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第六章 エルフ王国編
第233話 エリシフォン家の片鱗
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ルーナの実家には、馬車で向かうことになった。
迎えに来てくれたケイオスさんが御者をやってくれるそうだ。
ちなみにケイオスさんは、やっぱりルーナんちの執事さんだった。
透けるような金髪、プラチナブロンド? を丁寧にオールバックにした頭の良さそうなイケメンである。
執事と言うと老人なイメージがあるが、ケイオスさんの見た目は普通に20代くらい。
ていうか、エルフは誰もが若い見た目をしている。
実際はウン百歳とかなんだろうけど。
まあ、セレナ達とかキリア達のお陰でその辺はもう慣れた。
「あちらの馬車でございます」
牢屋のある詰め所みたいな所を一歩出ると、デデンとバカでかい馬車が止まっていた。
あちらもなにも堂々と目の前路駐しているのだが。
ていうかなんなのこの馬車。
ツルッツルの黒いボディ。
リムジンもかくやという数メートルの長さ。
今日は菊花賞かな? と聞きたくなるくらいたくさんの馬が繋がれている。
黒いボディの真ん中には銀細工で描かれたバカでかいユリの花のマーク。
めちゃくちゃ高そうな馬車だった。
これまさかルーナんちのマイカーなんだろうか。
嫁が金持ちって肩身が狭くなるのだが。
「少々お待ちを」
ケイオスさんがバクンと馬車のドアを開くと、自動で階段が降りてくる。
ドアから見えた内装はこれまた高そうな赤いソファーだった。
「お嬢様、お手を」
「うんー」
ケイオスさんに手を引かれて、ルーナが能天気に馬車に乗り込んでいく。
こんな金持ち全開オーラに当てられているというのに、ルーナは普段どおりだった。
バカだけど大物である。
俺なんておしっこ漏らしそうなのに。
都内の一等地に建つバカでかいマンションから出てきた同年代っぽい人とか見ると、一体俺と何が違うんだろうって切なくなる。
そんな気分になっていた。
まあ、こんな馬車に乗れる機会なんてめったにないだろうから、楽しみではあるんだけどね。
「それじゃ、あっしも失礼して、へへっ」
ルーナに続いて馬車に乗り込もうとしたら、めちゃくちゃ卑屈なセリフが出た。
あっしってなんだよ。
金持ちに弱い庶民だった。
しかし。
――バクンッ。
俺の目の前で馬車のドアが閉まる。
ええ!?
一体何が……。
実は借金まみれなのがバレたんだろうか。
金持ちセンサー(?)に引っかかったんだろうか。
「おめえは歩いてこいや、クズ人間が!! ぺっ」
めちゃくちゃ強面な表情をしたケイオスさんにツバを吐かれた。
ええええ!?
さっきまで出来るイケメン執事風だったのに、突然チンピラになった。
ていうか、ツバを吐くって。
人にツバを吐くとか絶対にしちゃいけないと思います!
だって、失礼じゃんね!?
脳裏に、ケイトさんのとこのバイトくんとか、こないだのルーナの幼馴染のイーデさんとかが悲しそうに笑っている絵が浮かんだ不思議。
「ちびっとルシアリーナ様に気に入られてるからってよう? こいてんじゃねえぞ!? おう!? ガタガタ言わすぞ、クソ人間がっ!!」
しかも胸ぐらまで掴まれてしまった。
これは売られてますわ。
ケンカ売られてますわ。
埼玉県出身者として、ここで引き下がるわけにはいかない。
メンチ切られたら、ガンをつけ返す。
埼玉育ちの合言葉である。
「…………」
いやいや、待て待て。
これから嫁の実家に行こうっていうのに、執事といきなりトラブるのってどうなんだろう。
ここは一つ、大人な対応をすべきではなかろうか。
ルーナは言ってくれたじゃないか。
俺はクズじゃないと。
こんなところで早速ケンカをするなんてザ・クズと言って――。
「おうおう!? んだよ、ビビってんのかよ!? キンタマついてんのか!? ――ぶべらっ!!!」
――も過言ではなかったのだが、執事がムカつきすぎるので、全力で上から拳を振り下ろしていた。
筋力160で脳天を殴られた執事が、めきょっと地面に埋まる。
イケメンだった顔は、面白い事になっていた。
俺はクズでもいい。
だが、キンタマをバカにする事は許さん!
