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第六章 エルフ王国編
第238話 ルーナパパ見参
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部屋に突然入ってきたイケメン金髪ダンディーエルフ。
上にちょりんとカールした髭が、少しイラッとさせる。
でも、そんな事を考えてはいけない。
だって、このダンディーは嫁の父親。
「貴様がアサギリか!? よくも我がエルフィニアで暴れてくれたな、この犯罪者が!!」
ルーナパパは俺を指差して、悪そうな笑みを浮かべる。
なんかよくわかんないけど、パパすげえ怒ってんじゃん。
やべーって。
胃がキリキリする。
これだら嫁の実家になんか来たくなかったのだ。
「貴様の身柄はデルフィニア公に引き渡すと約束してきたわ! 我がエリシフォン家でたーっぷりと厳しい尋問をした後でな……くくく、覚悟しておけ、人間風情が……」
パパはすでに済んだ話を蒸し返そうとしていた。
さすがパパ。
一家の大黒柱なだけはある。
どうしよう。
ルーナを連れて逃げるべきだろうか。
パパの迫力半端ないし。
「……今更出てきて何を言っとるんじゃ、このトッチャンボーヤは」
「ええ!? は、義母上? と、とっちゃん??」
途端にパパは面白い顔をしだした。
これぞ三枚目といった顔で、エスメラルダさんを見ている。
「……そういえば昨夜はお帰りになりませんでしたね。また朝まであのいかがわしいお店にいらしたんですか? デルフィニア公と」
「な、ナーシャさん!?」
「……お父様、サイテー」
「ルーナちゃん!!?」
ルーナパパは、三世代美女達に散々な目で見つめられていた。
ルーナ達の目は、まるでゴミを見るようで。
なんか納得した。
エスメラルダさん、ナーシャさん、ルーナといった超絶美女に囲まれて暮らすお父さんとはどんな超人かと思っていたのだが。
なんてことはない。
普通の人間だったようだ。
ちょっと安心した。
どんな世紀末覇王が出てくるのかとビビっていたのだが。
「ひ、酷いじゃないか、ルーナちゃん。私はルーナちゃんのパパだよ?」
「……喋らないで、お父様。息が臭い」
「こんなに離れてるのに!?」
むしろ、可愛そうになってきた。
鼻をつまんだルーナは反抗期バリバリだった。
普段のほほんとしたルーナからは想像できない。
ルーナにこんな目で見られたら、俺は生きていけないかも知れない。
「うう、ごめんね、コウ? お父様が酷いこと言って。すぐ黙らせるからね?」
俺に抱きついてきたルーナは、笑顔で酷いことを言っていた。
黙らせるて。
「ル、ルーナちゃん!? さ、触ってる!? パパのルーナちゃんが薄汚い人間に触ってる!?」
ルーナパパが俺とルーナを見て、プルプル震えていた。
親の前でいちゃつくとか、すげえ気まずい。
早く離そうと思うのだが。
「何言ってるんだ!? 夫婦なんだから抱き合うのは当たり前じゃないか!」
空気の読めないルーナは状況を悪化させていく。
「フーフ!?」
お父さんの顔が真っ赤になる。
間違いない。
絶対にブチギレている。
「どうしたんだ、コウ? なんでいつもみたいにぎゅってしてくれないの? 気分悪い? おっぱい揉む?」
「オッパイ!?」
ルーナはお父さんを煽るのに余念がなかった。
マジやめろよお前、と思いつつも可愛いからタチが悪い。
「……は、はは。そうか、パパわかったぞ。人間奴隷とお嫁さんごっこかな? ルーナちゃんおままごと好きだったもんなー! でも、そいつは駄目だぞー? 人間が好きならパパが新しいのを買ってあげるから……」
「……人間を買うとかお父様サイテー」
ルーナのパパを見る目がどんどん冷たくなっていく。
たしかにクズな事を言っていたが。
「い、いや! 今のは言葉のアヤで!」
「アサギリくんはあなたが毎晩買っている娼婦とは違うのですよ?」
「ナーシャさん!?」
父親が母娘にボコられていた。
娼婦を買うのは悪いことではない。
もっと胸を張ってほしいのだが。
「……お父様、ホントサイテー。あと臭い」
娘の好感度はだだ下がりだった。
「ル、ルーナちゃん!? パパそんなに臭いかな? ちゃ、ちゃんと歯は磨いているよ!? そんなに口臭ないと思うんだけどなー」
「……口も臭いけど、存在が臭い」
「ソンザイ!?」
お父様は泣きそうだった。
ちょっと本気で可愛そうになってくる。
ルーナの反抗期っぷりがちょっと酷い。
お父様はぷるぷると肩を震わせながら、娘の口撃に耐えていた。
そして、ギンと俺を睨むと。
「……許さんぞ、アサギリ」
なんで!?
