ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第六章 エルフ王国編

第239話 エルフの状況

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 エルフの国エルフィニア。
 人間の王国ラグニードの北方に位置する強国。
 エルフは多くが魔術の適性を持って生まれる。
 人間は千人に一人が魔術の才能を持って生まれるのに対して、エルフはその七割が魔術の素質を持っていた。
 故に、エルフ騎士団は魔法戦士の集まりであり、その戦力は人間達を軽く凌駕していた。
 戦力的には、大陸を支配できるだけのものを持つエルフ。
 しかし、排他的な性格であるエルフには領土欲というものはなく、自分たちだけで静かな暮らしを営む事を好む。
 出生率が低いこともあって、エルフは争い自体を好まない。
 好まないのだが、世界情勢はそれを許さなかった。
 魔族。
 ラグニード王国と同じくエルフィニアも魔族からの侵略を受けていた。
 西の国境を魔族と接しているのだ。
 しかも、オークなどの魔物が主力である人間向けの侵略と違い、エルフ王国が敵対するのは魔族そのもの。
 真の魔族軍との戦いに明け暮れているのだった。
 その戦況は膠着状態。
 一時期は、魔族の大攻勢に滅びかけたエルフ王国だったが、数百年前に戦況を覆す大英雄がエルフ側に現れる。

「……その英雄は、強い上に美しかった。つまり妾のことじゃな」

 顔色一つ変えずに言い放ったエスメラルダさん。
 自意識過剰な気もするが、本当に強くて美人なので何も言えない。

「あなたが化物じみた強さなのは知っているけれど、なんでそれで魔族と膠着状態なのよ? あなただったら魔族なんて一捻りでしょうに」

 同じく化け物じみた強さのセレナさんがそんな事を聞いていた。
 そういえば本当の魔族って見たことないけど、セレナたちに比べたら大したことがないらしい。

「……うむ。そこよな。確かに強くて美しい妾がいれば魔族など一捻りじゃ。じゃが、奴らはやっかいな砦を築きおった」

「とりで?」

 ルーナが不思議そうな顔で聞き返す。

「……うむ。なんでエルフのお主が知らぬかと小一時間説教したいのじゃが、まあよい。砦じゃ。強力な抗魔石で作られた、な」

「それは厄介ね……」

 コーマセキという言葉に、セレナが深刻な表情を浮かべる。
 どうしよう、何が厄介なのか全然わからない。
 とりあえずルーナを見ると、ルーナもわからなかったのか、にへらと笑っていた。
 バカだけど、うちの嫁は可愛い。

「抗魔石っていうのはね、強力な抗魔力を持つ鉱物のことなのよ。つまり魔法が効かないの。ものすごく貴重なのだけれど……私達のようなか弱い魔術師にはやっかいなものなのよ」

 セレナがそんな説明をしてくれた。
 魔法が効かないのは厄介だとは思うが、私達のようなか弱いってあたりは聞き間違いだろうか。
 セレナもエスメラルダさんも全然か弱く見えないんだけど。

「……まあ、魔法が効かなくても妾なら砦の一つくらい潰せるんじゃが」

 潰せるらしい。
 やっぱりか弱くなかった。

「奴ら抗魔石の砦を2つも築きよったんじゃ。かなり離れた地点にな」

「……魔族ってお金持ちなのね」

「ほんに。エルフが築こうとしたら数年分の国家予算が吹き飛ぶわ。そもそも妾の知る限り、砦を築ける量の抗魔石なんぞ存在せんはずなんじゃ。故に貴重で値が張るんじゃし……魔族の連中がどうやって調達したのかは謎じゃ」

 ふむ。
 とりあえず魔族がお金持ちなのはわかった。
 でも、何がそんなに問題なのかはわからない。
 やばい砦が2つあるなら、1個ずつ潰せばいいじゃんね。
 そんな事を考えていると、エスメラルダさんは、メイドさんを呼んで、巨大な地図を持ってこさせた。
 1メートル四方くらいはありそうな巨大な地図で、結構精密だった。
 ミミズ文字が書かれているので読めないが、たぶんエルフ王国の地図っぽい。