「あ、あがが」
目玉を左右に飛び出させた執事が口から泡を吹いている。
さて、とりあえず燃やすか。
そう思って、右手にシュボッと炎を出現させていると。
「コウ? 何やっているんだ? 早く乗らないと駄目じゃないかー!」
馬車の中からルーナがひょっこりと顔を出す。
やべっ!
慌てて火を消した。
「あれ、ケイオス? どうかしたのか?」
「いや、なんか突然勝手に埋まって……」
「あはは、ドジだなー!」
かなり無理のある言い訳だったが、うちの嫁には普通に通じる。
「うーん、でも困ったな。ケイオスがいないと馬車を動かす人間が……おーい、他に誰かいないか?」
「おります」 「お呼びになりましたか? ルシアリーナ様」 「馬車ならわたくしが動かします」
ルーナが声をかけると馬車の影から数人の執事が顔を出す。
って、他にもいんのかよ!
どんだけ人件費かけてんだよ!
これだから金持ちは。
そんなわけで、俺とルーナを乗せた馬車はつつがなく動き出す。
馬車の中は、天井からシャンデリアが下がっているわ、冷えたシャンパンが常備してあるわで、意味がわからなかった。
なんだろう、このパリピが好みそうなインテリアは。
とりあえず俺もウェイウェイ言っておくべきなのだろうか。
「家にはすぐにつくからな! ちょっとだけ待っててね」
そう言いながらルーナが抱きついてくる。
すぐ着くなら歩けよと言いたい。
しかし、このパリピ感にも動じずに普段と同じ感じのルーナってすげえなと思った。
馬車は全く振動を立てずに動き出す。
ふと地面に埋まったケイオスさんはどうなるんだろうと思ったが、まあ自業自得である。
人に対する礼儀も知らない奴なんて社会人失格だと思うんだよね。
シねばいい。
なんかズキズキと胸が痛んだので、とりあえずルーナの乳を揉んだ。
迎えに来てくれたケイオスさんが御者をやってくれるそうだ。
ちなみにケイオスさんは、やっぱりルーナんちの執事さんだった。
透けるような金髪、プラチナブロンド? を丁寧にオールバックにした頭の良さそうなイケメンである。
執事と言うと老人なイメージがあるが、ケイオスさんの見た目は普通に20代くらい。
ていうか、エルフは誰もが若い見た目をしている。
実際はウン百歳とかなんだろうけど。
まあ、セレナ達とかキリア達のお陰でその辺はもう慣れた。
「あちらの馬車でございます」
牢屋のある詰め所みたいな所を一歩出ると、デデンとバカでかい馬車が止まっていた。
あちらもなにも堂々と目の前路駐しているのだが。
ていうかなんなのこの馬車。
ツルッツルの黒いボディ。
リムジンもかくやという数メートルの長さ。
今日は菊花賞かな? と聞きたくなるくらいたくさんの馬が繋がれている。
黒いボディの真ん中には銀細工で描かれたバカでかいユリの花のマーク。
めちゃくちゃ高そうな馬車だった。
これまさかルーナんちのマイカーなんだろうか。
嫁が金持ちって肩身が狭くなるのだが。
「少々お待ちを」
ケイオスさんがバクンと馬車のドアを開くと、自動で階段が降りてくる。
ドアから見えた内装はこれまた高そうな赤いソファーだった。
「お嬢様、お手を」
「うんー」
ケイオスさんに手を引かれて、ルーナが能天気に馬車に乗り込んでいく。
こんな金持ち全開オーラに当てられているというのに、ルーナは普段どおりだった。
バカだけど大物である。
俺なんておしっこ漏らしそうなのに。
都内の一等地に建つバカでかいマンションから出てきた同年代っぽい人とか見ると、一体俺と何が違うんだろうって切なくなる。
そんな気分になっていた。
まあ、こんな馬車に乗れる機会なんてめったにないだろうから、楽しみではあるんだけどね。
「それじゃ、あっしも失礼して、へへっ」
ルーナに続いて馬車に乗り込もうとしたら、めちゃくちゃ卑屈なセリフが出た。
あっしってなんだよ。
金持ちに弱い庶民だった。
しかし。
――バクンッ。
俺の目の前で馬車のドアが閉まる。
ええ!?