八つ当たりにも程がある。
まあ、しかしルーナの父親なのだ。
良好な関係を築いておきたい。
「落ち着いて下さい、お義父さん」
「オトオオサン!? 今、私をオトオオサンと呼んだか!? このロクデナシが!!! 貴様なんぞにオトオオオオサンと呼ばれる覚えなんぞないわっ!!!」
誰もオトオオオオサンなんて呼んでないのだが。
オトオオオオサンは血の涙を流しそうな勢いで俺を睨みつけてきた。
結構、怖かった。
「……お父様は、一応、このお腹の子供の祖父になるんだ。コウがお義父さんって言ったのは間違ってないじゃないか!」
俺に抱きついたルーナが爆弾を投じていた。
今、それを言うのはどうかと思うんだが。
「ク、クォドムォ!? い、今なんて言ったんだいルーナちゃん!? ゴォドゥマってなんだい!?」
マジ泣きしながら、ルーナに掴みかかろうとするパパ。
ルーナは無慈悲にもさっと後ろに下がる。
あとさっきからパパの発音がネイティブすぎて辛い。
「おいアサギリ!? ルーナちゃんに何をした!?」
ルーナにあっさりと避けられたお父様は俺に掴みかかってきた。
近くで見るとマジでイケメンだった。
目が血走っているが。
まあ、俺も男だ。
ここは素直に謝罪すべきだろう。
「……申し訳ありません。娘さんを妊娠させてしまいました!」
そう言って、ガバっと頭を下げる。
殴られるのも覚悟の上である。
「…………」
しかし、ルーナパパは面白い顔で固まるだけだった。
空洞な目と口。
真っ白な灰のようになって、その頭髪から髪がサラサラと抜けていく。
なんてむごい。
「もー! 私を妊娠させちゃ駄目じゃないかー! えへへ!」
なぜかルーナが満面の笑みで抱きついてきた。
言葉にされたのが嬉しかったのだろうか?
今そういうのはやめとけよとは思うものの、可愛かった。
「……う、嘘だ」
お父様がよろよろと復活する。
まだ髪が絶賛抜けている最中だったが。
かつてハゲに悩んだので、そういうの見せないでほしいのだが。
「エルフがそんなに簡単に妊娠するわけがない。は、はは、これはなにかの間違いだああああああ!」
お父様が顔をひっかきながら絶叫する。
情緒不安定すぎて辛い。
「……ルーナが旅に出てから、まだ一年も経っとらん。確かにそんなに早くエルフが妊娠したなぞ聞いたことないのう。千年生きている妾でさえ」
エスメラルダさんもそんな事を言いながら首をかしげていた。
エルフは孕みにくい中出しバッチコイな種族らしい。
え、なのになんでルーナはあっさり妊娠してんだろう。
本当ならSEKININを取るのはもっと後だったのでは。
「んー? コウにいっぱい膣内に出されて、ぐちょぐちょかき回されたのが良かったのかなー? あれ、気持ちよかったー! えへへ」
「……あれ気持ちいいわよね」
ルーナが親の前で信じられないくらいエロいことを言っていた。
セレナもなぜか顔を赤らめている。
エロいけど!!!