「魔族の拠点があるのは、北のサザニア大峡谷と……南のコレート山脈じゃ」

 地図の上に、とんとんと砦の模型を置くエスメラルダさん。

「見事に南北の両端ね。三千キロは離れているじゃないの」

 地図に置かれた2つの模型を見て、セレナが呻く。
 三千キロて。
 スケールがでかすぎてイメージできない。

「うむ。我がエルフィニアの領土が縦長であるのを突かれてな。このどちらかを攻めると、どちらかが攻め込んでくるという戦法を取られておる。妾が一人しかおらぬのを良いことに。それぞれの砦を率いる敵の将もなかなか優秀でな。妾クラスとは言わぬが、エルフの中には、妾以外に相手に出来るものがおらぬ。以前、ナーシャに10万を率いさせて南のコレート砦を攻め込ませたんじゃ、妾は北のサザニア砦を受け持ってな。結果は、妾の攻略が終わらぬうちに、南の十万が壊滅。ナーシャも瀕死の重傷を負うといった有様じゃった」

「……面目ありません」

 直立したナーシャさんが悔しそうな顔をしていた。
 悔しがる人妻ってエロいな。
 夫が寝ている横で犯して同じ表情をさせてみたい。

「おのれアサギリィィイイ!!」

 ……夫が絶賛俺を恨んでいる最中なのでやらないが。
 ていうか、お父様。
 エスメラルダさんの話を聞かずに、俺を睨みつけてばかりなんだけど。
 気まずい。

「そこでじゃ、婿殿」

 不意にエスメラルダさんに呼ばれた。
 美人に真正面から見つめられるとドキドキしてしまう。

「婿殿に此度の沙汰を言い渡す。我がエルフィニアにもたらした数々の損害に対する補填として、南北どちらかの魔族砦攻略を受け持ってもらう。我がエリシフォン家の客将としてな」

 ほう。
 なるほど。
 その砦をぶっ壊せば、テロ及び結婚式の邪魔をチャラにしてくれるとな。

「義母上!? 南北の魔族砦攻略はエルフの悲願ですぞ! それをこんなチンパンに頼るなんて!!」

 お父様が未だにチンパン呼ばわりしてくる件について。
 いや、俺だってやりたいわけじゃないからいいんだけどさ。

「黙れ、ギルバート。エルフはこのままでは滅びるぞ。現状、魔族供の迎撃には成功している。野戦なら彼奴らの抗魔石砦の邪魔は入らぬからな。じゃが、エルフ側の被害も少なくない。我らはそもそも出生率が低いんじゃ。このまま戦力を削られていったら、30年でエルフ騎士団は壊滅し、エルフは滅びる。妾以外」

 あ、エスメラルダさんは滅びないんだ。
 強いもんなー。

「わかるか、ギルバートよ? 我らはエインヘリヤルであり、吸血鬼を手なづけておる婿殿に頼るほかないのじゃ」

「ぐぬぬぬぬ!」

 お父様が悔しそうに呻いていた。
 俺に頼るのがよっぽどいやらしい。

「ちょ、ちょっと!? 誰も手懐けられてなんていないわよ! ……わ、私が好きになっちゃっただけで」

 セレナが真っ赤になりながらチラチラと見てくる。
 なんでこんなに可愛いんだろう。
 何食ってんだよ。あ、俺の血か。

「って、そもそも私達は参戦できないわよ? 獣人たちとの間に赤月の盟約があるのだから」

 セレナが戸惑ったようにそんな事を言っていた。
 赤月の盟約か。
 なんか前もそんな事を言っていた気がする。
 なんなんだろう。

「赤月の盟約っていうのはね。成り立ちを話すと長くなるんだけれども、要は私達吸血鬼が魔族と戦うと、獣人たちが人間に宣戦布告するっていうものなのよ。結果的には吸血鬼と獣人の戦いになって、私と向こうの九尾の狐との戦いになっちゃうの。……その昔、私とあの狐が戦った時は、世界が滅びかけてね……」

 セレナが若気の至りみたいなノリで言っているのだが、世界を滅ぼすのは止めてほしい。

「けったいな盟約じゃな。とはいえ、バレない程度には協力してくれるんじゃろうな? お主の大切な婿殿が危険な目に合うんじゃぞ?」

「……それはその……私だってコウが危険な目に遭う度に、心が潰れそうになっているのだから、なんとかしようとは思っているのだけれど」

 セレナが切なそうな顔で、もじもじと俺に熱い視線を送ってくる。
 だから、可愛すぎるっつーに。

「って、なんでコウが戦争に行く前提で話が進んでいるんだ!? そんなに危ないこと、私が許すわけないじゃないか!!」

 ルーナが泣きべそをかきながら抱きついてきた。
 はっ! そういえばそうだ。
 なんかいつの間にかエスメラルダさんのお手伝いをする前提になっていた。
 エスメラルダさん、恐ろしい女。
 伊達に千年生きてない。