一体何が……。
実は借金まみれなのがバレたんだろうか。
金持ちセンサー(?)に引っかかったんだろうか。
「おめえは歩いてこいや、クズ人間が!! ぺっ」
めちゃくちゃ強面な表情をしたケイオスさんにツバを吐かれた。
ええええ!?
さっきまで出来るイケメン執事風だったのに、突然チンピラになった。
ていうか、ツバを吐くって。
人にツバを吐くとか絶対にしちゃいけないと思います!
だって、失礼じゃんね!?
脳裏に、ケイトさんのとこのバイトくんとか、こないだのルーナの幼馴染のイーデさんとかが悲しそうに笑っている絵が浮かんだ不思議。
「ちびっとルシアリーナ様に気に入られてるからってよう? こいてんじゃねえぞ!? おう!? ガタガタ言わすぞ、クソ人間がっ!!」
しかも胸ぐらまで掴まれてしまった。
これは売られてますわ。
ケンカ売られてますわ。
埼玉県出身者として、ここで引き下がるわけにはいかない。
メンチ切られたら、ガンをつけ返す。
埼玉育ちの合言葉である。
「…………」
いやいや、待て待て。
これから嫁の実家に行こうっていうのに、執事といきなりトラブるのってどうなんだろう。
ここは一つ、大人な対応をすべきではなかろうか。
ルーナは言ってくれたじゃないか。
俺はクズじゃないと。
こんなところで早速ケンカをするなんてザ・クズと言って――。
「おうおう!? んだよ、ビビってんのかよ!? キンタマついてんのか!? ――ぶべらっ!!!」
――も過言ではなかったのだが、執事がムカつきすぎるので、全力で上から拳を振り下ろしていた。
筋力160で脳天を殴られた執事が、めきょっと地面に埋まる。
イケメンだった顔は、面白い事になっていた。
俺はクズでもいい。
だが、キンタマをバカにする事は許さん!
「あ、あがが」
目玉を左右に飛び出させた執事が口から泡を吹いている。
さて、とりあえず燃やすか。
そう思って、右手にシュボッと炎を出現させていると。
「コウ? 何やっているんだ? 早く乗らないと駄目じゃないかー!」
馬車の中からルーナがひょっこりと顔を出す。
やべっ!
慌てて火を消した。
「あれ、ケイオス? どうかしたのか?」
「いや、なんか突然勝手に埋まって……」
「あはは、ドジだなー!」
かなり無理のある言い訳だったが、うちの嫁には普通に通じる。
「うーん、でも困ったな。ケイオスがいないと馬車を動かす人間が……おーい、他に誰かいないか?」
「おります」 「お呼びになりましたか? ルシアリーナ様」 「馬車ならわたくしが動かします」
ルーナが声をかけると馬車の影から数人の執事が顔を出す。
って、他にもいんのかよ!
どんだけ人件費かけてんだよ!
これだから金持ちは。
そんなわけで、俺とルーナを乗せた馬車はつつがなく動き出す。
馬車の中は、天井からシャンデリアが下がっているわ、冷えたシャンパンが常備してあるわで、意味がわからなかった。
なんだろう、このパリピが好みそうなインテリアは。
とりあえず俺もウェイウェイ言っておくべきなのだろうか。
「家にはすぐにつくからな! ちょっとだけ待っててね」
そう言いながらルーナが抱きついてくる。
すぐ着くなら歩けよと言いたい。
しかし、このパリピ感にも動じずに普段と同じ感じのルーナってすげえなと思った。
馬車は全く振動を立てずに動き出す。
ふと地面に埋まったケイオスさんはどうなるんだろうと思ったが、まあ自業自得である。
人に対する礼儀も知らない奴なんて社会人失格だと思うんだよね。
シねばいい。
なんかズキズキと胸が痛んだので、とりあえずルーナの乳を揉んだ。
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