんぬうううう!!」

 小柄なフィリスが大岩を持ち上げようとしている様はシュールだった。

「ここに来て球の大きさで勝負しようって腹か。無茶しやがって……」

 とりあえずそれっぽい雰囲気を出しながら解説してみた。

「ええ!? 球の大きさって点数になるの?? 我は聞いてないぞ!!!」

 情弱なトカゲがなんか言っているが無視である。
 聞いているわけないよね、今考えたんだもの。

巨岩大投奥義ビッグバンアタック……この競技終盤の大技で、その点数は1万点だ」

「ええええええ!!」

 技名と点数が適当なのがこの競技の良いところである。

「さっき主がやってたファイナルジャッジメントポイズン(2億点)よりは低いけど、そんな点数入れられたら我負けちゃう……くそう!!」

 フェルちゃんが悔しそうにじたばたしている。
 ていうか、ちょっと待て。
 なんだその恥ずかしい技名は。
 ポイズンってなんだよ。
 どんな技だったか忘れたけど、バカなんじゃなかろうか数分前の俺。

「ふふふ、これで2位特典のコウ様がなんでも言うこと聞いてくれる権利は私のものですよ!」

「ええええ!? 主に頭なでなでしてもらおうと思ってたのに!!」

 さらに待て。
 そんな特典あるの聞いてないんだけど。
 頭撫でるくらいしてもいいけど。

「毎日コウ様のうんちを顔に塗りたくってもらうのは私です!!」

 フィリスがかわいい声をドヤっとさせながらドン引きする事を言っていた。
 こいつなんでこんなに無駄なかわいさを持っているんだろう。
 鎧着ててわかんないけど、中身はすごい美人なのだ。
 無駄に。
 あとうんこを顔に塗るのはしない。
 絶対に。

「ふぬおおおおおお!!」

 何やら気合の入ったフィリスが大岩を持ち上げた。

「おお」「くそー!」

 フェルちゃんと一緒に声をあげてしまう。
 フィリスの持ち上げた岩は、尋常ならざる大きさだった。
 一般的なマイホームくらいの大きさ。
 巨大すぎる岩の下に小さなフィリスがちょこんと立っているのは、CGかな?っていうくらい異常な光景だった。

「ふ、ふふふ。筋肉の勝利です!」

「吸血鬼めー!」

 ドヤりながらもやや苦しそうなフィリスと悔しそうなフェルちゃん。
 白熱しているところ悪いが、正直俺はこの遊びに飽きていた。
 そろそろ切り上げてカーチャンにセクハラしに行きたい。

「あとはこれを放り投げるだけです……ぐ、ぐぬぬぬ! うおおおお――あ」

「「あ」」

 ぷちんと大岩にフィリスが潰された。
 ずしーんと辺りに岩が地面に落ちる音が響く。
 どんだけ重い岩だったんだよ。
 フィリス。
 本当に無茶しやがって――!!

『ぐはっ』

 岩の下からやたら渋い断末魔の悲鳴が聞こえた。
 フィリスの着ていたリビングアーマーのなんとかさんのものだろう。
 死んだんだろうか。
 岩に潰されちゃったもんね。
 フィリスなんかに着られるから。
 まあ、セレナ率いる万国びっくり人間ズ(アンデッド)の一員だから大丈夫だろう(勘)。
 フィリスもきっと無事だ(勘)。
 まあここは、である。

「俺が決めてやるか。巨岩大投奥義ビッグバンアタックをな」

「主!?」

 ついでに砦にトドメを刺してやろうと、フィリスを潰した岩に向かった時だった。

「その必要はないだろう。もはや砦は風前の灯だ」

 エルフのイケメンが声をかけてきた。
 美しい金髪がサラサラと風に揺られて、イラっとさせる。
 その涼やかな目元も合わさって、舌打ちが漏れてしまう。
 インキンタムシを患っているくせに。

 砦の方に目を向けると、確かにひどい有様だった。
 堅牢そうだった黒光りする城壁は無残にも崩れ落ち、砦そのものも至る所が瓦解している。
 火の手もいくつか上がっているようで、まさに陥落寸前といった様子だ。
 3人で岩を投げまくったもんな。