今そういう事言うなし!!!
「……アサギリくん」
ナーシャさんが顔を赤らめながらも、咎めるような目で見てくる。
好感度が!!
ナーシャさんの好感度が下がってしまうじゃないか!?
照れるナーシャさん可愛いけど。
「……す。……殺す」
お父様がブツブツと不穏な事を口走っていた。
やだ、目が座っている。
「うわああああ! 殺す! アサギリイイイ!?」
スチャッと腰の剣を引き抜くお父様。
ほとばしる殺気。
――チンと。
とりあえず、お父様の剣を指で掴んでおいた。
正直、ハエが止まりそうな程遅かった。
殺気はすごかったが、今の俺には簡単にあしらえるレベルである。
「……離せ」
ぐっぐっと剣に力を込めるお父様。
俺には全然通用しない非力さだった。
「おやめ下さい、あなた。あなたなんかがアサギリくんに勝てるわけないじゃないですか。……私でも勝てなかったのに」
ナーシャさんが頬を赤らめながら、俺を見つめてくる。
なんだろう。
この人、結構簡単に抱ける気がする。
ルーナの母親だけあって、ちょろい匂いをプンプン漂わせている。
「……妻にも手を出したのか。……殺す」
お父様が誤解を招く事を言っていた。
いや、出したけど。手っていうか剣を。
「離せ、アサギリ。私に貴様の首を刎ねさせろ」
「嫌ですって」
男泣きしながら、お父様は殺気を漲らせていた。
可愛そうだけど、弱い。
「もー! 仕方ないな、お父様は! 私のコウに勝てるわけないのに! いいよ、コウ! ぶっ飛ばしちゃえ!」
娘は酷いことを言っていた。
ぶっ飛ばすのはしないが、このままじゃ危ないか。
――パキン。
とりあえず、お父様の剣を指で折っておいた。
筋力160の俺にはこれくらい容易い。
「ああああああっ! う、腕が! 腕がボキって!! 公爵の私になんてことを!? ルーナちゃん、ナーシャさん、私の腕がー!!」
剣を折っただけなのに、お父様が大げさに床をゴロゴロとのたうち回る。
少しくらい衝撃はあったかもしれないが。
チラチラとルーナとナーシャさんに目線を送る辺りが涙を誘った。
「さすがコウ! かっこよかったー、えへへ!」
「夫の剣は、一応業物だったのだが……さすがだな」
なぜかルーナとナーシャさんは、俺をべた褒めしてくれた。
父であり夫は床で痛がっているというのに。
「うう……アサギリ……殺す……絶対に殺す……」
どうしよう。
義父の殺意が止まらない。
「はあ……まあ、落ち着けギルバートよ」
一人でタバコをスパスパしていたエスメラルダさんが、お父様の名前を呼んだ。
ギルバートさんというらしい。
「先程、我がエリシフォン家は、ルーナと婿殿に賭けることに決まった。……何か異存はあるまいな?」
カッと煙管の灰を捨てたエスメラルダさんは、お父様――ギルバートさんを切れ長の目で見つめた。
その目線に床をゴロゴロしていたギルバートさんが立ち上がる。
「……はあ、ありませんが。私が当主なのになーって所以外は」
なんだろう。
ギルバートさんのセリフにはいちいち哀愁が漂う。
そして、異存ないのかよ。
「……我が家の当主は確かに夫だが……エルフの英雄である母上に逆らえるわけがない。実権を握っているのは母上なのだ。たとえ王弟だろうと母上には逆らえない」
そんな事を説明してくれるナーシャさん。
エスメラルダさんすげーっていうか、お父様王弟なのかよ。
「……私が王弟であること覚えていてくれたんだね、ナーシャさん」
なぜかお父様は嬉しそうだった。
前向きな王弟である。
あれ?