「……ルーナよ。これはお主と婿殿のためなんじゃぞ?」

「えええ!?」

「婿殿が戦で功を上げれば、お主との結婚を公式に認めてやろうと言うのじゃ。婿殿と胸を張って結婚したいじゃろう?」

「し、したい!! そ、そうだったのか……コウは私と結婚するために戦争に……私を好きすぎるから戦争に……」

 あっさりと騙されたルーナが目をぐるぐるさせながらブツブツ言っていた。
 相変わらずちょろい女だった。

「……ちょっと良いでしょうか?」

 そんな時、カレリアさんが控えめに手を挙げる。

「なんじゃ、斬姫よ」

「アサギリ様は一応、ラグニード王国の家臣なわけですが、勝手に他国の戦争に協力してもいいんでしょうか?」

 カレリアさんの至極もっともな疑問に、その場の全員が押し黙った。
 まずい気がする。
 社長に黙って、他社との契約を結んじゃうようなものだよね。
 絶対後で怒られるじゃん。

「……バレなければ、大丈夫だと思うんじゃが」

 エスメラルダさんはそんな適当な事を言っていた。
 こういう所、ルーナに似ている。

「……駄目ですね、母上。アサギリくん、実務者レベルで、その辺の契約をちゃんと詰めましょう。王国との調整も出来る家臣を呼んでくれませんか?」

 ナーシャさんにそんな事を言われた。
 そんな事が出来る家臣と言ったら、というか俺に家臣って一人しかいないんだけど。


「な、なんですか!? 突然!?」

 そんなわけで、カレリアさんにエレインを連れてきてもらった。
 便利な空間魔法で呼ばれたエレインは、見事に戸惑っている。
 今日のエレインは、いつものスーツ姿に化粧っ気のない顔。
 というか、なんかやつれて見える。
 美しい榛色の目の下には、黒々とした隈ができていて、結い上げた金髪も所々ほつれている。

「か、閣下!? 見ないで下さい! 今日はすっぴんなので!! うう、閣下がいないからって気を抜いたばかりに……」

 俺に気づいたエレインが恥ずかしそうに顔を両手で覆っている。
 すっぴんだと隈ができているとか。
 仕事のしすぎで心配になるのだが。

「誰のせいだと思っているんですか!? そんな事を心配されるなら仕事して下さい!!」

 それは断る。

「……騒がしい娘じゃな」

「えええ!? エスメラルダ・フレイヤ・エリシフォン元帥!? エルフ王国の筆頭家臣がなんで!?」

 エスメラルダさんに気づいたエレインがフルネームを叫んでいた。
 元帥て。
 なにそれかっこいい。

「頭が高いぞ、人間の娘よ。人間の分際で」

「えええええ!? ギルバート・ピグモン・ド・ラ・エリシフォン公爵!?」

 ピグモンて。
 お父様は突っ込みどころのある名前をしていた。

「……こ、この私を知っているとは、なかなか見どころのある娘よ。……ふむ。よく見れば見目もなかなか整っておる。どうかね? 今夜私と?」

「あなた地が出ていますよ?」

「……お父様、サイテー」

「えええ!? ナーシャさん!? ルーナちゃん!?」

 どさくさに紛れてエレインをナンパしだすお父様。
 あえて言うならクズである。
 妻と娘には軽蔑されているが、親近感が湧いてしまう。
 俺のエレインに手を出すことは許さんが。

「……急に悪いな、エレイン。ここは私の実家なんだ」

 ルーナがそんな事を言いながらエレインに笑いかけていた。

「ええええ!? 実家!? あのエリシフォン家が!? ルーナ様ってエリシフォン家の!?」

 残酷なことに、エレインの戸惑いは悪化していた。


 エレインが落ち着くのを待って、事情を説明してみた。

「……状況は理解しました。私を置いて、ルーナ様を連れ戻しに行ったと思ったら、なんでエルフ王国で大暴れしているのかとか、そもそもルーナ様が帰ったんなら私を正妻として可愛がればいいのに、とか言いたいことはたくさんありますけど」