「この城攻めは我らの勝ちだ。知性のない戦術ではあったが、すべて貴公らの功績であろう。さすがは、ルシアリーナ姫様のお、おっ、おお、おっあう……」

 どうしても夫を言いたくないようで、インキンさんがプルプル震えてしまう。
 ルーナを俺に寝取られたのを未だに認めたくないのであろう。
 イケメンざまあである。

「これで終わりなのか? じゃあ我が2位だな!! 主、頭なでてー」

 フェルちゃんが嬉しそうにパタパタ飛んできた。
 美顔をにこにこさせながら。
 中身はトカゲでもかわいかったので撫でてやる。

「ああっ! なでなですごい!! あ、主が我を撫でてくれてりゅ、しゅ、しゅごい!!」

 ちょっと撫でてやっただけなのに、フェルちゃんはビクンビクン震えながら、よだれを垂らして悶えていた。
 ぱっと見は涎を垂らす美女なのでエロいのだが。

「う、うう、幸せ……なんて幸せなんだ……本当に人間になって良かった。うう、ぐすっ」

 だんだんマジ泣きしだしたので、引いた。

 その時だった。

「敵襲!!」

 突然響く、慌てた声。
 険しい山の麓。
 そこに設けられた大門が開け放たれていた。
 中からは夥しい数のオークが溢れ出してくる。
 堰を切った濁流のように。

「オークとゴブリンの大群……5万はいるぞ」

 近くのエルフ兵がそんな事を言っていた。
 オークだけではなくゴブリンもいるらしい。
 そういえば緑色の小人みたいなのがオークと一緒に走っているのが見えた。
 あれがゴブリンだろうか。
 初めて見た。
 有名な雑魚キャラ兼レイパー(性犯罪者)である。
 ぜひオークと一緒に美人なエルフ兵を犯してほしい!
 俺はヨコシマな理由で敵にエールを送った。

「砦が破壊されれば、こうなるか……」

 インキンさんは苦い顔で唸っているが。

「なに、厄介な砦がなければ寡兵の魔物など恐れるに足りん!」

 そんな事を言ったのは不敵な笑みを浮かべたカーチャンだった。
 自信に満ち溢れた美女とかエロい。
 カーチャンはオークたちを睨みながら、俺の隣に立つ。
 そして、ぽんと俺の肩を叩いた。
 スキンシップ頂きましたっ!!

「よくやってくれたな、アサギリくん。ここからは私に任せてくれ。双枝の陣に移行せよっ!!!」

 カーチャンが凛とした声を張り上げる。
 かっこよかった。
 思わず、こっそりと太ももを撫でてしまう程に。
 すべすべ!!!


 砦を破壊されたオークたちは決死の突撃を敢行していた。
 狂ったように目を血走らせながら、エルフ軍に向かってくる。
 待ち構えるエルフ軍は焦ることなく、速やかに陣形を組んでいく。
 V字を描くような陣形だった。
 突撃する魔物達を包み込むように、やんわりと受け止めていく。
 双枝の陣とはよく言ったもので、確かにエルフ軍の陣形は双つに伸びた枝のように見える。
 包み込みながらも、槍を突き出して攻撃する双枝の陣は、オークたちを広範囲で攻撃していく。
 半包囲。

「グガッ」「ブヒッ!」「グギギ」

 オークたちの醜い悲鳴が聞こえる。
 エルフの巧みな戦術によって、魔物達の突撃の勢いは止まっていた。

 おお。
 エルフって強い。
 バカだけど。

「バ、バカじゃない! 攻城兵器を作る技術が乏しいだけだ!!」

 カーチャンが顔を赤くしながら言い訳をしていた。
 かわいい。

「見てろよ!? エルフの真骨頂を見せてやる。鳳仙花の戦術!!」

 カーチャンが叫ぶと、エルフ軍の奥から色とりどりの鮮やかな光が放たれた。
 魔法攻撃。
 エルフの放った魔法は、オークどもを木端微塵に薙ぎ払った。
 派手な攻撃だった。
 見ていて面白い。
 あとさっきから戦術が植物っぽくてシャレオツである。

「薔薇の棘!!」

 今度は数多の矢がオークたちに降り注ぐ。
 なるほど、矢を薔薇の棘に例えているのか。
 カーチャンおしゃれ。

 エルフの攻撃にオークたちは殲滅されつつあった。
 最初に双枝の陣とかでエルフ軍の前に固められたのがデカかったと、知力100越えの俺は分析する。
 脳内孔明さんも「お気づきになられましたか」と満足気である。
 まあこの戦は勝ちましたわ。
 俺はカーチャンのエロ太ももを撫でまわしているだけなので、気楽だった。

「ア、アサギリくん……! 戦の最中なのにエッチなことをしちゃダメじゃないか……」

 頬を赤らめたカーチャンがそんな事を言っているが、全然抵抗しようとはしなかった。
 もう堕ちてますわ、この人妻。
 そろそろ子宮にちんこでキスをしたい。

 そんな時だった。
 ズガンとエルフ軍の一角がはじけ飛ぶ。
 飛び出してきたのは、騎馬の一軍。
 馬に跨がっているのは、立派な鎧を着た人型。
 人間……?

「魔族……」

 カーチャンがひゅっと息を飲む。
 魔族? あれが?
 思わず敵の騎馬に目を凝らす。

 巨大な体躯を誇る黒馬。
 跨るのは青い鎧を身にまとった兵士。
 兵士たちの髪は赤く、そして――。
 ――その肌は真っ青だった。

「やってくれたな、エルフども!!」

 騎馬の一軍にあって、最も体格のいい大男が流暢な言葉を話す。
 うわ、喋ってる……。
 喋る敵にはロクなのがいない。
 かつてオーガと戦った記憶が思い出された。
 あの時は死にかけたな。

 魔族の大男は巨大な槍を振り回してエルフ兵たちを薙ぎ払っていく。
 その短く整えられた赤髪の短髪がやけに鮮やかで。

「出てこい! いるのであろう、ジークリンデ!?」

 ジークリンデ・アナスタシア・イル・エリシフォン。
 魔族の大男はカーチャンを名指ししたのだった。
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