ってことは、ルーナって王弟の娘なの??
「うん! 前にも言ったじゃないかー! ちゃんと王位継承権も持ってるって! ええと……13、14位くらい? まあいいや、忘れちゃった!」
「……お主の継承権は7位じゃ」
すげえたけえじゃねえか。
そして、ルーナの記憶はかすりもしてないんだけど。
「そして、私は王位継承権2位である。だから、ルーナちゃんから離れろアサギリ」
「コウが私を離すわけないじゃないかー!」
ギルバートさんの言葉に反発したルーナがぎゅーっとしがみついてくる。
バカだけど可愛い。
俺なんかと結婚してていいんだろうかってくらいマジモンの王族だったけど。
そんなのどうでも良いくらいにルーナが愛おしい。
ルーナの小さな肩を強く抱き返した。
「……アサギリイイイイ!!」
お父様がすげえ睨んでくるけど。
「義母上! やっぱり納得できません!! 私にはこいつがチンパンジーにしか見えないんです!! 可愛いルーナちゃんを類人猿に渡すなんて……!!」
お父様は俺を指出して、悪口を言っていた。
チンパンジーて。
「……さっきから黙って聞いていたけれど、さすがに私も怒るわよ?」
セレナがぼそっと言いながら魔力をメラメラさせていた。
自分の男をチンパン呼ばわりは許せなかったらしい。
「ひいっ! 真祖!!」
お父様があっさりとビビる。
さっきの剣筋を見る限り、このお父様すげえ弱い。
同じく弱いルーナはパパ似なんだろう。
「……まあ、ギルバートの言うこともわかる。婿殿は少し暴れすぎたからのう。幸い死人は出ておらんようじゃが」
「そうです!! 即刻死刑にすべきです!!」
エルフの街を燃やしたことだろうか。
確かにやりすぎた感はある。
って、死者いないのかよ。
「……重軽傷の怪我人は多数、街への被害は甚大、王女の結婚式をめちゃくちゃにし、公爵の息子に怪我を負わせた……あと陵辱されたという報告が数件あったかのう」
つらつらと俺の罪を並べるエスメラルダさん。
最後に身に覚えのない事を言われた。
陵辱? そんなのした覚えがないのだが。
「ちょっと!!! 何してんのよ!? あなたには私がいるでしょう!? そんなにエッチしたいのなら私を抱きなさい?」
「そうだ! お前は私以外とエッチしちゃ駄目じゃないか!!! ってなんでコウがお前を抱かなきゃいけないんだー!!」
セレナとルーナがぐいっと詰め寄ってくる。
いや、お前ら以外も抱くことは吝かではないが。
本当に身に覚えが。
「……確か服を剥がれて、胸を見られたとか」
ああっ!
思わず手のひらに拳をポンと落とす。
やった。
ナイスオッパイね。
でもあんなん陵辱のうちに入らないべ!