 メガネをくいっと直したエレインに睨まれた。
 その仕草が色っぽかったので、今すぐかわいがってやりたくなった。

「なんでお前が正妻になるんだ!? 妻は私に決まっているじゃないか!!」

「まさかルーナ様が、あのエリシフォン家のお嬢様だったとは……」

 喚くルーナを呆れた目で見つめるエレイン。
 エリシフォン家というのは、かなり有名な家だったらしい。
 王族に連なっているのだから当たり前なんだろうか。

「……我がラグニード王国としては、願ってもない状況です。エルフィニアと同盟を結ぶことは、国家の外交悲願の一つでしたから」

「勘違いするでないぞ、人間の娘よ。エリシフォン家が婿殿と婚姻を結ぶのじゃ、ラグニード王国とエルフィニアが同盟を結ぶわけではない」

 興奮気味なエレインに、エスメラルダさんが釘を刺す。

「それでも構いません。我がアサギリ家との同盟の内容を伺っても?」

「細かい所はナーシャと詰めてほしいが、そうじゃな……。強力な軍事同盟、人材の派遣、交易かな」

「……結構でございます。特に交易といった部分が素晴らしいです。あの排他的なエルフィニアが人間と公式な交易を許可するとは」

 なんか知らないけど、エレインが喜んでいた。
 自分の女が喜ぶのは俺も嬉しい。

「全ては婿殿が魔族の砦を落としてからじゃがな」

「わかっております。閣下?」

 エレインが俺に向き直る。
 そして、突然抱きついてきた。
 ふわりと広がるエレインの匂い。

「……惚れ直してしまいました。さすが私の閣下です。王国との調整などは、私がやっておきます。どうかご武運を。そして、どうか――」

 そして、エレインが唇を寄せてくる。
 軽い口吻キス
 思い切り後を引くような。
 わずかにエレインの唾液の味を残しながら、唇が離れていく。
 エレインは目を潤ませながら俺を見つめる。

「――どうか無事に私の下に帰ってきて下さいね、閣下」

「ああ」

 俺は頷きながら、とりあえずエレインに軽くパイタッチを決めておいた。
 慎ましいけど、柔らかい。

「ああああああ!? わ、私の目の前で何しているんだ!? コウにキスしちゃ駄目じゃないか!!!」

「エリシフォン家のご長女ともあろうお方が何をケチくさい」

「お前にケチって言われる筋合いなんかない! あああ、コウ、大丈夫!? わ、私ともちゅーしなきゃ駄目じゃないか!! あむっ、ぺろぺろ」

 泣きわめいたルーナが熱烈に舌を絡めてくる。
 ごくごくと嚥下するルーナの唾液。
 甘かった。

「あああああさぎりいいいい!? 死ねええええ!!」

 お父様が普通に剣で突いてくるので、とっさに指で反らす。
 あぶねえだろうが。
 ヒヤッとしながらも、ルーナの乳をモミモミしておいた。
 うーん。
 にしても、また戦争に行かなきゃいけないのか。
 めんどいなー。

「なんじゃえ? 婿殿はまだ不満なのかえ? かなり破格の条件だと思うがな」

 嫌そうな顔をしていたらエスメラルダさんに見つかってしまった。
 いや、そもそもが俺のテロのせいだっていうのはわかっているんだけど。
 その見返りが同盟とか言われても、しょんぼりである。
 エレインは喜んでいるのだが、なんか足りないと思うんだよね。
 主にエロさが。
 そもそもですよ。
 このアサギリ・コウをそんな簡単に動かせると思ってもらっちゃ困るのである。
 ルーナと違って、俺はそんなにチョロくはないのだぜ。

「……ふむ。そうじゃな。婿殿には、妾が個人的にお礼をしても良い。魔族の砦を落としたら、この体を好きにして良いぞえ?」

 エスメラルダさんは、そう言って見事な乳房をギュムッと掴む。
 そして、俺に色っぽい流し目。

「お、お祖母様!!」

「ふふ、冗談じゃ。婿殿とて、こんな千歳のババアなんぞ……」

「ふははっは! 義母上も冗談がうま……」

「やらせていただきます!!!!」

 俺の意思はあっさりと固まっていた。
 待っていろよ、魔族めっ!!

「「「「「「…………」」」」」」

 やる気になった俺をその場にいる女性全員が微妙な目で見つめていた。
 え、何? なんか文句あんの??

「い、いや。いいんじゃ……期待しておるぞ、婿殿」

「はい!!!」

 俺の返事は晴れやかだった。
 絶対に揉みしだいてやんよ。
 そのミレニアムパイをな!!!

「あとギルバートよ。さっきなぜ笑ったのか説明してもらおうか」

「ええええ!?」

 青筋を浮かべるエスメラルダさんにお父様がビビりまくっていた。
 どこからどう見てもただの美人なのだが、エルフから見るとちゃんと千歳に見えるんだろうか。
 エルフは謎が多い。
 まあ、俺は抱けるけどね!
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