「……心配するな、ちょっとおっぱいを見ただけだから」
「なんだー! 心配しちゃったじゃないか!」
「ほんとよ。……あなたを受け止められるのは私だけなんだからね?」
ルーナとセレナの誤解が解けたので、抱き寄せて2人のおっぱいを揉んだ。
柔らかい。
「……なぜ小娘共が安心しているのかわからぬが……そして、なぜ黙って乳を揉まれておるのか本当にわからんが……」
エスメラルダさんは、なぜか引いていた。
男女(3P)の仲は余人の預かり知らぬ所なのである。
「アサギリィィィ!!」
ルーナパパが歯をバキバキと食いしばっていた。
やだ怖い。
「だから落ち着けと言うとろうに。ギルバートよ、お主もわかっておろう? 今、エルフ王国が直面する状況を。婿殿にはそれを打開する力があるのじゃ」
そして、エスメラルダさんはゆっくりと話し始めた。
上にちょりんとカールした髭が、少しイラッとさせる。
でも、そんな事を考えてはいけない。
だって、このダンディーは嫁の父親。
「貴様がアサギリか!? よくも我がエルフィニアで暴れてくれたな、この犯罪者が!!」
ルーナパパは俺を指差して、悪そうな笑みを浮かべる。
なんかよくわかんないけど、パパすげえ怒ってんじゃん。
やべーって。
胃がキリキリする。
これだら嫁の実家になんか来たくなかったのだ。
「貴様の身柄はデルフィニア公に引き渡すと約束してきたわ! 我がエリシフォン家でたーっぷりと厳しい尋問をした後でな……くくく、覚悟しておけ、人間風情が……」
パパはすでに済んだ話を蒸し返そうとしていた。
さすがパパ。
一家の大黒柱なだけはある。
どうしよう。
ルーナを連れて逃げるべきだろうか。
パパの迫力半端ないし。
「……今更出てきて何を言っとるんじゃ、このトッチャンボーヤは」
「ええ!? は、義母上? と、とっちゃん??」
途端にパパは面白い顔をしだした。
これぞ三枚目といった顔で、エスメラルダさんを見ている。
「……そういえば昨夜はお帰りになりませんでしたね。また朝まであのいかがわしいお店にいらしたんですか? デルフィニア公と」
「な、ナーシャさん!?」
「……お父様、サイテー」
「ルーナちゃん!!?」
ルーナパパは、三世代美女達に散々な目で見つめられていた。
ルーナ達の目は、まるでゴミを見るようで。
なんか納得した。
エスメラルダさん、ナーシャさん、ルーナといった超絶美女に囲まれて暮らすお父さんとはどんな超人かと思っていたのだが。
なんてことはない。
普通の人間だったようだ。
ちょっと安心した。
どんな世紀末覇王が出てくるのかとビビっていたのだが。
「ひ、酷いじゃないか、ルーナちゃん。私はルーナちゃんのパパだよ?」
「……喋らないで、お父様。息が臭い」
「こんなに離れてるのに!?」
むしろ、可愛そうになってきた。
鼻をつまんだルーナは反抗期バリバリだった。
普段のほほんとしたルーナからは想像できない。
ルーナにこんな目で見られたら、俺は生きていけないかも知れない。
「うう、ごめんね、コウ? お父様が酷いこと言って。すぐ黙らせるからね?」
俺に抱きついてきたルーナは、笑顔で酷いことを言っていた。
黙らせるて。
「ル、ルーナちゃん!? さ、触ってる!? パパのルーナちゃんが薄汚い人間に触ってる!?」
ルーナパパが俺とルーナを見て、プルプル震えていた。
親の前でいちゃつくとか、すげえ気まずい。
早く離そうと思うのだが。
「何言ってるんだ!? 夫婦なんだから抱き合うのは当たり前じゃないか!」
空気の読めないルーナは状況を悪化させていく。
「フーフ!?」
お父さんの顔が真っ赤になる。
間違いない。
絶対にブチギレている。
「どうしたんだ、コウ? なんでいつもみたいにぎゅってしてくれないの? 気分悪い? おっぱい揉む?」
「オッパイ!?」
ルーナはお父さんを煽るのに余念がなかった。
マジやめろよお前、と思いつつも可愛いからタチが悪い。
「……は、はは。そうか、パパわかったぞ。人間奴隷とお嫁さんごっこかな? ルーナちゃんおままごと好きだったもんなー! でも、そいつは駄目だぞー? 人間が好きならパパが新しいのを買ってあげるから……」
「……人間を買うとかお父様サイテー」
ルーナのパパを見る目がどんどん冷たくなっていく。
たしかにクズな事を言っていたが。
「い、いや! 今のは言葉のアヤで!」
「アサギリくんはあなたが毎晩買っている娼婦とは違うのですよ?」
「ナーシャさん!?」
父親が母娘にボコられていた。
娼婦を買うのは悪いことではない。
もっと胸を張ってほしいのだが。
「……お父様、ホントサイテー。あと臭い」
娘の好感度はだだ下がりだった。
「ル、ルーナちゃん!? パパそんなに臭いかな? ちゃ、ちゃんと歯は磨いているよ!? そんなに口臭ないと思うんだけどなー」
「……口も臭いけど、存在が臭い」
「ソンザイ!?」
お父様は泣きそうだった。
ちょっと本気で可愛そうになってくる。
ルーナの反抗期っぷりがちょっと酷い。
お父様はぷるぷると肩を震わせながら、娘の口撃に耐えていた。
そして、ギンと俺を睨むと。
「……許さんぞ、アサギリ」
なんで!?
八つ当たりにも程がある。
まあ、しかしルーナの父親なのだ。
良好な関係を築いておきたい。
「落ち着いて下さい、お義父さん」
「オトオオサン!? 今、私をオトオオサンと呼んだか!? このロクデナシが!!! 貴様なんぞにオトオオオオサンと呼ばれる覚えなんぞないわっ!!!」
誰もオトオオオオサンなんて呼んでないのだが。
オトオオオオサンは血の涙を流しそうな勢いで俺を睨みつけてきた。
結構、怖かった。
「……お父様は、一応、このお腹の子供の祖父になるんだ。コウがお義父さんって言ったのは間違ってないじゃないか!」
俺に抱きついたルーナが爆弾を投じていた。
今、それを言うのはどうかと思うんだが。
「ク、クォドムォ!? い、今なんて言ったんだいルーナちゃん!? ゴォドゥマってなんだい!?」
マジ泣きしながら、ルーナに掴みかかろうとするパパ。
ルーナは無慈悲にもさっと後ろに下がる。
あとさっきからパパの発音がネイティブすぎて辛い。
「おいアサギリ!? ルーナちゃんに何をした!?」
ルーナにあっさりと避けられたお父様は俺に掴みかかってきた。
近くで見るとマジでイケメンだった。
目が血走っているが。
まあ、俺も男だ。
ここは素直に謝罪すべきだろう。
「……申し訳ありません。娘さんを妊娠させてしまいました!」
そう言って、ガバっと頭を下げる。
殴られるのも覚悟の上である。
「…………」
しかし、ルーナパパは面白い顔で固まるだけだった。
空洞な目と口。
真っ白な灰のようになって、その頭髪から髪がサラサラと抜けていく。
なんてむごい。
「もー! 私を妊娠させちゃ駄目じゃないかー! えへへ!」
なぜかルーナが満面の笑みで抱きついてきた。
言葉にされたのが嬉しかったのだろうか?
今そういうのはやめとけよとは思うものの、可愛かった。
「……う、嘘だ」
お父様がよろよろと復活する。
まだ髪が絶賛抜けている最中だったが。
かつてハゲに悩んだので、そういうの見せないでほしいのだが。
「エルフがそんなに簡単に妊娠するわけがない。は、はは、これはなにかの間違いだああああああ!」
お父様が顔をひっかきながら絶叫する。
情緒不安定すぎて辛い。
「……ルーナが旅に出てから、まだ一年も経っとらん。確かにそんなに早くエルフが妊娠したなぞ聞いたことないのう。千年生きている妾でさえ」
エスメラルダさんもそんな事を言いながら首をかしげていた。
エルフは孕みにくい中出しバッチコイな種族らしい。
え、なのになんでルーナはあっさり妊娠してんだろう。
本当ならSEKININを取るのはもっと後だったのでは。
「んー? コウにいっぱい膣内に出されて、ぐちょぐちょかき回されたのが良かったのかなー? あれ、気持ちよかったー! えへへ」
「……あれ気持ちいいわよね」
ルーナが親の前で信じられないくらいエロいことを言っていた。
セレナもなぜか顔を赤らめている。
エロいけど!!!
今そういう事言うなし!!!
「……アサギリくん」
ナーシャさんが顔を赤らめながらも、咎めるような目で見てくる。
好感度が!!
ナーシャさんの好感度が下がってしまうじゃないか!?
照れるナーシャさん可愛いけど。
「……す。……殺す」
お父様がブツブツと不穏な事を口走っていた。
やだ、目が座っている。
「うわああああ! 殺す! アサギリイイイ!?」
スチャッと腰の剣を引き抜くお父様。
ほとばしる殺気。
――チンと。
とりあえず、お父様の剣を指で掴んでおいた。
正直、ハエが止まりそうな程遅かった。
殺気はすごかったが、今の俺には簡単にあしらえるレベルである。
「……離せ」
ぐっぐっと剣に力を込めるお父様。
俺には全然通用しない非力さだった。
「おやめ下さい、あなた。あなたなんかがアサギリくんに勝てるわけないじゃないですか。……私でも勝てなかったのに」
ナーシャさんが頬を赤らめながら、俺を見つめてくる。
なんだろう。
この人、結構簡単に抱ける気がする。
ルーナの母親だけあって、ちょろい匂いをプンプン漂わせている。
「……妻にも手を出したのか。……殺す」
お父様が誤解を招く事を言っていた。
いや、出したけど。手っていうか剣を。
「離せ、アサギリ。私に貴様の首を刎ねさせろ」
「嫌ですって」
男泣きしながら、お父様は殺気を漲らせていた。
可愛そうだけど、弱い。
「もー! 仕方ないな、お父様は! 私のコウに勝てるわけないのに! いいよ、コウ! ぶっ飛ばしちゃえ!」
娘は酷いことを言っていた。
ぶっ飛ばすのはしないが、このままじゃ危ないか。
――パキン。
とりあえず、お父様の剣を指で折っておいた。
筋力160の俺にはこれくらい容易い。
「ああああああっ! う、腕が! 腕がボキって!! 公爵の私になんてことを!? ルーナちゃん、ナーシャさん、私の腕がー!!」
剣を折っただけなのに、お父様が大げさに床をゴロゴロとのたうち回る。
少しくらい衝撃はあったかもしれないが。
チラチラとルーナとナーシャさんに目線を送る辺りが涙を誘った。
「さすがコウ! かっこよかったー、えへへ!」
「夫の剣は、一応業物だったのだが……さすがだな」
なぜかルーナとナーシャさんは、俺をべた褒めしてくれた。
父であり夫は床で痛がっているというのに。
「うう……アサギリ……殺す……絶対に殺す……」
どうしよう。
義父の殺意が止まらない。
「はあ……まあ、落ち着けギルバートよ」
一人でタバコをスパスパしていたエスメラルダさんが、お父様の名前を呼んだ。
ギルバートさんというらしい。
「先程、我がエリシフォン家は、ルーナと婿殿に賭けることに決まった。……何か異存はあるまいな?」
カッと煙管の灰を捨てたエスメラルダさんは、お父様――ギルバートさんを切れ長の目で見つめた。
その目線に床をゴロゴロしていたギルバートさんが立ち上がる。
「……はあ、ありませんが。私が当主なのになーって所以外は」
なんだろう。
ギルバートさんのセリフにはいちいち哀愁が漂う。
そして、異存ないのかよ。
「……我が家の当主は確かに夫だが……エルフの英雄である母上に逆らえるわけがない。実権を握っているのは母上なのだ。たとえ王弟だろうと母上には逆らえない」
そんな事を説明してくれるナーシャさん。
エスメラルダさんすげーっていうか、お父様王弟なのかよ。
「……私が王弟であること覚えていてくれたんだね、ナーシャさん」
なぜかお父様は嬉しそうだった。
前向きな王弟である。
あれ?
ってことは、ルーナって王弟の娘なの??
「うん! 前にも言ったじゃないかー! ちゃんと王位継承権も持ってるって! ええと……13、14位くらい? まあいいや、忘れちゃった!」
「……お主の継承権は7位じゃ」
すげえたけえじゃねえか。
そして、ルーナの記憶はかすりもしてないんだけど。
「そして、私は王位継承権2位である。だから、ルーナちゃんから離れろアサギリ」
「コウが私を離すわけないじゃないかー!」
ギルバートさんの言葉に反発したルーナがぎゅーっとしがみついてくる。
バカだけど可愛い。
俺なんかと結婚してていいんだろうかってくらいマジモンの王族だったけど。
そんなのどうでも良いくらいにルーナが愛おしい。
ルーナの小さな肩を強く抱き返した。
「……アサギリイイイイ!!」
お父様がすげえ睨んでくるけど。
「義母上! やっぱり納得できません!! 私にはこいつがチンパンジーにしか見えないんです!! 可愛いルーナちゃんを類人猿に渡すなんて……!!」
お父様は俺を指出して、悪口を言っていた。
チンパンジーて。
「……さっきから黙って聞いていたけれど、さすがに私も怒るわよ?」
セレナがぼそっと言いながら魔力をメラメラさせていた。
自分の男をチンパン呼ばわりは許せなかったらしい。
「ひいっ! 真祖!!」
お父様があっさりとビビる。
さっきの剣筋を見る限り、このお父様すげえ弱い。
同じく弱いルーナはパパ似なんだろう。
「……まあ、ギルバートの言うこともわかる。婿殿は少し暴れすぎたからのう。幸い死人は出ておらんようじゃが」
「そうです!! 即刻死刑にすべきです!!」
エルフの街を燃やしたことだろうか。
確かにやりすぎた感はある。
って、死者いないのかよ。
「……重軽傷の怪我人は多数、街への被害は甚大、王女の結婚式をめちゃくちゃにし、公爵の息子に怪我を負わせた……あと陵辱されたという報告が数件あったかのう」
つらつらと俺の罪を並べるエスメラルダさん。
最後に身に覚えのない事を言われた。
陵辱? そんなのした覚えがないのだが。
「ちょっと!!! 何してんのよ!? あなたには私がいるでしょう!? そんなにエッチしたいのなら私を抱きなさい?」
「そうだ! お前は私以外とエッチしちゃ駄目じゃないか!!! ってなんでコウがお前を抱かなきゃいけないんだー!!」
セレナとルーナがぐいっと詰め寄ってくる。
いや、お前ら以外も抱くことは吝かではないが。
本当に身に覚えが。
「……確か服を剥がれて、胸を見られたとか」
ああっ!
思わず手のひらに拳をポンと落とす。
やった。
ナイスオッパイね。
でもあんなん陵辱のうちに入らないべ!
「……心配するな、ちょっとおっぱいを見ただけだから」
「なんだー! 心配しちゃったじゃないか!」
「ほんとよ。……あなたを受け止められるのは私だけなんだからね?」
ルーナとセレナの誤解が解けたので、抱き寄せて2人のおっぱいを揉んだ。
柔らかい。
「……なぜ小娘共が安心しているのかわからぬが……そして、なぜ黙って乳を揉まれておるのか本当にわからんが……」
エスメラルダさんは、なぜか引いていた。
男女(3P)の仲は余人の預かり知らぬ所なのである。
「アサギリィィィ!!」
ルーナパパが歯をバキバキと食いしばっていた。
やだ怖い。
「だから落ち着けと言うとろうに。ギルバートよ、お主もわかっておろう? 今、エルフ王国が直面する状況を。婿殿にはそれを打開する力があるのじゃ」
そして、エスメラルダさんはゆっくりと話し始めた。
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「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
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